自分の個性を活かして、頑張らない働き方を。歴史と表現、私が一番力を発揮できる場所。

地域の持つ「歴史」という個性を、「表現」というご自身の持つ個性と融合させ、地元小田原で「歴史エンターテイメントショー」を創造している山添さん。きめ細かいイベントの調整など「左脳派」の仕事で結果を出していた時期から、自分の個性に気づくまでにはどんな背景があったのか、お話を伺いました。

山添 藍

やまぞえ あい|歴史エンターテイメントアーティスト
地元小田原にて歴史エンターテイメントショー企画やイベント司会、ラジオパーソナリティ、ネイルサロンの運営を行う。

藍美セレクション・藍セレ~山添 藍
小田原なでしこ

わっしょい文化


私は小田原の漁師町で生まれ育ちました。
大漁だった場合はみんなで祝い、誰かが困っていたらみんなで助ける、
そうやってみんなで生きている、漁師の社会で生まれ育ちました。
それこそ毎日がお祭り騒ぎで、「わっしょい」という形容が良く合う町でしたね。

小さい頃から歴史が好きで、歴史に関わるような絵本や漫画をたくさん読んでいました。
歴史って何百年も前のことなのに、今目の前で起きていることとリンクする瞬間があって、その感覚が好きだったんです。

中学生の頃はバスケ部に所属し、典型的な体育会女子でした。
ただ、個性を潰して上下関係やチームを優先するのには違和感があり、
また引退時にはやりきった感覚もあったので、高校では続けませんでした。

高校では、好きだった漫画の影響で、演劇部に入ったんです。
この時に、自分の個性は表現をすることだと目覚めましたね。
何もない「無」から、自分の感性に従い「有」を作り出すこと、
そしてそれを誰かの心に届けることに惹かれ、表現の世界に浸かっていきました。

さらに、高校の文化祭では、全クラスが演劇をして競うのが伝統だったのですが、
私は監督・演出・脚本・役者、全てやり、クラスも優勝することができたので、
自信がつきましたね。

そんな背景もあり、将来は表現する道に進みたいと思いましたが、
どうやって現実社会に還元していくのか分からなかったんです。
過去の歴史を見ても、どんなに個性や才能があっても、
社会に受け入れられる方法でなければ結局は意味が無いと感じていたこともあり、
私は、表現することを子どもたちに伝えるために、先生になることに決めました。

教えたい表現


その後、東京の大学で歴史を学びながら教員免許を取り、相模原で中学の先生になりました。

この時、初めて地元の小田原を出たのですが、外に出て初めて分かる地元の良さを感じましたね。
小田原の海、城のお堀、そしてみんなで「わっしょい」できる地域って愛しいなと、
改めて感じることができました。

また、教師の仕事はやりがいを感じつつも、葛藤することが日々ありました。

学校という組織ではできることに制限もあるし、
子どもたちは受験のために勉強もしなくてはならないので、
その枠の中では私の伝えたかった表現を、子どもたちに教えられている気がしなかったんです。
社会科を担当していましたが、黒板に向かって知識を書くことが、
本質的な歴史教育だとも思えなくて。

そんな状況の中で、「私はこう教えたい」というエゴが強くなっていってしまい、
それは子どもたちに伝わるもので、敏感な子からは反発されてしまい、受け入れてもらえなくなっていきました。
ある意味「素直すぎる」子どもは私の言うことを聞いてくれるのですが、
それは私の伝えたかった「自分を表現する」という行動とは正反対の状態だと気付いてしまったんです。

自分の実力不足を感じ、このままでは子どもにも悪影響だと考え、
4年で先生を辞めることにしました。

対話をするためのネイル


その後、精神が疲弊しきっていたので、地元の小田原で1年ほど療養していました。

ある時、町でバッタリと昔からの知り合いに会い、
暇をしているならと、ネイルの勉強を勧められたんです。

正直、ネイルに興味なんてなかったのですが、
お金を稼ぐ必要もあり始めてみたのですが、これがすごくはまったんです。

ネイルを施術する時間って、2時間くらいかかるのですが、
その間お客さんと1対1になり、対話を通じて心に触れることができるんですよね。
これって演劇に似ていると思ったんです。
しかも、その時に気分を上向きにする事ができれば、
お客さんが落ち込んだ時もネイルを見て、その時の良い気持を思い出してもらえると思ったんです。

様々な人と、深いレベルで繋がれるネイリストの仕事をしたいと思い、
独学で勉強し、知り合いに場所も借りることができ、ネイルサロンを開く事ができました。

そうやってネイルサロンで働いていく中で、
手作りの雑貨を作っている一人のお客さんと出会いました。

その方は、自分で作った雑貨を人に見てもらう場所が少ないと困っていて、
「それじゃあ、なにかやりましょう!」と漁師町育ちの気質を発揮して、
手作り雑貨を集めた「雑貨市」を開催することにしたんです。

すると、初回から多くの人に来てもらうことができ、これは面白いと思い、
それからもイベントオーガナイザーとして続けることにしたんです。
どうやったら多くのお客さんに楽しんでもらえるか、
集客方法やスケジュールの組み方も綿密に練って、それこそ左脳フル回転で企画するようになりました。

するとどんどん規模も大きくなり、
2日間で1000人以上もお客さんが来てくれるようになっていきました。

無から有を生み出す


イベントには人もたくさん来てくれるようになり、
ネイルサロンもやりながら、ラジオ等いろいろなお仕事に恵まれるようになりました。

そんな日々の中で「ワクワク」することがいつのまにか「こなすだけの作業」と感じるようになってしまったんです。
完全に天狗になっていましたね。

そんな潜在意識が表層化してきたのが原因か、また手作り雑貨系のイベントが増えたのが原因か、
雑貨市を開いてても、少しずつお客さんの足が遠ざかっていったんです。
しかも、雑貨市は楽しいのですが、毎回終わった後は圧倒的な疲労感があったので、
大変な一面もあったんですよね。

そんな状況で、もう雑貨には需要がないのかと考え始め、
何か他に個性をだせることはないのかと悩んでいた時、
いつもお世話になっていた方に、

「藍ちゃんの良さは、感性を活かして表現することだよ」

と言ってもらえたんです。

この時、自分の持っていたものを思い出したんですよね。
私はイベントをうまく回したりするよりも、
感性を最大限発揮して、無から有を生み出し表現するのが個性だったんだって。

また、ちょうど同じ頃、私が学生時代に歴史を勉強していたのを知っていた方からの誘いで、
小田原の歴史と建物、場所の魅力を生かすためのイベントとして、
江戸時代の芸者をモチーフにした「おもてなし美人・小田原小町」という女性集団が、
イベントに遊びに来てくださったお客様を、
桶を使った足湯と小田原の食材を使ったお食事でおもてなしをする、
というコンセプトのイベントを行いました。

このイベントがきっかけで、
地域が持っている良さを最大限に活かすには、その歴史にフォーカスを当てるのが一番だと感じ、
また、それこそ私がやるべき表現なんだと確信しました。

表現と歴史、私が昔から持ち続けていたものがリンクし、
この個性を活かして活動していこうと決めたんです。

歴史を表現する


そのため、今は「歴史エンターテイメントショー」に力を入れています。

これは、その土地の歴史を掘り下げて研究し、
それを史実を元に創作も加えたエンターテイメントショーにすることで、
見た人誰にでも、簡単にその地域の歴史の本質的な部分を分かってもらうという取り組みです。

あくまで地域の良さを最大限活かしたいと思っているので、
地域に根ざした、かつ世界で活躍できる才能を持ったアーティストの人たちとコラボレーションすることを決めています。
また音楽も大事なので、魂に響くような音にこだわっています。

今までに2つの地域で、
「卑弥呼ショー」「かまぼこワッショイ」と2つのショーを開催しました。
ただショーは1回で終わりではなく、地域に根づいて文化となっていくことで、
楽しみながら歴史を紡ぐことができると考えているので、2回目、3回目とやっていきたいです。
この歴史エンターテイメントショーを、小田原の色々な地域に作っていきたいですね。

また、将来的には小田原を「タイムスリップ」が味わえる街にしたいと思っているんです。
城下町として、人の交流、ものの交流が盛んだった頃の街を再現できたら良いと思っていて、
まずは小田原城の広場を歴史空間に変えていきたいと思っています。
そのためにはアーティストの方も含めて、もっと多くの人の協力が必要になってくるので、
この活動をさらに加速するため、2014年秋には法人化して組織で動いていく予定です。

ただ、私個人は自分の強みである感性の部分にフォーカスしていき、
集客とか人の動きの細かい調整とかは、もっと得意な人たちに任せていきたいと思っています。
人によって得手不得手は違うので、苦手なことは信頼できる仲間に任せて、
得意なことにフォーカスするほうが、みんな幸せだと思うんですよね。
「頑張っている」と感じるのは無理をしている時なので、
常に個性を最大限活かして「楽しんでいる」状態でいたいですね。

これからも大好きな小田原の魅力を伝えていくために、
「表現」と「歴史」、私の軸を最大限活かして、楽しんでいきたいと思います。

2014.08.29

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