10年毎に家を買い替える世の中に!?住まいの選択を、もっと自由にするための挑戦。
2015年2月に、ユーザー同士が直接マンション売買をすることを可能とするWEBプラットフォームの運営を開始した針山さん。不動産業界の構造を変える大きな挑戦の背景には、 「人は一人一人違うのだから、住まいももっと違っていい」というご自身の経験に基づいた思いがありました。
針山 昌幸
はりやま まさゆき|ユーザー同士の不動産売買プラットフォーム運営
ユーザー同士が直接マンション売買をすることが可能となるWEBプラットフォームサービス、
「Housmart(ハウスマート)」を運営する、株式会社Housmartの代表取締役を務める。
Housmart
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受験失敗と「仕事」との出会い
私は東京都目黒区に生まれました。
小さい頃から負けず嫌いの性格で、あまりスポーツが得意でなかったこともあり、
何だったら上にいけるか考えた結果、勉強に力を入れ、所謂ガリ勉タイプになっていきました。
また、父が鉄道会社に務めており、その社宅に住んでいたのですが、
「周りと同じ」を嫌うような子どもだったこともあり、
団地で、同じ棟がいっぱいあるような家は、正直好きではありませんでした。
しかし、小学校4年になると、家族で一戸建ての中古物件を買い、引っ越すことになったんです。
他の家とは違う環境に、「これが本当の家だな」と感動し、
飛び跳ねても怒られない環境に変わったことに、暮らしが豊かになったような感覚がありました。
その後、中学・高校と勉強に打ち込み、
将来は官僚か、上場企業のエリートサラリーマンになりたいな、
と漠然と考えるような学生でした。
そこで、大学受験では東京大学の文化二類を志望したのですが、
100%受かると思っていた受験で不合格になってしまったんです。
結局、後期試験で合格した一橋大学に進学することになったのですが、
一極集中で勉強をしてきて、かなり自信があったからこそ、本当にへこみました。
まるで、これまで勉強してきた自分の人格を、丸ごと否定されたような気がしたんです。
そんな背景もあり、入学後1ヶ月ほどはモヤモヤ過ごし、
その後は、気持ちを切り替え、ずっと勉強してきたので、大学ではとにかく遊ぶことにしました。
そして、大学生が思いつく遊びに打ち込むこと1年間、
楽しさと同時に、なんだか虚無感を感じるようになりました。
大げさな話、「これが人生の醍醐味なら、人生はつまらないな」と思ってしまったんです。
しかし、そんな折、大学のバスケサークルの先輩で、毎日すごく楽しそうにしている方がいたので、
「どうしたらそんなに楽しいんですか?」と聞いてみると、
ベンチャー企業でインターンをしているという話を伺いました。
「インターン」という言葉すら聞いたことがありませんでしたが、
仕事ってそんなに楽しいんだ、と強く感銘を受け、
実際に自分でもインターンをしてみようと考えるようになりました。
そこで、色々な本を読んだ結果、まずは営業を極めようと思い、
大学2年生のタイミングで、人材系のベンチャー企業で営業のインターンを始めました。
自らインターンを体験してみて感じたのは、「仕事ってめっちゃ面白い」ということでした。
特に、ものすごく高いハードルに挑戦できることに、強いやりがいを感じたんです。
例えば、最初は全く成果が出ず、飛び込み営業での門前払いや、時に罵声を浴びることもあったのですが、
それすら新鮮で、中々正解の見つからないゲームに出会ったような感覚でした。
気づけば、昔の勉強のように、久しぶりに打ち込めるものを見つけて、
なんだか目の前が明るくなったような気がしました。
営業力をつけるために、不動産ベンチャーへ
インターンを通じて得たもう一つの気づきは、
自分がかつて描いていたような大企業よりも、ベンチャー企業に関心があるということでした。
人材系のインターンということもあり、業界を横断的に話を聞いたり、
様々な規模の会社の方とお会いする中で、大企業はキャリアステップがしっかりしている反面、
自分の将来の姿を想像できてしまうことに、ある種の物足りなさを感じたんです。
逆に、自分の予想がつかないような挑戦に魅力を感じたんですよね。
ちょうど、堀江さんや藤田さんなど、ベンチャー業界全体が盛り上がっていることの影響もありました。
また、インターンを経て、自分でも何か作ってみたいと思い、ビジネスサークルを立ち上げ、
ビジネスプランコンテストへの応募等を行ったのですが、
そこで、改めて、自分がビジネスを分かっていないこと、
団体の運営にあたって、営業力がまだまだ足りないことを痛感したんです。
特に、将来は起業することが、一番ハードルの高い挑戦を出来る手段だと考えていたため、
そのためにも、営業力は不可欠だと感じました。
そこで、迎えた就職活動では、営業力を一番つけられる環境という基準で選び、
不動産系のベンチャー企業に就職を決めました。
その会社は、社長の圧倒的なカリスマ性があり、
純粋に「この人についていきたいな」と感じましたし、
業績を支える営業力も素晴らしく、ここなら、多くのものが得られると感じたんです。
そこで、内定をいただいてからは、4年生から同社でインターンを始めました。
不動産業界への違和感と転職
働き始めてからは、驚くことばかりでした。
社員の方は皆死ぬ気で情熱を注いでおり、
中には、逆立ちしても叶わないであろう、本当の天才の方もいました。
「上のレベルって、果てしなく高いんだな」と感じましたね。
それでも、そこに追いつこうと、もがきながらも前に進む日々を過ごしました。
特に、インターン時代は契約もいくつか獲得が出来たのですが、
社会人一年目になると、成果が出ずに苦しむようになり、成績はほぼビリ。
苦しい期間を過ごしました。
しかし、1年目が半年経った頃からなんとかこつを掴んでいき、
その後は社内のMVPもいただくことが出来ました。
それでも、「営業を極めた!」とは到底言えず、奥の深さを痛感しました。
また、仕事に全力を費やす中で、同時に、不動産業界への違和感も感じるようになりました。
業界自体が抱える情報の不透明性や、関係するプレイヤーのモラル、
お客さんにとっての幸せと方向性が異なる売上偏重。
それらを見聞きする中で、ふと、「この業界って尊敬されるのだろうか?」と、
半ば怒りに近い感情を抱いたんです。
「これっておかしいよな」という気持ちから、なんとかして変えることができないかを考えるようになり、
いつしか、ITを使ってなにかできないかと考えるようになりました。
漠然とした着想でしたが、業界自体ものすごくITに弱かったこともあり、可能性を感じたんです。
そんな経緯もあり、一度不動産以外の外の世界も見てみたいという気持ちも重なり、
社会人2年目が終わった25歳のタイミングで、転職することに決めました。
正直、会社のことが大好きだったこともあり、後ろめたい気持ちでしたが、
自らの課題感に対し、一歩踏み出し、いずれもう一度不動産に戻ろうという気持ちがありました。
そして、インターネットを用いて商売をする一番大きな企業という意味で、
楽天株式会社に転職を決めました。
人生をかけて取り組めるビジネス
営業を経験した後はマーケティングに携わりたいという気持ちもあり、
楽天では、リサーチの事業に配属することになりました。
環境を変えて働いてみて、「仕事のスタイルが180度違う」という印象でしたね。
高い目標を必ず達成しようという雰囲気は変わらぬものの、
それに対し、営業マンの気合いや根性が源泉となっていた前職に対し、
楽天では、計画を立て、行動し、検証し、と全く異なる手法を用いていたんです。
また、ボトムアップで上手く意見を吸い上げるマネジメントに出会った驚きもありました。
実際の業務では、自社で抱える会員に対しての市場調査とそれに基づくコンサルティングを行っていたのですが、
印象的だったのは、どんな有名なロングセラー商品の担当者であれ、
絶対的な解答など持っておらず、頭に汗をかいて日々悩んでいるということでした。
あたりまえのことではあったのですが、一定の土台を築いた上では、行動してみるしかないんだな、と感じましたね。
また、コンサルタントとして事業者の方々と関わっていると、
どこか、彼らをうらやましく感じている自分がいることにも気づきました。
自ら事業をしたいという感覚が抑えられなくなっていくと同時に、
恵まれた環境で過ごす中で、自分が組織の中で何かを言い訳に、自責で行動しないような人間になるような不安もあったんです。
そんな折、転職して3年近く経った頃、学生時代からの友人と久しぶりに会って話す中で、
一緒に会社をやらないかという話になりました。
もともと、お互い独立に関心がありましたし、独立する一緒にやるんだろうなという感覚もありました。
そこで、本格的にビジネスアイデアを考え始め、毎週土日は集まって話をするようになったんです。
しかし、すんなりとプランが固まらず、気づけば4・5ヶ月、200〜300ものアイデアを考えていました。
やるからには一生かけてやりたいという気持ちがありましたし、
それだけの情熱をかけて取り組めるものとなると、そう簡単には見つからなかったんです。
そして、何度も検討を重ねる中、たどり着いたのは、やはり不動産の領域でした。
前職時代から感じていた怒りに近い違和感をもとに、不動産業界を根底から覆すような、
業界構造を変えるプラットフォームを創ろうと決めたんです。
そこで覚悟が決まり、2014年10月、28歳のタイミングで独立し、
株式会社ハウスマートを創業しました。
10年毎に住まいを買い替えるような自由さを
現在は、不動産情報のメディア「Housmart Journal(ハウスマートジャーナル)」を運営する傍ら、
2015年2月18日に、新しく不動産売買のプラットフォームとなるサービスをリリースしました。
このサービスは、戦後60年間変わってこなかった不動産取引のあり方を変えることをコンセプトに、
不動産売買のプレイヤーを直接繋ぎ合わせるプラットフォームを築こうとしています。
これまでは仲介業者が入っていたことで、手数料が入り、売買自体のコストが高くなってしまったのを、
売り手は無料、買い手も従来水準の半額でやりとりができるような仕組みにすることで、
より売買の活性化につながればと考えています。
また、同じ原因から情報が非常に不透明だったのを、
売り主の情報をオープンにすることで、値付け含むブラックボックスを無くしていこうとしています。
不動産市場は価格の根拠や値動きの状況が明確でなく、いわゆる「市場」が出来ていません。
仲介する不動産業者からの情報提供が個人に与える影響力がとても大きいのです。
だからこそ、その環境をフラットにすることで、
他の商材と同じような、誰が見ても明確な市場を創ろうとしているんです。
大きな挑戦ですが、始めてから5ヶ月、
「なんでもっと早くやらなかったんだろう」というのが本音です。
それくらい楽しくて仕方ないですし、年末も、オフィスで働いていたら、気づけば年越し寸前という状況でした。(笑)
自ら思い描いているものを創ることはすごく楽しく、
ある種の贅沢さすら感じます。
また、事業を考えた当初は、不動産取引のあり方を変えたいという、前職時代の課題感に近い気持ちが自分の原動力だったのですが、
今は、この仕組みが成り立った先の世界観への思いが自らのモチベーションとなっています。
最終的には不動産売買の仕組みを変えることで、
日本人の住まいに対する考え方を変えることが出来たらと思うんです。
皆、同じように一生に1・2回、数十年のローンを組んでというのは窮屈だと思うんです。
昔社宅に感じた違和感のように、各々のライフスタイルにあった暮らしは一様でなく、
10年ほどの区切りでライフスタイルも変わると思います。
だからこそ、ライフステージに併せて居住環境を変えることを、
低コストで行えるような環境を築き、居住空間の選択をもっと自由にしていきたいです。
人は一人一人違うのだから、住まいももっと違っていいと思うんです。
そんな目標のため、これからも高いハードルに挑戦していきたいと思います。
2015.02.23