キッカケはいつも人でした。私が大好きな美術を続けられた理由。

商業施設の美術を主力事業とする会社に所属し、テーマパークや病院、ショッピングモールなどの施設の空間デザインと、それに伴う制作を行っている駒場さん。幼いころから魅了されてきた「美術」を今でも仕事として続けられている背景には、「人」という大きなキッカケがありました。

駒場 訓子

こまば くにこ|空間デザイナー、作家
商業施設、テーマパーク、クリニックや個人邸など、様々な場所で、それに伴う制作を行っている、
株式会社ジェネレーション・エックス 川崎支社にて制作・管理チーフを務める。

株式会社ジェネレーション・エックス

another life.が制作協力を行うTV番組に駒場 訓子さんが出演!

3月21日(土)BS-TBS 22:00〜22:54 『LIVING SHIFT』-これが私の生きる道-

「絵で仕事ができたらいいな」


私の祖母はモノづくりが好きな人でした。

両親が共働きだったため、そんな祖母といつも過ごしているうちに、
私自身も自然とモノづくりに興味を持つようになっていったんです。

最初は「もっとうまくなって、おばあちゃんに褒められたい」という気持ちが強かったのですが、
やっていくうちに本気で取り組むようになっていきましたね。

モノづくりの中でも、特に絵を描くことが好きだったため、
幼稚園の時から絵画教室に通うようになり、
中学生になると美術部に所属し、絵を描いたり、彫刻をしたり・・・と、
あまり勉強はせずに、好きな美術に一番時間を割いていました。

また、小学校6年生の時に父を亡くしてしまっていたこともあり、
この頃から自然と、母には苦労をかけたくない、という意識を持つようになっていきました。

でも、母からも「好きなことをやっていてくれた方が嬉しい」と言ってもらえていたので、
将来は「絵で仕事ができたらいいな」と思っていましたね。

そんな思いから、高校は栃木県宇都宮市私立作新学院高等部・情報科学部美術デザイン科に進み、
油彩画を専攻しました。

中学校の時から好きな油彩画家がいたので、
私もその人と同じ様に油彩画の技法を使って絵を描けるようになりたいと思ったんです。

自分で掴まなければいけないと感じました。


学校では毎日遅くまで作品制作をし、
その他にも映画を見たり、図書館や美術館に行って美術作品を鑑賞したり、
美術に関連するものからは、とにかく何でも吸収するつもりで毎日を過ごしていました。

時には、自分の思っていることをうまく作品で表現できないなど、辛いこともありました。

でも、将来「絶対有名な作家になってやる!」という強い意志があったので、
自分の思いを具現化するための訓練だと思い、
必死に作品を作り続けていましたね。

卒業後は、東京芸術大学美術学部絵画科油画へ行きたい、と早いうちから決めていました。
母に負担をかけたくなかったので、国立大学で学費が安いということが魅力的でしたし、
何より一流の技術を学びたかったんです。

受験の時期が訪れ、当然受かるつもりで受験をしたのですが、
二次の実技試験の際に落とされてしまいました。

実技課題に取り組んでいる時、ただ与えられた課題通りに絵を描くだけでは面白くないと思い、
自分の表現したいようにアレンジをしてしまったんですよね。

試験を受けているうちから、薄々ダメな気はしていたので、
落ちたときは「やっぱり(笑)」と思いました。

その体験から、必ずしも大学は自分の表現を理解してくれる場ではない、ということに気付き、

「自分のやりたいことをやる環境は、大学などに頼らず、自分で掴まなければいけないんだな」

とも感じましたね。

人との繋がりを求めた選択


元々、早く自立をしたいと思っていたので、受験の時の体験も相まって、
その後は短期でアルバイトをしてお金を貯めながら、地元の宇都宮のアトリエに入り、
色々な絵画作品を制作することにしました。

また、以前から趣味で作家の自伝書をよく読んでいたのですが、
その中で「人との繋がりを広げたことで、その後様々なキッカケが訪れ~」という
成功エピソードが沢山書かれていたんですよ。

それを見ているうちに

「自分もこの有名作家と同じように行動すれば、この人達に近づいていくんじゃないか?」

と考え、より多くの人との繋がりを持つために、東京に出たいと思うようになりました。

そんなことを考えながらも、最初の受験から1年後に、再び東京芸術大学を受験したのですが、
やっぱり二次試験で落ちてしまったんですよね。

元々早く自立したいと考えており、もう一度浪人する気も他の大学に行く気もなかったので、
その受験の失敗を機に東京に行くことにしました。

東京に出てからは、アルバイトをしながら、公募展などに自分の作品を出展し、
会場で色々な人と話すことで人の輪を広げていくことにしました。

そんな中で、アルバイト先の人にあるギャラリーの仕事を紹介してもらえたんです。

そのギャラリーでの仕事は週に数日、お手伝いという形式でしたが、
とにかく美術に関わる仕事ができるということで、すぐにお願いすることにしました。

最初はとてもワクワクしていたのですが、私はあくまでもお手伝いで、
作家さんの裏方の仕事をしながら、勉強をする日々でした。

実際に作家さんの近くで働くことで、学ぶことはとても多かったのですが、
やっぱり自分も表に出たくてたまりませんでしたね。

嫌いになってしまいそう


そのギャラリーには半年ほど出入りしていたのですが、
仕事の中で、イラストレーターを探しているデザイン事務所から
「働いてみないか?」とお誘いが来たんです。

チャンスだと感じ、断る理由は何一つなかったので、
二つ返事で快諾して、実際にイラストレーターとして働くことになりました。

最初の頃は覚えることが本当に多くて、毎日必死にメモを取っていましたね。
ただ、メンバーは私を含めて3人しかおらず、
非常に風通しがよい職場でした。

また、会社の場所が銀座で、私が初めての社会人経験だったこともあり、

「もっと色々なことを勉強した方がいいぞ!」

という感じで、社長には仕事以外の社会勉強も沢山させてもらいました。(笑)

そんな素敵な環境で働かせて頂いていたのですが、
段々と、刺激を感じなくなっていってしまったんです。

仕事では、お客様やデザイナーの要望に従わなければならないことが沢山ありました。
経験を積む中で、

「これって本当に私のやりたいことじゃないかもしれない。」

という思いが次第に強くなり、1年ほど働いたタイミングで会社を辞めることにしました。

このままでは絵を描くことが嫌いになってしまいそうだったんです。

その後は、知り合いの方の紹介で飲食店でバイトをしながら、
休みの日には映画を見たり、美術館に行ったりと、自分の好きなように美術と関わることにしました。

次第に気持ちも楽になり「働きながらゆったり作家活動をでもしようかな」
と考えるようになっていった一方、バイト先の水周りの仕事で手が荒れてしまい、
このままでは作家としての活動ができなくなりそうになってしまいました。

そんなタイミングで、たまたま渋谷の飲み屋で知り合った方に、
面白そうな会社を紹介していただいたんです。

その会社は壁画や特殊塗装、造形、エイジングなどの技法を使って、
ショッピングモールやテーマパーク、あるいは病院、個人邸など、
主に商業施設を中心とした空間デザイン・制作を行う会社でした。

実際に会社としての取り組みについて話を聞いたときに、以前の仕事とのスケールの違いや、
ディスプレイ制作、造形、モルタルワーク、エイジング、特殊塗装など、
絵画以外の技術にも挑戦できる環境に凄く惹かれたんですよね。

「ここなら、私のやりたいことに出会えるかもしれない」

と思い、すぐに会社へ連絡をし面接してもらい、
運よくアルバイトスタッフとして雇って頂けることになりました。

自分の選択は正しかった


それからは、その会社で、商業に関わる色々な美術の仕事を経験させてもらいながら、
今は正社員として引き続き働かせていただいています。

現在では、元々の専門分野だった絵にとらわれず、
時にはディスプレイ制作、オブジェを作ったり、
エイジングという、新しい建築物やモニュメントやそれらのセットを、
わざと塗装や壁が剥がれているようにしたりする美術手法を用いたりと、
様々な分野の中で幅広い仕事を、かなり自由にやらせてもらえています。

毎日が新しい経験の連続で、非常に刺激的な日々を過ごせていますね。

そうやって仕事をしていて感じるのは、
大きな規模の仕事を大勢のチームで作り上げるということの喜びと、
自由だからこそ責任が伴い、それを果たすことで非常にたくさんの経験値を得ることができる、
ということです。

また、自分と同級生で美術大学を卒業した友人でも、
実は、美術を生業としている人ってほとんどいないんですよね。

その中で今でも美術に関わる仕事ができている自分は、
とてもラッキーだということも感じています。

そして今までを振り返ってみると、色々な方に様々なキッカケを与えて頂いていて、
そのチャンスを逃さず行動に移し「人の繋がりの大切さ」を実感しています。

最初は勢いのまま地元を飛び出し、東京で成功してやる!とがむしゃらに走り続け、
自分の思いを信じ今まで歩んできましたが、
その選択は間違っていなかったと、胸を張って言うことができます。

これまで、日本国内を仕事で様々な場所に行く機会がありましたが、
海外での仕事は一回しか行ったことがないので、
これから先は、実際に現地に行って制作をしたり、
海外へ作品を納品したりできるような機会を増やしていきたいです。

また、美術に関わっていく以上、一人の作家としても成功したいと思っているので、
色々な挑戦をして自分の実力を試すこともしたいと思っています。

そして、女性である以上、結婚もしたいですし、将来的には子供も産みたいですね。

また、現在の職場は女性が多い環境でもあるので、私自身のことだけでなく、
産休やその後の復帰など、子どもを産んだ人が働きやすい場所づくりにも
取り組んでいきたいです。

本当にやりたいことだらけですが、
それぞれの折り合いをつけて、全てのことに、挑戦し続けていきたいです。

2014.07.19

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