勝ち続けなければならないんです。

プロギャンブラーとして生計を立てながら、世界中を旅している乃武喜さん。乃武喜さんがギャンブルと出会った経緯、そしてなぜ、今までプロとして活動できているのか、お話を伺いました。

新井 乃武喜

あらい のぶき|プロギャンブラー
プロギャンブラーとして海外のカジノで勝負をしながら、世界中を旅している。

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良い会社が分からないから起業しよう


大学二年生の時、親友が急に「俺、大道芸人になる」って言い出したんですよ。中小企業診断士の父とアメリカ大使館で勤務していた母を持つ私は、なんとなくサラリーマンになるとしか考えてなかったので、彼のその話を聞いた時はすごく驚きました。

私の中では、もともと大道芸人になる可能性なんて0%でしたし、世の中にそんな選択肢があることすら考えていませんでしたから。ただ、自分の親友の選んだ道なので応援したいし、大道芸人として活躍していく人も、かっこいいなと思ったんです。仕事の選択肢がサラリーマン以外へも広がった瞬間ですね。

それと同じくらいのタイミングで、将来絶対に成功すると思っていた友人が、就職後、苦しんでいるのを見たんです。そんな彼の姿を見た時に、「会社って何?人を潰す場所なのか?」と感じたんですよ。

世の中、良い会社ばかりじゃない。私だって、悪い会社に入ってしまうリスクもある。それならば、自分で事業を起こそうと思ったんです。

そして、起業には資金が必要だと考え、毎日ひたすら働き、25歳で1000万円貯めるに至りました。

自分の感性に従うべきだ


しかし、いくら資金が必要なのか、どのタイミングで独立するのか考えていなかったため、いつしか「こんな紙くずを作るために生まれて来たんじゃない」と思うようになっていました。

さらに25歳とは、仕事や恋人で忙しくなってくるタイミングだったんです。友達が平日に遊んでくれなくなったんですよね。いよいよ自分も一歩踏み出さなければと思い、心からやりたいことは何なのか、改めて考えだしたんです。

起業のために、やりたいと思ったことをずっとメモしていたのですが、どれにもそこまで惹かれませんでした。ただ、なぜかその時、アメリカ周遊にて買った、意訳すれば「ギャンブルで勝って旅してく」という本が、頭から離れなかったんです。

プロギャンブラーになることを天が命じているのか?そんな風にすら思うようなりました。今まで全く考えてもなかった職業ですし、ギャンブルは良くないとすら思っていた私ですが、自分でも不思議なことに、これならば休みなく全力でやれると、直感的に思ったんです。

もちろん、ギャンブラーになるのにはとても悩みました。世間体を気にしなかったわけでもありません。ただそれ以上に、やりたいことが見つかった時は、自分の感性に従うべきだと思ったんです。

そう感じた一番の要因は、両親の離婚がありました。小さい頃から両親は生真面目で厳格だったので、何かする時はいつも親の顔を伺っていて、敷かれたレールの上を歩いている感覚でした。でも、そんな両親が高校生の頃に離婚した時、今まである意味では親の言いなりだった自分が開放された感覚があったんです。

「親は親で生きてくなら、俺も俺で生きていく」そんな風に思えたんです。

親が離婚した当時は、円満だと思っていた家庭が崩れて悲しかったし、苦労もたくさんしたので、人生で一番辛かった時期でした。でも、今でも両親には感謝しています。あの経験があったからこそ今の自分があるし、もし離婚していなければ、まっとうな仕事以外を考えられなかったですから。

ベガスでの挑戦


ギャンブラーになることを決意し、まずはブラックジャックから始めようと思い、勝つためのセオリーをひたすら学ぶことにしました。

ただ、私は弱い人間なので、友達から電話が来たらギャンブルの勉強を中断して飲み会に行ってしまう。だから、誘惑を断ちギャンブルの勉強に集中するため、ラスベガスに向かいました。

ラスベガスにはたくさんのカジノがあるんですが、いわゆる勝てる場所と、そうでない場所があるとの定説がありました。私は勝てると言われているカジノから5分ほどのホテルに住み、真剣勝負を実践しながら、勝つための理論を必死に勉強しました。

しかし一年半続けて分かったのは、自分が学んでいるノウハウでは勝てないということでした。それを知った時は、気が狂う三歩前でしたね。一年半、お金も時間もつぎ込んで本気で努力して、それでも勝てなかったんですから。

そのままカジノには行かなくなり、ホテルに引きこもって毎日3本くらい映画を見るといった生活を送っていましたが「まだ何かあるのではないか?きっと自分ならできるはずだ」そんな思いはずっとありました。

引きこもり生活を半年ほど続けたある日、やっぱりカジノに戻ろうと思ったんです。でも今のまま戻っても勝てないと思ったので、今度は、必勝本に書いてあるノウハウをすべて疑い、セオリーではない方法で戦おうと決めました。だから、絶対に勝てないと言われているカジノで勝負してやろうと思ったんです。

その日、僕は人生で初めてカジノから追い出されました。

カジノから「プロ」と判断されたら、追い出されてしまうんです。今思い返しても最高の気分でした。

自分と同じような弱い人を救いたい


就職活動の人気トップ企業ランキングとか、オリコンチャートのランキングが変わるようにギャンブルの世界でも、あるゲームが流行ったり廃れたりすることがよくあります。例えば、今はポーカーが流行っていても5年後には全く流行っていないなんてことは、ザラにあるわけです。

私はプロギャンブラーとして生活しているので、常に人が集まる流行のゲームかつ、自分が勝てるようなところを主戦場にしないとお金を稼ぐことができません。だから常に成長をしていかなければならないですし、廃れそうなゲームにいち早く見切りをつけなければならないんです。その判断を誤れば、当然生活は破綻します。

変化に対応して勝ち続けていくためには、自分の成長に24時間没頭し続けられるくらいでなければ難しいと思います。だから、生半可な気持ちではなく、自分の軸を明確にしておくことが重要です。私にとってはギャンブルは天命だったのか、純粋にやりたいと思えているので幸いです。

今でこそ、やりたいことをして楽しく生きている僕ですが、両親が離婚した時は本当に辛く、友達の家を転々としていたことすらありました。

でも自分が苦しい時に助けてくれた仲間がいたから、私はグレたりすることなく幸せな人生を送ることができています。当時の弱っていた私を救ってくれた友達には本当に感謝しているんです。

だからこそ、今後は、旅をしながらギャンブルをした経験だったり、自分の培ってきた勝負強さを活かして、政治やボランティアなどに参加していきたいんです。それは、高校時代の僕のような「弱い人」を助けることだと思うので。

助けを必要としている人にいつでも手を差し伸べられる自分であるために、今日も毎日毎日を生き切っていきます。

2014.04.04

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