専門学校は3年で終え、無事資格を取ることができました。ただ、依然として美容師になる気はなく、今度は音楽で挑戦するためニューヨークに渡ることに決めたんです。昔から好きで作っていたヒップホップの音楽が、世の中で流行り出すに連れて評価されるようになり、音楽が仕事になるんじゃないかと思ったんです。

ところが、ニューヨークでは全く通用しませんでした。生活のためにアパレルのバイヤーとして働きながらも挑戦を続けましたが、結果は出ず、心は荒んでいきました。

そんな生活を1年半ほど続けた時、酔っ払って道で寝てしまい、暴漢に身ぐるみを剥がされてしまうことがありました。お金も、定期も、カードも、全て盗られ、殴られすぎて歯すらほとんど無くなってしまいました。

そこで、とりあえず歩いて家に帰ることにしました。しかし、3時間ほどで辿り着いたのですが、どうしても家に入る気が起きずに、事件が起きた現場まで引き返すことにしたんです。

そして、夜が明ける頃には現場まで辿り着いたのですが、偶然にも目の前には美容室がありました。これは何かの縁かと思い、ここでなら助けてもらえるのではないかと、お店に入ることにしました。すると、そのお店のオーナーはなんと日本人だったんです。そして、お手伝いとして働かせてもらうことになったんです。

こうして美容室で働き始めたのですが、やはり仕事はそこまで好きではありませんでした。しかし、生活するお金を稼ぐ必要がありました。また、体が小さくて肉体労働等では雇ってもらえず、慣れ親しんだ美容室であれば、何となく仕事ができたのは事実でした。

ただ、熱心に美容の素晴らしさを説いてくれる先輩の影響もあり、次第に美容に興味を持つようになっていきました。そして、シャンプーを担当してチップをもらえるようになると、「自分の居場所は美容の世界なのかもしれない」と素直に思い始めていました。

チップは提供したサービスに対する感謝のメッセージと同じ。通常1ドルしかもらえない仕事で、例えば30ドルももらえると、その感謝の大きさや、お金の重みをダイレクトに感じることができたんです。そして次第に、仕事にやりがいを感じるようになり、美容師として生きていこうと考えていました。