自殺を減らすのでなくこの世から完全になくす。劣等感の塊だった僕がめざす世界。

自殺撲滅をミッションに掲げ、誰でも気軽に相談できるサイト「ココオル」を運営している丸田さん。自分のような子どもを救いたいと話しますが、どんな背景があったのでしょうか。

丸田 勝也

まるた かつや|悩み相談サイトを運営
みんなのお悩み相談コミュニティ-ココオルを運営する、株式会社ここおるの代表取締役社長を務める。

みんなのお悩み相談コミュニティ-ココオル

なんでこんな家庭環境なんだろう


私は物心ついた時から父が厳格だったことや、裕福とは言えない家庭環境も重なり、いわゆる機能不全家庭という状態で育ちました。しんどい自分を誰も助けてはくれず、なんで自分はこんな環境で生きているのかと、何か悪いことをしたのかなと思いながらずっと生きていました。

学校でいじめられるということはなかったのですが、地域としても荒れていた環境ということもあり、家庭環境も理不尽なことが少なくないような日々でしたので、人間不信というか、人の優しさや思いやりとかをあまり感じられることは少なく、自分自身も素直ではなくなり、世の中に対して斜に構えたような感じで生きていましたね。

幸せというものをほとんど感じないような漠然とした毎日を送っていましたし、自分のこの家庭環境や遺伝などのことも考えると、どれだけ今頑張ったとしても、絶対に立派な人間にはなれないだろうな、努力しても無駄なだけなんだとずっと思っていました。でもどうしてこういう状況なんだろうと、いつも不思議には思っていました。

中学では周りの同級生と話を合わせたり、中途半端に少し不良っぽく振る舞っていたりしていました。高校は、中学の同級生があまりいないところに行きたいと思い、少し遠い学校を選びました。

このような心境で日々暮らしていましたので、常にストレスがかかっていた状態だったのだと思います。悩みや辛いことを紛らわせるためなのか、食欲は非常に旺盛で、身長は170㎝もないのに体重が80kgを超えており、かなりの肥満児でしたね。

努力が自信に変わる


その後、高校3年生になり大学受験の時期になると、ある程度しっかりと勉強はしていました。

現役での受験では、通っていた高校のレベルからすれば、ある程度偏差値的には高い大学に合格できたのですが、一般的にはそれほど難関校と言われる大学ではなかったので、このままでは自分の人生は何も変わらないと思い、浪人することを決意しました。ここでレールを変えなければ自分は一生何も変わらない、そう思ったんです。

そして、浪人して予備校に通い始め、成績がどんどん伸びてきました。それまでの学校生活では、いくら自分一人で勉強をしても、勉強のやり方を分かっていなかったのでなかなか成績が伸びなかったのですが、予備校の先生は、すごく分かりやすく、丁寧に勉強の仕方から教えてくれたのが良かったんだと思います。

自分は物心ついた時から劣等感の塊で、他の人と比べてもあらゆることが全然できないことは分かっていたので、まずは予備校の先生の言うとおりに一生懸命に取り組み、それこそ朝から晩まで、電車での移動中も英単語の暗記などの勉強をしていました。

その結果、偏差値40以下から1年間の浪人生活の末、同志社大学の商学部に合格することができました。この時初めて、適切な努力を継続し続ければ、結果につながることを実感できて、こんな自分でもやれるんだと自信につながりましたね。

また、高校受験の前後で、太っていた自分が嫌だったので痩せようと決意し、80㎏を超えていた体重は約1年間で20kgほど落ち、明らかに外見が変わり、周りの人の反応もガラリと変わったことも自信になりました。

社会に大きなインパクトを与えるために


大学入学後は、自分に自信がなく、あまり恵まれた環境ではなかった自分のような子どもたちのために何かできればと思い、児童養護施設の子ども向けの支援活動などに参加したりもしました。ニートや引きこもり等の問題など、世の中には多くの社会問題があることは知っていましたが、私にとっては、自殺やいじめ、虐待などといった子どもや女性に対しての理不尽な生き死にに通じるような問題を、何とかしたいという想いがものすごく強かったんです。

そして将来的には、社会的に追い詰められてしまっている人たちを支援して、一人で悩み苦しむ人のために何かしていければと思うようになりました。ただ、ボランティアや慈善活動などではなく、事業として継続性のある形でないと、良い仲間も集まらず、事業規模も拡大できないと考えていました。そこで、起業家や経営者としての能力を身に付けるために、学生団体での活動やビジネスコンテストへの参加、塾の講師や家庭教師もしながらゼミでは経営を学ぶなど、様々な活動に取り組むようになりました。

就職先については、人間としてどこでもやっていける能力を身に付けたいと考え、経営コンサルティング企業やITベンチャー企業を中心に検討していました。周りでは、起業していた友人はたくさんいましたが、自分の中では大きな事業を創るにはまだ実力不足だと思っていましたし、何よりも、世界的に見てもヒト・モノ・カネ・情報が集中している東京という場所でまずは働いてみたいと強く思っていたので、その条件に合った東京のITベンチャー企業に就職することにしました。

7年で独立


就職活動中から入社後も、3年で辞めると社内外で公言していたこともあり、入社してからはとにかくがむしゃらに働きました。学生時代にいろんなことを経験してきたつもりで、ある程度自信はありましたが、社会人として、ビジネスマンとしては0からのスタートでしたし、自分の能力が通用するとは全然思っていなかったので、とにかくまず自分にできることは量をこなしていくことだと思い、朝から晩までずっと、土日もほとんど休まずに働いていました。そのため上司などからはしばしば休むように言われましたね。

会社では新規事業の立ち上げチームに配属され、新規事業の立ち上げ、営業、マネジメントなど様々な仕事をさせてもらいました。3年で辞めると言っていた自分を採用してくれた会社に非情に恩義を感じていたので、なんとかこの事業を成功させたいと思っていましたね。

ただ、3年経ち、事業はどんどん成長しているものの、自分の中では完全にやりきったとは感じられなかったので、その後も会社で働き続け、平行して自分のミッション達成のため、自閉症の子どもの支援や児童養護施設の子どもたちを支援する団体でのボランティアや、ネットからうつ診断ができるウェブサイトの運営などを始めるようになりました。

自分自身が漠然と悩んでいた経験があり、そこから乗り越えてきて、自分の世界をどんどん広げていった経験があったので、下層社会、下流社会とよばれるような現実を知っていると同時に、教育レベルが高く、前向きに生きる人たちがいる現実も知っていることを強みとして、こういう自分ができることっていったい何があるんだろう?と思い、色々と考えながら行動していました。

考えながらも少しずつ行動もしているような生活をまた3年ほど過ごしながら、もう少し会社で働きながら、自分のウェブサイトは徐々に拡大させていこうと思っていた矢先、勤務先の社長の強い後押しがあり、2014年の4月に7年働いた会社を辞め、独立することに決めました。

ココオルが必要ない未来


そして、悩みを相談できる「ココオル」というウェブサイトを立ち上げました。このサイトは、家族や友達など周りの人に相談できない悩みを抱えた人が無料で相談できるサイトで、臨床心理士という専門家の人から回答をもらえます。

また、他の人が悩みを相談した内容や、臨床心理士の専門的なアドバイスもすべて検索して閲覧することができるので、自分が相談するのにハードルを感じている人も、サイトを閲覧するだけで、「いろんな悩みを持った人がいるんだ。自分だけじゃないんだ。」と感じてもらえればとも思っています。

ココオルというネーミングは、「ここにいます(=Im here.)」という意味から付けていて、「手を差し伸べてくれる人はここにいるよ」とか「同じ悩みを持つ人はここにいるよ」ということを感じてほしいと思っています。

どんな些細な悩みであっても、まずは気軽にスマホから相談できる場所としてココオルを使ってもらい、専門家によるアドバイスを参考にしてもらえればと思います。その中で、病院での治療や行政の支援が必要な方には、相談窓口を合わせて紹介していきます。

今後は社会復帰や自立支援まで包括的に、病院や行政などと連携して対応していきたいですね。ココオルは一度元気になった人でも、疲れてしまったときにはいつでも戻ってきていいような気軽な場所にしたいと考えています。

なお、このサイトでは悩んでいる本人だけが利用するのではなく、悩みを抱えている当事者の家族や友人など周りの人たちにもアクセスしてもらい、悩みを抱えて苦しんでいる人の葛藤や心理や、その状況を踏まえて専門家がどういうアドバイスをしているかなども知ってもらえればと思っています。

この事業を通じて「自殺ゼロ社会の実現、自殺撲滅」を目指しています。自殺者を減らすだけではなく、完全にゼロにしなきゃ意味がないと思うんです。当事者や遺族や周りの人にとっては切実なことですので。

将来的には、家族や友達などの身の周りの人に気軽に相談できたり、誰にも相談できない場合も、病院に通うことや、カウンセリングを受けることへの偏見のない、
優しく、思いやりのある社会になっていけばいいと願っています。そういう社会を実現できれば、ココオルというサービスなんて必要なくなるはずです。

自分のこの人生では、ココオルを通じていろんな人をサポートしていければと考えています。そのためにはまだまだ実力も努力も全然足りていないので、世の中に影響を与えられるぐらいに、これからも公明正大に、誠実に努力していきます。

2014.10.03

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