もうヒットでは終わらせない。日本製ウォッチで、ずっと腕時計の文化を!

時計とベルトを別々にコーディネートして購入できる、Made in japan時計ブランド「Knot」を立ち上げた遠藤さん。 雑貨のバイヤーとして海外を周り、海外ブランドの時計の代理店にも携わりながら、ご自身のブランドを立ち上げようと決めた背景には、腕時計の文化への強い思いがありました。

遠藤 弘満

えんどう ひろみつ|Made in japan時計ブランド会社運営
腕時計離れが進むマーケットにおいて、日本製で価格を抑えた、気軽にカスタムのできる時計ブランド「Knot」を運営している。

Knotオンラインストア
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バイヤーの面白みに気づく


僕は東京の日野市で生まれ育ち、高校は更に田舎の山梨の学校に進学していました。あまり勉強をするような高校ではなかったので、時給が良いというだけで始めた、カメラのフィルムの集荷のアルバイトに明け暮れていました。

高校も卒業するころになり、これからどうするのか考えていたころ、そのアルバイト先から、正社員としてこれから働かないかと誘ってもらったんです。特に他にどこに行くかも決めていなかったので、そのまま入社することに決めました。

それまでのアルバイトとは違い、社員として様々な業務をやらなければならなかったので、写真についてたくさん勉強し、働き詰めになりましたね。人手不足だったこともあり、本当によく働きました。

しかし、しばらく続けているとその働き過ぎがたたり、身体を壊してしまい、会社を辞めることになったんです。

そして、これからどうしようかと考えていたときに、叔父が通信販売の会社を経営している事を思い出し、以前から興味を抱いていたので、お願いしバイヤーとして雇ってもらえることになりました。

その会社は、マニアックなこだわりの商品専門の通信販売の会社で、バブル期ならではのお金持ちを対象に、恐竜の卵の化石などといった面白い物を売っていたんです。働いてみると、店舗にいるバイヤーと違い、写真やコピー一つで売上が変わってしまうのがとても面白かったし、自分の見つけてきた商品が1位になると、すごく嬉しかったんですよね。

そして次第に仕事に打ち込むようになり、気づけば21歳のときにチーフバイヤーにまで上り詰めていました。

時計のビジネスを始めることに


それからも仕事に熱中して、自分でコピーを書くようになり、ついには通信販売のカタログの編集長をやるまでに至りました。

そんな時、ある上司に、「独立するから一緒に会社をやろう」と誘われたんです。バブルだったこともあり、ブランド物の服や時計を愛用する先輩たちを見てきていたので、それに純粋に憧れを感じていました。だからこそ、自分もお金持ちになりたいという思いや、もっといろんなところに買い付けに行ってみたいという思いから、その海外雑貨を扱う通信販売の会社の立ち上げに加わろうと決めたんです。

会社を始めてしばらく経つと、人気のある深夜の生放送のテレビショッピングの番組の、外部バイヤーを担当することに決まり、海外を飛び回るようになりました。またその番組の影響で、他の様々な会社からも自分が買い付けてきたものが採用されるようになって、徐々に会社も軌道に乗っていったんです。

そこで、アメリカのダラスで行われていた、アメリカの軍や警察などの支給されている製品が一同に集められた展示会である、“Shotショー”に行く機会がありました。すると、軍用の物なので黒やカーキといったいかにものデザインが並ぶ中、ピンク、オレンジと、とても目を引くものがあったんです。LUMINOXという時計でした。

本来ミリタリーウォッチというのは、デザインが基本的に決まってしまっているのですが、この時計だけはとてもカラフルで、軍で使う物なのにミスマッチで、とても面白く感じて、一気に魅了されてしまったんです。

そしてちょうどその頃、海外の映画で俳優が付けていた時計が大ブレイクしていたこともあり、自分もそれを参考にすれば、この時計を流行らせることができるのではないかと考えました。

なんとかできないかと考えていたところ、親しくさせていただいていた、某大物俳優さんが出演するパイロットドラマの中で、主演の超人気タレントさんにLUMINOXを付けてもらえることになったんです。

すると、ドラマの人気とともに時計も有名になり、日本で大きくブレイクしました。運が良かったとも思いましたが、思った通りになり、「時計のビジネスは面白いかもしれないぞ」と、可能性を感じるようになりましたね。

SKAGENとの出会い


こうして、LUMINOXのブレイクにより、今までの仕事に加え、日本でのLUMINOXの代理店を始めるようになりました。

しかし、しばらくすると、ヒットブランドにはなったものの、時計自体安いものでないこともあり、人気を保ち、ビジネスとして継続させるのはどうしても難しいということに気づいていったんです。それからはまた、時計だけでなく、海外の雑貨を扱うバイヤーとして仕事をするようになりました。

そんなある時、スイスで行われる時計などの見本市である、バーゼルフェアに行ったんです。するとそこで、たくさんの高級な時計が並ぶ中に、価格もとても安く、デザインも美しい、デンマーク製のSKAGENという時計を見つけました。世界で有名になっているブランドというわけでもなかったのですが、バイヤーとして時計を扱ってきた自分にとっては、価格が安いにも関わらず、こんなにも高品質でデザインの良いものがあるのかと衝撃的だったんです。

そして日本に帰ると、ちょうどある通販雑誌から、北欧フェアと題して商品を何か出さないかという話をもらいました。そこですぐに、スイスで出会ったSKAGENのことを思い出し、掲載することにしたんです。

すると、その価格やデザイン性が評価され、1500本以上売れて、大ヒットとなりました。世界的にも注目されはじめ、SKAGENの日本の代理店として本格的にビジネスを開始する事になりました。

LUMINOXのブレイクから時が経っていましたが、SKAGENにはとても魅力を感じていたので、もう一度時計のビジネスをやっていこうと思うようになっていきました。

実際に、値段の安さもあり、幅広い年齢層の支持を獲得して、日本での販売開始7年目には1年で13万本売り、年間数十億円ものビジネスになっていったんです。加えて、それまでになかった「北欧ウォッチ」というジャンルができることにも貢献する形となりました。

この人気により、会社としても直営店を7~8店舗運営するほどになり、自分の仕事もどんどん忙しくなっていましたね。

そんな最中ある日、デンマーク大使館から連絡が来たんです。そこで、SKAGEN本社が突然買収されてしまった事実を聞かされました。何も聞いていなかったので、本当に茫然としてしまいましたね。しかし会社は運営していかなければならないので、それからは他のブランドを開発し、会社を続けていました。

しかし、今まで自分が熱意を持って売っていたものが突然売ることができなくなってしまい、自分の中で納得がいかず、本当にこのままでいいのだろうか、と考えるようになったんです。

時計という文化を残していく


気づけば、若いころはお金持ちになりたいと夢見てがむしゃらに働くことができたものの、今となっては、仕事は順調でも、とても忙しく幸せじゃないと感じている自分がいることにも気づいたんです。経営者としての夢も語れなくなっていて、仕事を楽しいと思えなくなっていました。

そして同時に、スマートフォンなどを時計代わりにし、時計を付ける若者が減っていく中で、SKAGENのような、幅広い層が買うことのできるものが無くなってしまう状況に、とても危機感を覚えたんです。道具ではなく、もはやパーソナリティを示すものになっている時計という文化が、このままでは、本当に無くなってしまうのではないかと思ったんですよ。

そこで、自分は代理店だったからSKAGENを売ることができなくなってしまったけど、それならもう、同じくらい魅力のある時計を自分で作るしかないと考えたんです。

そこで立ち上げたのが、Knotでした。日本の大手の時計メーカーでは日本製の良いものであるほど値段が高く、余計に若い人々が時計を手に入れにくいんですね。そこで、中間流通をできるだけ省き、日本製で質が良く着せ替えもできる、価格を抑えた時計を販売することにしました。

これが腕時計に馴染みのない人々にとってのエントリーモデルのようになり、時計を付けるという文化を継続させていくことに繋げられると考えています。

今後もインターネットを使って様々な人々にこのブランドを知ってほしいし、アジアを中心に、海外にもどんどん出ていきたいと思っています。

今までやってきたようにヒットブランドで終わらせるのではなく、会社としてもブランドとしても継続させていけるようにしたいです。今まで得た様々な経験をもとに、自分としてもまさにここからが再スタートという感覚ですね。

2014.07.23

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