中途半端をやめて、もっと冒険しませんか?
フリーランスのデザイナーとして独立し、新しく仕事を始めるSanさん。 デザインとは全く異なる業界に長く携わりながら、このタイミングで独立を決めるに至った「覚悟」の背景を伺いました。
San
サン|フリーランスデザイナー
フリーランスデザイナー。ソーシャルゲームのイラスト作成やwebデザインを行う。
HP
何にも振り切れていなかった
小さい頃から、「振り切れていない」の一言でした。
昔から絵を書くのが好きで、家の留守番の時間でよくイラストを描書いている事が多かったです。
わりと根暗だったんですよね。
でも、当時はオタク文化が一般的でなく、それを恥ずかしいと思っていました。
漫画クラブに入ったんですが、周りと同じように見られたくないなと思っていたんですよ。
結局、中学ではテニス、高校ではチアを始め、アクティブになっていきました。
高校の時にディスコブームで洋楽に関心をもち、大学では英語を勉強するようになりました。
外国人がたくさん住んでいるシェアハウスに住んでいた事もあり、
将来は通訳など、英語を使う仕事も考えました。
それとは別に環境問題への関心もあり、NGOを考えた事もありました。
漫画家への思いがなくなったわけでもありませんでした。
結局、何にも振り切れていなかったんですよね。
楽しさに逃げた
そんな時、たまたまデザイン学校の海外留学のプログラムを見つけ、
応募することに決めました。
英語もデザインも中途半端だと思ったんですよね。
なんとか選考に通過し、アメリカに留学することが決まりました。
留学先では、2年間コンピューターグラフィックスを学び、
そのままアメリカでデザイナーとして働こうと決めたんです。
ところが、その矢先に9.11の事件が起こりました。
一気に働き口がなくなってしまったんですよ。
つかみかけたキッカケをつかめないまま、日本に帰る事になりました。
帰ったのはいいものの、アメリカで学んだ手法を活かせる仕事が
未だなかったんですよね。
結局、知り合いから紹介された夜職で働く事にしました。
仕事は好きだし楽しかったです。
楽しさに逃げたのもあったんでしょうね。
キャバや風俗のようにお店に依存しない仕事だったので、
自分次第で本当に報酬が変わり、ある種フリーランスみたいなものでした。
軽い気持ちで始めたのが、気付けばかなりハマっていましたね。
でも、やっぱり金銭感覚が変わってきてしまうんですよ。
一晩で数千万稼いだという噂がたつ人もいたし、
お客さんがお札に見える、と話すような人も本当にいました。
実際、性格がそういう環境に馴染んでしまうことの怖さはありました。
そしてなにより、年齢的に限界があるなと感じたんですよね。
30歳になる前に、改めてこの先どうしようかを考えることになりました。
一緒に働く同僚が、早く結婚してしまおうだとか、自分で独立しようとか言っている中、
自分はどうしたいんだろうと考えたんですよね。
そんな中たどり着いたのは、やっぱり自分が好きな「デザイン」だったんです。
ブレてばっかりの自分も、好きな事を軸にすれば、
大丈夫なんじゃないかと思ったんですよ。
今度こそブレないという覚悟
夜職を辞めてから就職活動を行い、デザイン会社に入社しました。
入社して担当したのは、当時急成長を始めたソーシャルゲームなどのデザインでした。
カードゲームが流行り始めたこともあり、キャラクターのイラストを担当することが多かったです。
夜職時代は、会社員なんてありえないというような雰囲気がありましたが、
デザインで食べていくため、がむしゃらに働きました。
でも、やりたかった仕事ができたかというと、そうではなかったんですよね。
本当は制作の業務に携わりたかったのですが、年齢や組織のバランス上、ディレクションに回されてしまったんです。
その後のキャリアパス等も考えると、
本当にやりたいことをやるためには、会社の中じゃできないんじゃないかと漠然と感じるようになったんですよ。
でも、年齢的な不安もあり、行動に移せずにいました。
そんな中、私にとってキッカケとなったのは夫の存在でした。
夫はフランス人なのですが、日本に来た頃は、日本語もしゃべれないし、
働くあてもない状況でした。
ところが、自分のコミュニケーション能力を糧に、
モデルや語学教師のアルバイトから、徐々にネットワークを広げていき、
今では何百人も集めるイベントのオーガナイザーを務めるようになったんです。
異国の地でやりたいことを形にしてなんとか生計をたてる彼の姿を見て、
私も覚悟を決めなきゃいけないと感じました。
今度こそブレない、という覚悟です。
中途半端に迷って逃げて、何にも振り切れずにいた私ですが、
今度こそ、自分の好きな事に振り切れよう、そんな風に決めたんです。
そうやって、フリーランスとして独立する事を決めました。
まだまだ冒険してもいんじゃない?
やっぱり、独立する事に対しては不安もあります。
でも、仕事やお金・自分自身をマネジメントするという意味では、
夜職時代の経験がすごく活きると思っています。
すぐに辞めてしまう人がものすごく多い中、続けたからこそ得たものがあると思います。
これからは、自分が体験した事を、絵を通して伝えいきたいと思っています。
私だからこそ描けるストーリーがあると思うんです。
コミックエッセイでデビューするのが目標ですね。
これまで色々迷ったり、中途半端だったりしたのですが、
やっぱり、自分の好きな事をブレないでやった方がいいと思うんですよ。
アラサーの人もまだまだ冒険してもいいんじゃない?って思います。
37歳の私がこれから挑戦するので。
2014.03.21