「自分の成長のため」だけじゃ、ダメなんです。
ITが単なる一業界でなくインフラになっていく時代だからこそ、エンジニアが育つ仕組みを作り、世界中に展開していきたい、と話す新田さん。大学生の時に、責任者として立ち上げた新規事業の失敗を通じて気付いた「大切なこと」とは、一体どんなものだったのでしょうか?
新田 章太
にった しょうた|エンジニア向けキャリア支援事業運営
「エンジニアをつくる」というミッションのもと、
エンジニア育成サービス等を提供するCpla(シープラ)の代表を務める。※母体は株式会社ギブリー
Cpla(シープラ)
株式会社ギブリー
学んだことの使い道が分からない
大学時代は、いわゆる「普通の大学生」だった気がします。
将来に役立つ学問という理由で、経営工学を先攻し、フットサルのサークルに所属し、
居酒屋のバイトをして、彼女と同棲という感じでした。
就職活動の時期になると、早く終わらせたいという気持ちがあったので、夏前から説明会に参加し始めましたね。
その中で色々な業界の話を聞いて、多くの人に会ったのですが、
どうもIT系の企業で働く人と価値観が合うんじゃないかと思うようになったんです。
それに、IT系を志す学生もすごい人が多かったんですよね。
学生の時からインターンやイベントの運営など、社会人に近い環境で実績を積んでいる人がたくさんいました。
また、ちょうど同じ時期に、学生向けのビジネスプランコンテストに参加したことがありました。
大学の仲間内で参加したのですが、かなりいいものが出来た手応えがあったんですよね。
ところが、結果は予選敗退でした。
そして、決勝に残ったチームのプレゼンを見たときに、圧倒的な違いを感じて、衝撃を受けたんです。
自分たちの知識・経験不足が完全に露呈したんですよ。
それまで、実践的な授業等を通じて、社会に出て通用するスキルを学んで来たつもりだったのに、
使い道のイメージが出来ていないことを、痛感したんです。
その後の面接でも、話をしていて「何か違う」という感覚を拭えずにいました。
そしてついには、起業家を輩出するというビジョンに共感して志望していたメガベンチャーの最終面接で落ちてしまったんです。
「やっぱりだめだ、このまま就活を続けても自分が活躍できる場所は見つからない」
それが正直な感想でした。
自分にはとにかく実績が足りない、まずはそのためにインターンをしようと思ったんですよ。
選考中の会社も辞退し、一度就職活動は中断することに決めました。
新規事業の責任者に
インターンを探していく中で、現職の「ギブリー」に出会い、働かせてもらうことに決まりました。
当時から、教育や就職活動支援の領域でサービスを提供しており、
自分自身就職活動で苦戦していたこともあったので、そこで貢献したいと思ったんですよね。
当時はまだ雑居ビルの一室で、お世辞にもきれいとは言えず、最初は会社だと思いませんでした。(笑)
アルバイトっぽくやりたくなかったこともあり、就活系イベントの企画運用・営業など、
フルコミットで働いていましたね。
インターンを続けて大学4年生になった頃、
会社として、今後エンジニアに関する領域に事業を展開しようということになり、
代表に「事業の立ち上げをやってみないか?」と言ってもらえたんです。
自分にとっては挑戦のチャンスということもあり、エンジニアに特化した就活支援事業にコミットすることに決めました。
責任者になってからは、私を中心に他のインターン生でチームを作り、事業を作っていきました。
その事業のメインの取り組みとして、学生でもwebサービスを作れるということを知ってもらうため、
事業のターゲットとなる層への集客も兼ねて、「Student Web Service Award 2011」というイベントを開催しました。
学生がやっているwebベンチャーを集めて、コンテスト形式で競うというイベントで、
企業なども巻き込んで開催したんですよね。
自分の成長のためにお客さんはいない
ところが、開催したのは良いものの、自分で必死に呼び集めた学生ベンチャーを紹介しているだけで、
企業についても協賛はほとんど集まらず、挙げ句の果てには、
スタッフのモチベーションも高くない状況でした。
同時に、並行で進めていたwebサイトの失敗も重なり、
一定額の投資をしながらも売上が立たず、インターン生同士でも揉めるようになり、
組織がぐちゃぐちゃになっていました。
ひどい時は仲間と居酒屋で揉めて、グラスが割れて出入り禁止になったこともありました。
そんな状況だったこともあり、事業を作りイベントを運営していく中で、
「これって本当に価値があるのかな?」
と悩んでしまったんです。
なぜうまくいかないのか、ひたすら考え続けました。
そして、あることに気付いたんです。
事業もイベントも全て、自分のためにやっていたんですよね。
結局は自分の就職活動のリベンジのような位置づけで、
自分の実績のためだったんですよ。言わばそれはエゴでした。
すごくあたりまえのことなんですが、「誰に対してどんな価値を提供したいか」という、
一番大切な本質が抜け落ちていたんです。
自分の成長のためにお客さんがいるはずないんですよ。
自分にとってすごく大切な気づきでした。
社会で価値を発揮するための成長
じゃあ、改めて自分は何に興味があるのだろうと考えた時、
辿り着いたのは、「人が社会に対して価値を発揮するための成長」に貢献するということでした。
高校や大学の頃から、テストのための暗記に抵抗があったんですよ。
「覚えてどうなるの?」という気持ちがあったんです。
自分が就職活動で感じたように、今まで学んで経験して来たことが、
社会でどう役立つかイメージが持てない学生ってすごく多いんじゃないかと思うんです。
だからこそ、「社会で価値を発揮するための成長」につながるような貢献をしたいと思うようになったんですよね。
その手段として、エンジニアの育成に取り組むことに決めました。
既にそうかもしれないですが、ITは業界ではなくて、インフラになると思います。
その中で、考えて、手を動かして、ものをつくるところまでできるようにすることをサポートできればと思い、
育成プログラムやエンジニア向けのツールを作っていきました。
その中でも一つの集大成が、DMTC AWARDというイベントでした。
内容としては、学生エンジニアの開発コンテストで、過去に行ったイベントとすごく似た形式でした。
ところが、昔とは明確に違ったんです。
登壇者も自分が集めた訳でなく、自発的に参加してくれ、
スポンサーも、過去の10倍の規模まで増えました。
単純に自分がやりたいだけでなく、社会から求められていることなんじゃないかと、
感じることが出来たんですよ。
自分の気づきが肯定されたような気がしました。
これからもとどまることなく、成長を与える機会を増やしていきたいと思っています。
エンジニアを育成する仕組みに関しても、日本だけでなく世界中に展開していく予定です。
2014.04.14