花を通じて、季節や旬を感じて生きていく!地球で生きる美しさを素材に表現し、喜びを。

フラワーアーティストとして、アレンジメント制作や店舗用の花のデザインを行う佐藤さん。小さい頃から空間を表現していくことに興味を持っていたところから、花を扱うようになるには、どんな経緯があったのか。花を通じて自然と触れ合いながら生きる佐藤さんの半生をお伺いしました。

佐藤 友香里

さとう ゆかり|フラワーアーティスト
フラワーアーティストとして、花や植物で空間を演出する。

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自分を表現する仕事がしたい


私は北海道の札幌と旭川の中間くらいの位置にある、田舎町で生まれました。
高校からの最終バスの出発時刻は夜7時20分で、毎日部活を終えて最終バスで30分かけて家に帰っていました。
PHSの電波もバスの途中でなくなってしまうのでそれまでに必死でメールを送り、
また翌朝ある地点を通過するとメールを受信する、そんな生活を送っていましたね。

小さい頃からファッションショーをテレビで見るのが好きで、
将来はヘアメイクやスタイリングをしたいと思っていたので、高校卒業後は東京の美容師になる専門学校に行くことにしました。
ファッションショーの華やかな世界に惹かれ、東京で有名な学校に入れば私もその世界に進めると思ったんです。

ただ、すぐに美容師は「サービス業」であることに気づき、やりたいことと違うと感じ始めました。
美容師の仕事は、お客さんの希望が一番で、自分の表現が優先されるわけではなく、
私はそれよりも自分で表現していくのが好きだったんです。
また、学校ではヘアメイクショーなども行っていて、照明や音響なども含めた空間全体をコーディネートをする仕事に興味を持ち始めていました。

しかし、具体的に学校を卒業をした後の道は決まらず、誘ってもらえた専門学校の事務スタッフとして働くことにしました。
仕事をしながら将来を考えようと思ったんです。

そんな経緯で働き始めたある時、白紙のノートをもらうことがあり、
自分が考えていることや悩んでいること、思いついたことなどをひたすら書くようになっていきました。
そして、昔からヨーロッパに憧れがあり、行ってみたいと思っていることも書いていたら、

「行きたいと思っているのに、なんで行かないんだろう?」

と思い立ち、ヨーロッパに一人旅することを決めました。

パリでフラワーアレンジメントを


1年ほどで専門学校の仕事は辞め、その後もお金を貯めてから、バックパックを背負ってヨーロッパの旅に発ちました。
それまで海外はほとんど行ったことがなく、初めての旅でした。
ちょうどワールドカップの時期で、優勝国イタリアの熱気を生で感じたり、
敬虔なクリスチャンのアメリカ人と、神について話すことで信仰とはどういうものか感じたり、何もかもが新鮮でした。

この旅を通じて感じたことも、ノートに書き溜めていきました。
それまではヨーロッパは「憧れの場所」で実感がなかったけど、そこに住む人も自分と同じ人間で、ご飯を食べ、泣いたり笑ったりして生きていること。
色んな場所で職人さんを間近でみて、ものを作って人に喜んでもらう仕事は素敵だということ。
日本とは違った自然に心動かされたこと、そんなことを書きなぐっていきました。

そして2ヶ月半の旅を終えて日本に帰ってきてからは、
もっと色んな新しいことを体験したい、できることを増やしたいと思い、ダンスやいけばなを習ったり、料理をしたりするようになりました。
自分の身体を作っている食を意識すると、自分が地球に生きる一員だということを認識できるようになりましたね。
また、いけばなは置かれる場所を意識して、少ない花を使って空間を表現できることが面白かったんです。

花に興味を持ち始めると、さらに海外で活躍する日本人フラワーアーティストにも興味がわき、
ブログを見ているうちに、パリのフローリストで研修生を募集していることを知りました。
パリのような素敵な場所で花を使って表現ができるなんて面白いと思い、
すぐに「行きたい!」と、25歳でパリ行きを決意しました。

花を仕事にする


私は「リッツホテル」の装花を担当するチームで研修させてもらい、
ホテルのレストランやパブリックスペースの装花、お部屋へお届けするブーケなどを制作していました。
フランス語も喋れないし、ブーケなんて作ったことがなかったので、見よう見まねで周りについていくのに必死でした。
でも、予算度外視でスケールの大きい仕事をさせてもらえるし、
リッツホテルという最高級ホテルをデコレーションできるのはすごく楽しかったですね。

ただ、こういう仕事を日本でもしたいと思うものの、
日本の花業界に関しては何も知らなかったし、多分フランスとは違うだろうと思っていました。
そこで、3ヶ月ほどで帰国した後は、勉強も兼ねて代官山の花屋で働かせてもらうことにしました。

パリではデコレーションの仕事しかしていなかったので、「花を売る」というのは私にとって新しく、
花を売って商売するとはどういうことか、学べることは多かったですね。
しかし、私はやっぱりどちらかと言うと、花を売るというよりも、花を使って空間をデザインしていきたいとも感じていました。
また、雇われの身だと、どうしても責任感を持ちきれない部分もあり、環境を変えるため、2年ほどでその花屋は辞めることにしました。
それと同時期に、住んでいた家も建て替えることになったので、仕事だけでなく住む場所も探さなければならなくなりました。

すると、仕事も家も縛られるものが何もないなんて「フリーダムだ!」と気づき、
こんなにも時間があるなら行ったことのないアメリカ、それも世界の経済の中心であるニューヨークに行ってみようと考えたんです。
ニューヨークでのフラワービジネスにも興味があり、友達に相談したらすぐにニューヨークに住む人に連絡を取ってくれ、「行く運命に導かれている」と思ったんです。

ゼロから場をつくっていく


ニューヨークでは花屋の仕事場や、パーティーにデコレーションに行く現場を見させてもらいました。
ニューヨークのパーティーは日本のように設備もパッケージされている場所を借りるのとは違い、
場所だけを借り、空間を作るために照明や音響の設備などもそれぞれ専属の業者が搬入を行います。
花のデコレーションを専門として行う仕事も盛んで、日本では考えられないような金額で取引も行われていました。

当初は1ヶ月の滞在予定でしたが、その現場を見させてもらえるのが楽しくて、
一度日本に帰国した後に、3ヵ月延長するほどでした。
延長期間には移民が行く語学学校に朝から晩まで入り浸って、英語を学びに来ている人と話ながら、仕事場に行かせてもらう生活を送って行きました。
ニューヨークでの仕事ではパリ、日本とも違った価値観や働き方を知ることができ、より日本人としてのアイデンティティーの大切さを感じました。
それぞれの土地のよさを融合し、日本人として自分の言葉が通じる国で勝負しようと思い、
約4ヶ月の滞在を終えて日本に帰国することにしました。

そして、どこかに就職するのではなく、フラワーアーティストとして個人で勝負することにしました。
「どこかに所属している自分」ではなく、「佐藤友香里」個人として立っている感覚が強かったので、独立することへの違和感はありませんでした。

最初は個人で仕事の依頼をもらって食べていくのは大変だったけど、3年経って少しずつ仕事も安定するようになりました。
現在は主に、レストラン等の店舗ディスプレイ制作、誕生日などのギフトアレンジメント制作、ウェディング装花、撮影スタイリングなどを行っています。

地球を感じて生きていく


この仕事の楽しいところは、花を通して季節のめぐりを感じられることです。
地球の中に生きているという感覚を持てるんです。
また、花という元々美しいものに手を加えることで新たな美しさをつくりだし、人に喜んでもらえるのがいいですね。

私は造花は基本的には使わずに、主に生きている花やドライフラワーを使っています。
花は生き物なので、それぞれ表情や色・艶・形も違うので、先にイメージをつくるのではなく、市場に行って見つけた旬の花と対話しながら表現していきます。
この花はこの茎の曲線を活かそうとか、そんな感じです。
また、渡す時のことだけでなく、その後につぼみが咲いたり、花が散っていく姿もイメージして作るので、まさに花の命を感じます。

今は、昔と違って自分の表現をしたいというよりも、誰かが喜んでくれるために表現したいという気持ちが強くなっています。
仕事は人に喜んでもらうためのもので、それが私にとって社会と関わるということなんです。

そして、今後は舞台装花や空間を演出していく仕事もしていきたいと考えています。
特に、地方であれば使われていない建物や、余っている土地は多いので、
場所だけ借りて、その中身を全て演出していくニューヨーク式のイベントを開けるんじゃないかと。
結婚式も、決まりきった会場で行うことが多いけど、このスタイルならまた違った空間をつくれると思うんです。

花の仕事は食に通じるところもあり、旬を感じたり、季節を愛でたりする生き方に気づくきっかけになりうるものなので、
そういったライフスタイルまで踏み込んで提案していけたらと思います。
また、自分の手で花を触りながら、考えて形にしていくこの作業は、人の可能性を広げてくれると思う瞬間も多いので、
将来的には子どもたちにもこの体験を提供していけたらと思います。

そして、私は地球人として、花を通じて自然や季節を感じながらこれからも生きていければと思います。

2015.01.25

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