社外同期、シェアハウスを通じて得た公私混同の働き方
6年間シェアハウスに住み続け、社外同期というコンセプトをもち活動しながらも、 「人に頼らず生きていくこと」を昔から意識していたという中村さん。「協力や仲間の大切さ」に思い至るまでに、どのような背景があったのでしょうか?
中村勇気
なかむら ゆうき|IT系ベンチャー勤務
IT系ベンチャー企業で働く傍ら、コンセプト型シェアハウスの運営を行う。
2014年4月より、渋谷にて新たなシェアハウスをスタートし、
さらにはシェアオフィス、シェアエリアなどの分野にも挑戦予定。
中村勇気 (Facebook)
双子の僕は、どこか足りない部分があるのかもしれない
僕は、一卵性の双子として生まれました。
よくある話かも知れませんが、二人セットで扱われたり、比べられたりすることばかりでした。
普通の人は一つの卵から一人が生まれるはずなのに、僕達は一つの卵から二人が生まれた。
だから、普通の人に比べて、どこか能力が足りていない部分があるんじゃないか、という意識がとても強かったことを覚えています。
幼心に、そんな焦りを感じていました。
半分しかない自分は、普通の人の倍以上頑張らなければ人並みにもなれないんじゃないか、という恐怖心もありました。
そのせいか自立して、「人に頼らず生きていくこと」へのこだわりはとても強かったと思います。
自分は生かされていた
学生時代はスポーツに打ち込み、大学時代はラクロスというスポーツでU-21の日本代表候補にもなりました。
チームではキャプテンを務めていましたが、もう完全に独裁者でしたね(笑)
周りの意見を聞かずに、「俺はこうしたい」という独断で行動し、我がとても強かったです。
学生時代を捧げて努力した事もあり、新人戦優勝、ユースへの選出等、成果も出し始めていました。
ところが、リーグ戦を控えた時期のある練習試合で、僕は、腎臓破裂という大きな怪我をしてしまいました。
入院せざるを得ない大きな怪我で、プレーできない事へのもどかしさや、
大事な時期に抜ける事の申し訳なさでいっぱいでした。
でも、そんな時周りのメンバーが忙しい時間を削ってお見舞いにきてくれたんですよ。
そこで、仲間に対する考え方が変わった気がします。
正直、それまでは自分がチームを動かしていると思っていたんです。
でも、怪我をして何も出来なくなって、周りに助けられて、
自分一人の足で立っていたつもりが、後ろで人に支えられている事に気付いたんですよね。
これまで自分一人で生きてきたと思っていたのが、生きられてなかったんですよ。
生かされていたんです。
怪我をしてよかったと思えるほどの気づきでした。
まずは個々人が自立した姿勢をもつこと、その上で仲間と助け合う事で、
掛け算の成果を出せる事が理想なんだと考えるようになりました。
シェアハウスによって広がった「社外同期」という仲間
大学を卒業後、東京のベンチャー企業に就職をすることになりました。
地方出身で東京に友達が少なく、ベンチャー企業に就職した為、社内の同期もあまり多くはいませんでした。
そのため、仲間づくりと生活費の節約も兼ねて、興味を持っていたシェアハウスをはじめました。
正直最初は、一人の時間が好きな性格でもあったので、自分に合わないんじゃないかと思っていました。
でも、実際に住んでみて、意外と一人の時間は多いし、すごく価値があると気付いたんですよ。
些細な事で言えば、家に帰ったときに「おかえり」「ただいま」がある。
風邪をこじらせて仕事から疲れて帰ってくると、自分の部屋を保湿するために濡れタオルがかけてあったこともありました。
あれは人生初の体験でおもしろかったです(笑)
社外の仲間だからこそ、自分の相談を客観的に聞いてもらえた事だってあります。
自分が社内のことで悩んでいる課題は、実は他の会社の人から見ると羨ましがられるような事だったりする。
色んなバックグラウンドの色んな視点で話せるので、学びも刺激もとても多かったですね。
僕は「社外同期」という考え方を大事にしていて、社内では同期は数人でしたが社外には多くのユニークな仲間ができたと思います。
ニュートラルになれるサードプレイスとしてのシェアハウス
昔一緒に住んでいた住人やそこでできた仲間とは、今一緒に仕事をしている人もいます。
社内外の区別もなくなり、公私・ワークもライフもあまり境目なく本当に楽しい6年間でした。
仕事もあそびもいい意味でダブりがあるほうが楽しいし、新しいものも生まれやすかったりする。
振り返ってみると、シェアハウスをすることで僕たちは自分たちだけのサードプレイスを作っていたんだと思います。
スターバックスさんのコンセプトでもあると思いますが「家」という1番目の場所、「職場(学校)」という2番目の場所。
そしてこのふたつを結ぶ中間地帯が3番目の場所としてのサードプレイスです。
形式張らなくてニュートラルでいられる場所、仕事や家庭のことを忘れてくつろいでいられる場所だったんだと思います。
シェアハウスしていると家自体、特にリビングがそのサードプレイスとして機能していたんだと思います。
夜遅くに住人で語り合ったり、ホームパーティをしたり、プロジェクタを使い勉強会をしたり、
住人じゃない人がイベントスペースとして活用したり、
カウチサーフィンで外国人が泊まりに来たり、地方の就活生が泊まりに来たり・・・リビングでいろんな出来事がありましたね。
よく、社会に出ると本当の仲間に出会うことはないとかって言うじゃないですか?
全くそんな事ないと思うんです。
シェアハウスで出会った仲間とは馬鹿なこともたくさんしたし、真剣なこともたくさんしたし、些細なことでケンカをしたり(笑)
とても大切な仲間で、家族に近い感覚です。
それも、サードプレイスとしてのシェアハウスがあったからこそじゃないかな、と思っています。
「磁場」を生み出し、広げていく
社外同期を作るためになんとなく始めたシェアハウスですが、
なんだかんだでもう6年近く住んでいます。
今住んでいる人とそのつながりの出会いで化学反応を起こし、大きな花を咲かすための土壌をつくる「ツチラボ」という
シェアハウスもその一つでした。
個人として自立しながらも、お互いで補い合う。
補うだけではなく1+1を3以上にしていき、それぞれの活動や仕事につなげていく。
そんな人が集まる場所になっていたんじゃないかなと思います。
思いや魅力を発する人が交わり始めると「磁力」みたいなものができてくると思うんですよ。
同じような志をもった人が集まり、交わり、磁力を帯びることで「磁場」が形成されて、そこに惹かれてまた人が集まる。
これからは、そんな「磁場」を生み出し、広げていけたら面白いな、と思っています。
コンセプトをもったシェアハウスやシェアオフィスをいくつかまとめて作り、
「シェアエリア」にしてみたいんですよね。新しいコミュニティの形として。
新しい挑戦も生まれると同時に、そのつながりがセーフティネットにもなると思うんです。
昔やっていた海外ドラマの「フルハウス」みたいな生活も面白いんじゃないかと思いますね。
これからも良い意味で公私混同してやっていきたいですね。
2014.03.18