学生と社会の中間の、社会経験の場を。後輩に、同じ思いはさせたくないんです。

ゲームの専門学校で講師をしながら、ご自身で経営するスマートフォンアプリ製作会社でも、インターンの学生の育成に力を入れている斉藤さん。 ご自身が学生時代に感じたことや、ゲーム会社で働いた経験から思い立ち、今の事業を始めたそうです。いったいそこにはどのような思いがあるのか、お話を伺いました。

斉藤 隼人

さいとう はやと|スマートフォンアプリ制作会社運営兼ゲーム専門学校講師
ゲームの専門学校の講師をする傍ら、自らの経営する会社で学生にゲームアプリ製作の場を提供することで、
優秀な専門学生の育成を行っている。

株式会社アミューズエンターテイメント

理数科へ進学するも挫折し、専門学校へ


小学生の頃から勉強が特にできるというわけでもなく、
あえて言うなら数学が得意だったというくらいでした。
受験勉強はなんとか頑張りましたが、国語を受験しなくていいからという理由で、
理数科の高校に進学を決めましたね。

でもその高校に入ってみると、周りの同級生たちがあまりにも頭が良いことに気づいたんです。
入学して最初の期末テストで周りとの点数の差を見て、驚きましたね。(笑)
それからは学校を卒業さえできればいいや、という考えに変わっていきました。

一方、ホームセンターでのアルバイトは頑張っていました。
たまたま時給が高いという理由でそのアルバイトに決めたのですが、
男がほぼ自分一人だったこともあり、重い荷物を持つときなどに頼ってもらうことも多く、やりがいがあったんですよ。
なにより、ただ学校で勉強するだけとは違い、お金を稼げることがやる気につながっていましたね。

そんな生活を送っていくうちに、高校卒業が近づいてきました。
勉強もしていなかったので、これからの進路をどうしようかと悩んでいたんです。

すると、たまたま情報系の専門学校のゲーム科に進学が決まっていた友人に、
「専門に行けば、テストも受けないで済むよ」
と言われたんですね。

僕はすぐにその言葉に飛びつきました。
何も考えずに、その友達が行くというので、そのまま同じ専門学校のゲーム科に入学することに決めたんです。

正直ゲームに興味があったわけでもなかったし、そのまま就職してもよかったのですが、
まだ遊んでいたかったので、学生でいる道を選んだんです。

ゲームを作る面白さを知る


専門学校に入学したとき、自分はゲームが学びたいという熱い思いを持っていたわけではなかったものの、
入ったからにはやってみようという気持ちだったんですね。

でも同期で入学した周りの人たちに、とりあえず入学はしたけど勉強はしない、
という人がほとんどだということに気づいたんです。
それでも、ちゃんと目的を持って入学し、努力している人もいるので、
自分も頑張らなければと焦りを覚え、しっかり勉強をするようになっていきました。

高校までやっていたバイトも辞め、必死でプログラミングなどを習得していきましたね。
やってみると、プログラミングは問題に対する答えを探していくような感覚で、数学に近い気がして面白かったし、
人のソースを見て何で動いているのかを学んだりするのも、意外と楽しかったんです。
自分で作ったものが実際に動いた瞬間は、とてもうれしかったことを覚えています。

そして専門学校1年生の終わりに差し掛かった頃、就職活動を始めました。
そのころには、学校での勉強もしていたので、このままゲーム業界に行こうと決めていたんです。
苦戦しつつも何社か内定をもらい、自分が一番サービスがおもしろいと思ったゲームの製作会社に入社することにしました。

するとその会社から、インターンをやらないかと誘ってもらったんですね。
残りの学生生活1年間で、何かやることを考えていたわけではなかったので、そのまま働いてみることに決めました。

実際に入ってみると、インターンとは言っても、ゲームを作ったり社員の人と同じように働かせてもらいました。
ただ、高校生のときまでやっていたアルバイトの「働く」とは違い、
自分が作ったものが世の中に出ることで、その楽しさを感じることができたんです。

こうした気持ちの変化や、優秀な上司に可愛がってもらって働くうちに、
それまでは学生でいたいと思っていたものの、社会に出てみてもいいかなと思うようになっていったんです。

壁にぶつかり退職するも、会社を始めることに


専門学校を卒業し、内定をもらっていた会社にそのまま入社しました。
同期が他に3人いたのですが、その中でもかなり自由に仕事をやらせてもらっていましたね。

しかし、すぐに壁にぶち当たりました。
自分の技術以上に学歴が重視されて序列が決められてしまい、
純粋に評価されるのが難しかったんです。
就職活動のときにも、専門学校卒に後ろめたさを感じる場面はありましたが、
働いてみてその現実を強く実感しましたね。

また同時に、開発として入社したにもかかわらず営業をやらなければいけなくなり、
自分の仕事があまりにも多くなってしまったんですよ。
頑張って働いていましたが、自分の体力的にも厳しくなってしまい、
10か月で退職することになりました。

辞めるときには、とりあえずこれからもゲームの領域でやっていくのかな、というくらいに考えていた程度で、
何をするのかは考えていなかったため、すぐ次の仕事には就きませんでした。

ただ、さすがに何もしないわけにもいかないので、自分なりに模索し始めました。
資格試験の勉強をしたり、経営者の本をたくさん読んだりと、次に何ができるか考えていましたね。

そうして3か月ほど経ったある日、パソコンでゲームをしているときに、
ふと、このゲームがスマートフォンでもできたら面白いんじゃないかと思ったんですよね。
そして、それを自分で作れないかと考えたんです。
すると、今までの自分の知識や経験を駆使したら、なんとかできてしまったんですよ。
それをせっかくなのでHPやSNSで公開していました。
すると、それが口コミで広まったのか、あるIT系の会社をやっている方に声をかけてもらいました。

自分では、それががすごいのかどうかあまり実感がなかったのですが、
これは事業化しないともったいないよ、という言葉をもらい、
会社としてやってみようという気持ちになったんです。

実力のある人がちゃんと評価されるように


そして、スマートフォンアプリ製作会社として会社を立ち上げました。

またちょうどそのころ、自分の母校で講師をやらないかという話をもらったんです。
自分が先生をやるなんて想像もできなかったですが、
何か後輩のためにできないかと思い、引き受けました。

すると、学生に接していくうちに、学歴や面接だけで評価されてしまって、
技術は持っているのに、就職先に困ってしまう人が多いことを知りました。

自分の就職活動や会社に入ってから感じたことと、同じような悩みを持つ学生が多いことを改めて実感し、
何か自分にできないかと思うようになったんですよね。

そこで、自分のやっている会社で学生にゲームアプリ製作をしてもらい、
実践を積んでもらうことで、彼らの技術を証明する場にできないかと考えました。
そして、自分がゲーム会社で働いてきた中で得た人脈を活かし、
育てた学生を、ゲーム会社に正当な評価で紹介し、採用に繋げていくようにしたんです。
学歴という「基本ルート」以外の道を作ってあげたかったんですよね。

そして会社を初めて3年経った現在も、主に自分の母校の学生にゲームアプリ製作の場を提供し、そこで人材育成を行っています。
高校を卒業したばかりの子たちが1年目にいきなり就職活動をするのではなくて、
インターンとして働いたり、ゲームを作る機会を多く持つことで、
ここが学生と社会の中間の、社会経験の場みたいになればいいなと思っています。

今後は社員を増やして会社自体を大きくするのはもちろん、
自分で育てた優秀な学生を、自社で採用できるくらいになりたいですね。

また、30歳までには周りの経営者より早く、新しい事業に取り組んでいけたらと考えています。
具体的には、現在のスマートフォンアプリ開発だけではなく、
コンシューマー向けのゲーム開発をやりたいですね。

こういった人材育成など様々な取り組みを通して、ゲーム業界全体に何か変化を起こせたらと思っています。

2014.07.11

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