人のために何かすることが私の生きがいでした。公務員からコーヒー屋になって気づいたこと。

「人のために生きるのが自分にとっての幸せだと気づいたんです」とお話される大西さん。税務署で働く公務員だった大西さんが、感性の飲み物であるコーヒーで独立され、今に至るまでのお話を伺いました。

大西 文明

おおにし ふみあき|自家焙煎コーヒーの販売
株式会社さくら代表取締役社長。
コーヒー豆や機器の販売を行う。

コーヒーサクラ
コーヒー豆販売 Coffee SAKURA
Coffee SAKURA 楽天市場店

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流されて公務員に


私は岐阜県の田舎で床屋の息子として生まれました。

ちょうど家が商店街の中心にあり、
いつも父や近所の人たちの働く姿を見て育ったので、自然と働くのは楽しいものだと思うようになっていました。

また、小さい頃からものづくりが好きで、夏休みには簡単なロボットを作ったりしていました。
基板にセンサーがついていて、障害物を避けるだけといった単純なものでしたが、
自分で作ったものが想定通りに動くのは楽しかったですね。

そこで、将来はエンジニアになりたいと思い、工業高校に行きたいと思っていましたが、
親や、お店のお客さんに反対されたので普通高校に行くことにしました。
反発するようなタイプではなかったんです。

そして、高校を卒業した後こそは、地元の工業大学に行きたいと思っていました。
そのため、まずは受験の練習として、無料で受験することができた公務員試験を受けることにしたのですが、
なんと合格してしまったのです。
しかも、本当は科学系の試験を受けたかったのですが、
先生に反対され、流されて税務職員の試験を受けていたんです。

公務員になりたいと思っていたわけではなかったのですが、
就職後15ヶ月間は、税務大学校で勉強させてもらうことができ、
かつ給料も貰えるとのことでしたし、
周囲に押され負け、エンジニアを諦め公務員として働くことにしました。

エンジニアとして働きたいという思いはあったものの、
周りにロールモデルがいなかったので、具体的なイメージも持ててなかったんですよね。
就職を決めるための「決め手」が自分の中になかったんです。

30歳までに独立を


その後、税務職員として働き始めたものの違和感を持つようになりました。

税務調査のため、経営者に会いに行き事業の概況を聞く仕事をしていたのですが、
その時目を輝かせている経営者と、
職場に戻ってきた時の同僚や官公庁街にいる人の目の輝きは全く違ったんですよね。
自分は前者でいたいと思ったんです。

また、職場ではジョブローテーションがあり、
3年ほど経つと別の部署に異動になり仕事内容も変わってしまうのですが、
私は1つのことを極めるプロフェッショナルになりたかったので、それも合いませんでした。

そんな風に考えていた21歳の頃、最愛の妻となる人と出会いました。
妻の家庭も自営業で、将来税理士として独立しようと考えていたので、
30歳までに独立しようと二人で決めました。

それからはお金を貯めるために働きながら、将来どんな事業で独立するかを考えるようになりました。
今更エンジニアになる気力もなかったし、実家のように家族でできる商売を探していましたね。
ただ、仕事柄、様々な会社の財務諸表を見ていたので、
中々ビジネス的にも良いと思える事業が見つからず悩んでいたところ、
たまたま、コーヒーの自家焙煎に出会ったんです。

自分で機械を使って作る感じも良かったし、これなら家族で経営できると思い、
週末は自家焙煎のカフェで仕事の勉強をさせてもらうようになりました。

そして29歳の時、これ以上いたら辞められなくなると思い、
税務署を辞めて独立することに決めました。
有難いことに引き止めていただきましたが、誰かに止められ続ける人生は終わらせることにしたんです。

何のための独立か


その後、テナントを借りて、自家焙煎のカフェをはじめました。

それまでの貯金もあったので、こだわりやポリシーを反映させ、
自分の思っていた通りのお店をスタートすることができましたね。
しかし、1日65人来れば良い算段を立てていたのですが、全くお客さんが来ませんでした。
自分のやりがいばかり押し付けていて、お客さんのニーズを捉えられていなかったんでしょうが、
簡単に諦めるわけにも行かないので、ポリシーを曲げずに経営していました。

そうは言っても、お金は必要になるので、妻がお店の奥で税理士事務所を立ち上げました。
人からは絶対にわからない場所だったのでWEBサイトを作ったのですが、
「30歳女性税理士」というのがキャッチーだったのか、結構な数のお問い合わせを頂くようになったんです。

私も妻の仕事を手伝うようになり、終いにはカフェは週休2日にして税務仕事ばかりするようになっていきました。
そんな状態だったので、段々と「このために独立したんじゃない」と思うようになってきて、
以前勉強させてもらっていたカフェのオーナーと会うことが多くなりました。

いつしか共同経営をしようという話になり、
楽天ショップでコーヒー豆を売り出したり、卸売などを始めることにしたんです。

自分にとってのやりがい


またこの時に、コーヒー豆の生産地であるブラジルに視察に行きました。

コーヒーを扱うようになってコーヒー豆の原価も知るようになり、
また生産地のGDPなども知っていたので、正直途上国から搾取している感覚もあったんですよね。
しかし、現地に実際に行ってみると、その感覚は少し違ったんじゃないかと実感しました。

確かに、日本と比べたら経済的に豊かではありませんが、
笑顔や、人のつながりや、みなぎる元気など、日本にはないものもたくさんあって、
コーヒー豆を仕入れることは、その生活を支えているんだ、と思えるようになったんです。

また、質の良いコーヒー豆はフェアトレードが行われており、
港でも他の豆と混ざらずに別ルートを通るので、生産者も価格交渉をすることができ、
それがモチベーションにつながっていることを知ることもできました。

この視察でコーヒーへの思いが変わり、
お客さんや生産者の幸せを作っている飲み物だと思えるようになりました。

ところが、一方で共同経営はすぐにうまくいかなくなっていきました。

お互いに理解し合えていると考え、経営方針などを言葉にしなかったのが問題でしたね。
徐々にすれ違いが生まれ経営状態も悪くなっていき、
お客様、仕入先、従業員、全ての人に迷惑をかけている状態でした。

結局、住宅兼豆の精製工場として利用しようと思っていた2店舗目のみ残し、
共同経営は解消し、一緒に運営していた1店舗目も別の人に売却することにしました。

この時、結局自分にとってのやりがいは何か改めて考えた時、
それは自分の存在価値を感じられる瞬間で、
そのためには、誰かに喜んでもらったり認めてもらったりすることが不可欠なんだと気づいたんです。

思いをつないでいく


そんなことに気づけた共同経営の解消からは、改めて再スタートでしたね。

今は、店舗でのコーヒー豆の販売と、工場機能として焙煎したコーヒーの卸売、
そして豆や機器類の通販の3つを軸に経営をしています。

経営方針も言語化して、毎年見直すようにしているんです。
根幹の軸としては
「おいしいコーヒーと、ほっとする幸せを提供します。」
「社会に貢献できることを喜びとします。」
「共に尊重しあい、楽しく人間的な成長をしていきます。」
の3つを経営理念としています。

コーヒーは少し豆を変えるだけでも味の違いを感じて楽しむことができるので、
言わば感性の飲み物だと思っています。
そしてそれは、ちょっとしたことに幸せを感じるのと似ていると思うんです。

今は正社員は私だけなので、今後は自分がいなくても、
会社としてこの考えが続いていくように従業員を増やしたいと思っています。
と言っても、大きくすることが目的ではないので、
あくまでしっかりと続けていける規模でやっていきます。

また、事業としては、今後海外展開を強めていきたいですね。
日本発のコーヒー文化である缶コーヒーやドリップバックコーヒーは海外の人から人気があるし、
特にドリップバックコーヒーは最近、保存期間を伸ばせる技術もできたので、
力を入れて海外に輸出していきたいです。

それに、東南アジアからコーヒーを焙煎する機械へ問い合わせを頂くことも多いので、
豆が採れる場所の近くに焙煎機を置けたら面白いとも考えています。

仕事柄、海外と身近に関わることが多いので、改めて日本って良い国だと思うことが多いのですが、
せっかく日本人に生まれたのであれば、その個性を活かしていかなければとも思います。
そして、人のために生きるという、自分の幸せ道に突き進んでいきます。

2014.09.12

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