数ヶ月その美容室で働くと、基礎を学ぶために一度日本で働いたほうがいいとオーナーから助言され、東京に戻って白金の美容室で働き始めました。ただ、同い年の美容師は既にスタイリストとして働いている先輩。片や、私はまた掃除からのスタート。それが悔しくて必死に働き、6ヶ月ほどで、最速でスタイリストになりました。

そして、働いていくうちに、美容師は人を綺麗にする仕事だから、自分自身、世界中の美しいものを知る必要があるのではと考えるようになっていきました。また、世界中を飛び回れる人間でいたい、世界中どこに行っても「おかえり」と言ってもらえる存在でいたいとの思いも重なり、世界一周に出ることに決めたんです。

そして、髪を切りながら旅する生活を1年半ほど続け、60カ国ほど周って得たものは、「ロバは馬にはなれない」という諺を実感したことでした。

旅に出る前は、世界を回ることで自分は輝ける存在になれると思い、「ロバは馬になれることを証明する」と豪語していました。しかし、実際に旅を終えて振り返ってみると、視野が広くなったような感覚はあるものの、それは錯覚でしかないと分かったんです。

「世界を見て何が変わった?」と言われても、瞬間的に答えることはできませんでした。ただ、「馬」になれなくても、自分らしく生きることはできる。「しまうま」になることはできるんだと感じていました。