筋肉バカじゃ本当の身体はつくれない。35歳からのパーソナルトレーナー。

六本木で個室ジムを経営する、パーソナルトレーナーの植田さん。35歳の頃に自分に向いている仕事を考えた時、20年以上息をするように続けていたトレーニングの世界に踏み込むことに決めた背景にはどんな思いがあったのか。お話を伺いました。

植田 知成

うえだ ちせい|完全個室・予約制パーソナルトレーニングジム経営
パーソナルトレーナーとしてジムを経営しながら、ベストボディジャパンの大会にも精力的に出ている。

完全個室の予約制パーソナルトレーニングジム「CLOVER」
国内トップレベルのフィットネスモデル&選手が所属するフィットネスモデルチーム「Japan Fitness Generations」

なんとなく競馬場で働く


私は福島県の田舎町で生まれました。小さい頃から運動が好きで、柔道やボクシングなどの格闘技をやりたいと思っていました。ただ、親に反対されたり、やる場所がなかったりで、部活ではソフトテニスやバレーボールをしていました。

その後、高校生になると、話が合う人が周りにいなかったので、学校にはほとんど行かなくなりました。田舎独特の狭いコミュニティに縛られていて、すでに作り上げられたスクールカーストから抜け出すのも面倒だと思っていたんです。

ところが、家にいても特にすることがなく、暇つぶしに本を読んだりゲームなんかをしつつ、身体を鍛えるのだけは好きで毎日トレーニングをしていました。

将来やりたいことなんてなく、大学も行く気はありませんでした。親に将来どうするのか聞かれた時も、競馬が好きで馬券が当たったらいいという気持ちから、「競馬関係の仕事に就きたい」と言いました。すると、たまたま親戚に競走馬の育成場で働いている人がいて、高校卒業後はその人に地方競馬場を紹介してもらい、そこで働き始めることにしました。

それからは、青森や茨城、北海道などの競馬場を転々としながら働いていきました。しかし、24歳の頃、そろそろ一回くらい東京に出てみようと思い、上京して大井競馬場で働き始めたんです。

仕事をするの楽しいものとの気づき


東京に来てからはジムが近くにあったので、念願のボクシングを始めることができました。アマチュアの試合に出るのも楽しかったし、初めて取り組んだの個人競技の運動で、面倒なコミュニケーションなしに1人で没頭できることが好きでした。そして、同時に、ボクシングトレーナーになりたいという気持ちも芽生えました。しかし、あまりにも稼げない仕事だと知って、結婚を考えていたこともあり趣味にとどめておくことにしたんです。

一方、仕事にやる気はなく、言われたことをやるだけで、なんなら上司の言うことを聞かないこともあるほどの態度でした。すると、ある日「もう来なくていい」と言われてしまったんです。ちょうど結婚をした後だったので焦りつつも、あの態度では仕方がないとも思いました。

そして、どんな仕事でも営業力は必要と考え、営業職で会社勤めをはじめました。しかし、売る商品が合わなかったり、会社の業績が傾いたりして、2社ほど転々としていました。さすがに30歳も近くなるので、そろそろちゃんとしなければまずいと考え、次は本気で営業力を付けるために、リクルートで契約社員として働き始めることにしました。

ここではそれまでの考え方が一気に変わりましたね。それまではサラリーマンなんてかっこ悪いと思っていたのに、リクルートで働く人たちはみんな輝いて見えたんです。今の仕事がどうやったらもっと楽しくなるか常に考えていて、その環境は非常に居心地が良いものでした。それまでの仕事に対する価値観は一気に変わり、私も仕事を楽しむようになりました。

一方で、売っていた人材事業の商品自体はあまり好きになれず、営業成績が安定せず、4年間で契約満期を迎えることになりました。

パーソナルトレーナーになるという選択


その後はオファーをもらえた人材企業で、新規事業の担当として働き始めました。ただ、その会社はリクルートとは正反対の社風で、あまり居心地がいいとは感じられませんでした。私を気に入ってくれていた上司も辞めてしまい、新規事業を1人で牽引していかなければならない状況。しかも、社長の直下となり毎日怒られていて、ノイローゼになってしまったんです。

このまま続けることはできないと、会社は辞めようと決めました。しかし、年齢は35歳にもなっており、次を考えずに簡単に辞めることはできません。そして改めて自分は何をしたいのか考えた時、テレビを見てふと昔トレーナーになりたかったことを思い出したんです。

トレーニングは中学時代からずっと続けていたので、もはや息をするのと同じように自然な行為でした。そもそも好きなことだったら続けるのも苦じゃないと思い、トレーナーの仕事に関して、しっかりと調べてみることにしました。すると、パーソナルトレーナーであれば、やり方次第では十分稼げるということが分かってきました。

ただ、子どもも生まれていたので、突然会社を辞めてトレーナーを目指すなんて、いきなり妻も許してくれないだろうと思い、説得するためにトレーナー市場の分析や事業計画を作成し、プレゼンテーションしたんです。(笑)

何歳までに独立するか、目標達成できなたかったらいつ撤退するかなど、かなり細かく計画を立てることで、その計画に滞りがでたら撤退をすることを条件に、なんとか説得することができました。

自分の身体でトレーニングを試す


最低限のトレーナーの資格を取った後、独立を前提として富裕層向けのジムに就職して働き始めることにしました。身体を鍛えたり、ダイエットをする専門的な知識も、自分自身がずっとトレーニングを続けていたので、そこまで必死にならなくても、すっと頭に入り理解することができました。

また、いい先輩トレーナーに出会って技術や知識も身についていきました。そうやって新しく得た知識を自分自身で試すことで、自信を持って提供できるものになっていったんです。

さらに、先輩に誘われて、ある時、ベストボディジャパンという、カッコイイ身体を競うコンテストに出場することになりました。コンテストのためには筋肉をなるべく減らさずに志望を極限まで絞り上げるという相反することを同時期に求められるので、トレーニング手法だけでなく、生理学や運動生理学などのかなり深い部分まで学んでいく機会となりましたね。

そして、2ヶ月間真剣に取り組んだ結果、その大会でなんと優勝することができたんです。名前を呼ばれた瞬間の高揚感は言葉にできないほどで、それからはコンテストにのめり込んでいきました。

コンテストの大会上位者たちは、客観的に自分を見れる人だからか人柄もよく、そこでできる人脈自体もかなり価値のあるものでした。そして、妻も大会に出るようになり、「植田夫妻」として知ってもらえるようになり、2年ほど働いたタイミングで、当初の予定よりも早く独立することにしました。

最初は本当にお客さんが来てくれるのか不安だったけど、自分を信じてくれ、パーソナルトレーナーとしてお願いしてもらえるのは嬉しいですね。

筋肉をつけるとモテるんです


今は六本木で完全個室で予約制のジム「CLOVER」を経営しています。パーソナルトレーニングにより短期間で痩せるプログラムを提供しています。食事、トレーニング、睡眠の3つを軸に、筋肉をつけて基礎代謝をあげることで、痩せるだけでなく健康的な身体をつくっていくプログラムです。

トレーニングは本人の意思次第でもあるので、本気かどうかを最初のカウンセリング時に判断しています。ただ、がむしゃらに動くだけで身体が変わっていくわけではないので、トレーナーは機能解剖学や運動生理学などの知識を元にした適切な運動方法や器具の使い方を教えたり、実際に筋肉に効いているかどうかの指南と、筋肉を増やし脂肪を減らすための適切な食事指導を行ったりするのが仕事です。

トレーニングを始めると、一定のタイミングで必ず体重が落ちなくなる時期が来ます。その時に、お客様の意識が変わって真剣になる瞬間があり、そこからがスタートですね。心のどこかで「痩せないかも」と思っていると、やっぱり効果は出づらいんです。

運動は一定期間だけ行うものではなく、人生の中でずっと続けていくものです。そのため、一時期だけではなく、人生のパートナーになれるような存在になれればと思います。

また、日本のフィットネス人口は3%程度と、トレーニング自体がまだまだ一般的ではありません。そこで、より多くの人が「筋肉をつけたい」「トレーニングをしたい」と思ってくれるように、コンテスト仲間と共にJapan Fitness Generationsというチームを作り、鍛えぬかれた身体をアピールする活動も始めました。ハロウィンで上裸コスプレをしたり、みんなで海に行ったり。もちろん身体を鍛えることが健康につながることは言うまでもありませんが、筋肉がついた身体を持つこと自体がかっこいいということを伝えていきたいですね。実際に、海に行くと色々な人からひっきりなしに声をかけてもらえ、1時間位は身動きがとれないくらい写真撮影をせがまれたりもします。(笑)

こうやって体を鍛えることの良さを多くの人に伝え、健康になるフィットネス人口が増えていけば良いです。

2015.02.02

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