美容師をしながらアートを生み出す。好きなことを貫いて得た、この生き方。

下北沢で美容師として働く傍ら、平日深夜と休日を使ってデザイナーとしてアート活動をする長嶺さん。美容師として働いていた長嶺さんが、どんな経緯でアートの活動を始め、この先に何を目指すのか。お話を伺いました。

長嶺ジロウ

ながみね じろう|美容師、デザイナー
美容師として働く傍ら、HOT CAKE ~creative&originative~のデザイナーとして活動する。

個人HP

地元で憧れ続けた、ファッションの世界


僕は福岡県で育ち、幼い頃からボーイスカウトに入っていました。
そして、そこで仲良くなった幼馴染が通っているという理由で、
中学生になってからは僕も塾に通い始め、
みんなが目指す地元では名の知れた高校を目指し、入学することができたんです。

その学校は、アパレルショップが多い立地だったためか、オシャレな人が多い学校でした。
そして、学校の近くに、皆がよく行くお店が4つあって、僕もその中のあるお店に通っていました。
そこで働くスタッフさんが、服もスタイルも顔もすごくかっこよくて、憧れていたんですよね。

いつしか、自分もこんな華やかな世界で働きたいと思うようになりました。

そこで、ほぼ全員が大学に進学する進学校に通いながらも、
ファッション系の専門学校に進もうと考えるようになりました。

ところが、父から、「どうしてもファッション業界に行くなら、手に職がつく美容師の方がいいんじゃないか」
と言われて、福岡にある美容専門学校の美容師コースに入学することにしたんです。

専門学校の仲間は、東京に対する憧れが強い人が多かったこともあり、
僕も卒業後は憧れの東京の美容室で働きたいと考えるようになりました。

また、周りの仲間の美容師に対するエネルギーを感じたり、美容師の技術を教わるうちに、
早く一人前の美容師になりたいという気持ちが強くなりましたね。

そして、就職活動の時期になると、学校で開催される説明会に参加し、
いろんな美容室のオーナーや経営者の話を聞く中で、
「スタッフの夢を叶えるのが僕の夢でもあります」と言うオーナーに出会い、

その言葉に惹かれ、静岡と東京に店舗を展開する美容室に就職することに決めました。

諦めかけた、美容師の道


その後、就職と同時に憧れの東京へ上京したのですが、
勤務初日に、美容師の国家資格に落ちたことがわかったんです。

国家資格を持っていないと、お客様の髪の毛を触ることができないため、
今日からやっと働けると希望を持っていた矢先に、とにかく落ち込みました。

その日の夜に恐る恐るマネージャーに不合格になった旨を伝えたところ、
「大丈夫。合格まで待つから気にしなくていいよ」と言ってもらえたんです。
そして、マネージャーのご厚意で、半年後の国家試験までその美容室でレッスンをさせてもらえることになったんですよね。

正直、同期が現場で働くのを横目に、すごく悔しい思いだったのですが
美容師への憧れと、待ってくれている人たちの期待に応えたいという思いで
毎朝始発の電車で本店である静岡の美容室へ行き、一部屋を借りて営業時間までトレーニングをする日々を送りました。

そんな努力もあり、半年後の国家資格には無事合格することができ、
系列店である、原宿の美容室で働くことになりました。

その美容室は、全員で富士山に登って夢を語ったり、1ヶ月、2ヶ月後の自分の目標を共有するような、
スタッフの自己啓発に力を入れた経営方法でした。
そのため、体育会系で上下関係がわりと厳しい環境だったんですよね。

そんなお店の雰囲気に合わなかったことでストレスを抱えてしまい、
2年目に体調を壊してしまいました。

その後1ヶ月休みをもらったのですが、自分はこの仕事に向いてないんじゃないかと思い
美容師を辞めて福岡に帰ろうかと迷いましたね。

しかし、東京に来て何も手に入れてないし、何も成し遂げていなかったので、
残って美容師を続けることにしたんです。

寝る間も惜しむほど没頭したアート活動


休みの間に色々考えた結果、環境を変えようと決意し、
知り合いに紹介された代官山の美容室に転職することにしました。

そこは、独立したオーナーが経営する店舗だったのですが、

その美容室が5周年記念でレセプションパーティーを開く際に、
オーナーからお前は絵が上手いから、パーティーで飾る絵を描いてくれないかと言われたんです。
たまたま業務に関わる範囲で絵を描いたことがあったのですが、それを見ていてくれたんですよね。

それまで人に見せるための絵を描いたことはなかったのですが、せっかく頼まれたことだと思い、描くことにしました。
幻想的なファンタジーアートを描いてパーティーに飾ってもらったのですが、来た人たちからものすごく褒められたんです。

そのころ美容師としては「まだまだだ」とか「センスがない」と言われることが多かったので、
そうやって褒めてもらえることはすごく嬉しかったですね。

それ以来、趣味としてアートを書くようになりました。
気づけば、どんどんのめり込んでいき、美容師での仕事が終わってからは、
自宅で睡眠時間を削ってアート活動に時間を費やすようになりました。

そして、自分の作品をもっと人に見てもらいたいという思いから、
思い切って個展を開くことにしたんです。
正直、開催するまでは不安だったものの、友人に声を掛け、当日は60人ほどの人が来てくださりました。

そして、その個展を観に来た人たちから仕事が来るようになり、
他の美容室のロゴや、結婚式のウエディングボードの依頼が入ってくるようになったんです。

また、個展を終えてから、アクセサリーをつくっている美容師の後輩と何か一緒にやろうという話になり、
iPhoneケースをつくり、ネットで販売してみました。
そのとき、初めてアート活動での収入が入ってきたんです。

それからは、もっと幅を広げたアート活動をしたいと思うようになり、
ポストカードやイベントでのライブアートを売り込み、販売を行うようになりました。

そんな風に、ちょうどアート活動で収入を得るようになったころ、
たまたまお店を移ることになったんです。

正直、お店を辞めてからは、アートの活動と美容師の仕事を両立する生活に時間の余裕を感じかったこともあり、
自分のためにも美容師ひとつに絞ろうかと考えていました。

ところが、そんな時、働いていた美容院の近所にあった、
いつも僕のアートを賞賛してくださっていたフラワーショップのオーナー様
「才能があるんだから、絶対アートを続けた方がいいよ」と言ってくれたんです。

その言葉に背中を押され、美容師を続けながらもフリーランスとしてアート活動をしようと決めました。

自分のアートと美容室が融合した空間を!


美容師とアートの両立を行うことに決めてからは、
クリエイティブな人が集まる街というイメージがあった、下北沢に引っ越すことに決めました。
そして、友人の紹介を受け、下北沢にある美容室で働くことになりました。

更にそれまでは、美容師としての時間とアート活動に時間を割き、時間に余裕のない生活だったのですが、
下北沢の美容室は、オーナーや店長がよく海外に行くような自由な雰囲気のお店で、
アートの活動についても理解・応援してもらえているんです。

今はその美容室で、美容師として働きながら、営業時間外の深夜と休日に、
東京と福岡を拠点としてアート活動をしています。

将来は、自分のアートを融合させた美容室をつくりたいと考えています。
アメリカの、コンセプトがしっかりしているデザインや都会っぽさ、ストリートカルチャーがものすごく好きなんですよね。

そのため、一度アメリカへ行ってそれらをしっかり勉強をし、自分の理想とする空間を実現させたいです。
そんな風に、これからも、自分のやりたいことを貫いていきたいと思います。

2014.09.03

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