もっと、勘違いしちゃえばいいと思うんです。

不登校や引きこもり、ニートなど、人間関係に悩む人の自己表現の練習や親睦を目的としたOnly One Crewの代表を務める鈴木さん。まさか自分が今の仕事につくと思わなかったと話す背景には、意外な過去のエピソードがありました。

鈴木 剛

すずき つよし|コミュニケーション支援団体運営
不登校や引きこもり、ニートなど、人づきあいに悩む人の、自己表現の練習や親睦を目的としたOnly One Crewの代表を務める。
Only One Crew

誰にも話しかけられないように、走って帰りました


小さい頃から、友達と遊ぶのが苦手でした。
恥ずかしがり屋で、授業の音読などはもちろん、
将来、結婚式を開いたら、自分が注目されて嫌だな、と思うほどでした。

一人でいる事が好きだったので、学校のチャイムがなると誰にも話しかけられないように、走って家に帰りました。
小学生特有のいじめなどがあったことも原因だったのかもしれません。

ところが、そんな過去が嘘だったかのように小学校高学年、中学校と進むに連れて人付き合いが活発になっていきました。
仲の良い友達ができ、自然と人といるのが楽しいと思うようになり、
中学からは、むしろやんちゃでおしゃべりな方でした。

高校では軽音楽部に入り、人前で歌うまでになりました。
目立つことへの関心も芽生え始めていましたね。

いわゆるスクールカーストが大分変わったんですよね。

自分の方がダサい


大学時代は、モテたい一心でしたね。(笑)

旅行会社の学生ツアーの添乗員を務めており、リゾートに旅行するお客さんを楽しませるバイトをずっとしていました。
TVに出たくて、アナウンサーの学校に通ったりもしていました。
この頃になると、人付き合いが苦手だったのなんて嘘のようでした。
 
大学二年になった頃、NYでホームステイするツアーに参加した事がありました。
驚いた事に、ステイ先の家族とのやりとりが“how do you think ?”(あなたはどう思う?)ばかりだったんですよね。
最初は「別に何も考えてないよ」と思ってたんですよ。
一緒に行った学生は真面目な感じで答えていて、なんかダサいなと思っていました。

でも、よく考えてみると、自分は何も考えてないから答えられないんだ、ということに気付いたんですよ。
外見ばかり気にして、中身が全く伴っていない。

自分の方がダサい

そう思うようになったんです。

なんだかそれに気付いた時、すごく悔しかったんですよ。
日本に帰ってからすぐに添乗員のバイトを辞め、毎日学校に通い、本を読むようになりました。
価値観が、本当に大きく変わりました。

探していたものはこれだ


就職活動を経て入社したのは印刷系の会社でした。
本当は色々と行きたい業界があったのですが、受からなかったんですよね。
そういった経緯もあり、入社してから悶々とした日々が続きました。
自分が与えられたミッションは何なのだろうと、ずっと考えていましたね。

そんなある時、雑誌か何かを見ていて、不登校や引きこもりの学生のサポートを行う、
山下英三郎先生の活動を見て、衝撃を受けたんですよね。

「俺が探していたものはこれだ」と思ったんです。

不登校の学生と自分が遠くないと感じたんですよね。
そうなっていてもおかしくない自分が、今では人づきあいが好きになっている。
この仕事に自分ほど向いている人はいない、と思うほどでした。
それから山下先生の講座に通うようになり、思いはどんどん強くなりました。

また、同じ頃、会社で新規事業の責任者になった事で、売上のプレッシャーの中遅くまで働く日が続き、
気持ちが病んできてしまっていたんですよ。
ひどいときは、駅のホームを歩いていても、真ん中を歩かなければ飛び込みそうだと感じることすらありました。

さすがにまずいと思い、会社を退職し、ニュージーランドにワーキングホリデーに行く事に決めました。

運命なんじゃないかと思いました


そこでのんびり過ごす中で、リフレッシュできたのは大きかったですね。
もっと自由でいいんだと思えるようになりました。

そろそろ何か働かなければと思い始めた頃、現地のスーパーに貼ってあるボランティア募集で、
引きこもりのサポートなどを行うコロンブスアカデミーというNPOの求人を見つけました。

運命なんじゃないかと思いましたね。

まさかニュージーランドのスーパーで、自分のやりたいことに出会うなんて思いもしなかったです。
すぐにそのNPOで働き始め、帰国まで働きました。

日本に帰ってから何をしようか考え始めた頃、
たまたま、NHKの番組で引きこもりの就労支援のNPOについて知りました。
ここでもまた運命を感じたんですよ。

すぐに働かせてくれと電話したところ、募集をしてないと断られてしまいました。
でも、諦めずに手紙を書いたところ、飲みに来いと言ってもらい、働く許可をもらえたんです。

翌週から働き始め、3年間住み込みで引きこもりの就労支援を行いました。

「運命だ」って繰り返していると、勘違いだと言われる事もあるんですが、
人生って勘違いから動いていくと思うんですよ。
やってみなければわからないんです。

だから、勘違いで始めていいと思うんですよね。

働きたいけど働けない人のための場所をつくる


引きこもりの就労支援、精神障害者の支援を行った後、
西東京を拠点に、対人関係に苦手意識を持つ人が定期的に集い、
コミュニケーションの練習をする場を作り始めました。
 
前職での経験をもとに、働くことも大事だけれども、それ以前のコミュニケーションを好きになり、
楽しいと思えることが大事だと気付いたんです。

活動を初めて10年になるので、参加者には後輩が出来たりするんですよね。
それで、新しく入った人にアドバイスをするようになる。
そうする事で自分もしっかりしなくてはと思い直す。
これって、1対1のカウンセリングなどの、援助者・被援助者ではうまれない関係だと思うんです。
場があるからこその効果だと思うんですよ。

これからは、働きたいけど働けない人の活動場所を作りたいと思っています。
今の活動への参加費を自分で出せない事で後ろめたく感じている人もいるんですよ。
バイトをしたいけど働くことができない。

だからこそ、できる事で社会に価値が生まれる仕組みをつくることで、
給料を発生させられるような事業をつくりたいんですよね。

街の図書館みたいなものを作れたらいいなと思っています。
寄付で本を募って、主婦や家族連れなど色々な人が集う。
カフェでコーヒーやケーキを用意して、その利益を少しずつ分配する。
すごくゆるい会社みたいな組織を作れる気がするんですよね。

やってみたいことはたくさんあるので、考えはすごく膨らみます。

勘違いかもしれないですが、だいたいはそれが始まりなので、
これからも勘違いし続けようと思います。

2014.03.23

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