自分にも他人にも向き合えなかった過去を経て。 ありのままを認められる世界をつくる。

本業の仕事をしながら、副業で「自分らしさコーチング」を提供している石川さん。コーチングに出会った背景には、自分らしさを押し隠して鬱になった過去、チームメンバーを休職させてしまった過去がありました。コーチングを通して自分らしさを見つけた石川さんが、今実現したい世界とは。お話を伺いました。

石川 大雅

いしかわ たいが|自分らしさデザイナー
1996年生まれ。横浜市立大学卒。、在学中にfreee株式会社でインサイドセールスを経験。2018年に株式会社オロに入社。フィールドセールスを経験したのち、カスタマーサクセスに従事。その後、株式会社サイトビジット(現freeeサイン株式会社)に転職。インサイドセールスチームを立ち上げる。現在、株式会社ミーミル(UZABASEグループ)にてインサイドセールス兼営業企画として従事するかたわら、WithCoachを起業。「自分らしさコーチング」を提供している。

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起業家になりたい


愛知県安城市に生まれました。サッカーをやっていて、活発な子どもでしたね。休み時間になると、外に出てボールを蹴っていました。周りの注目を集めたくて、学級委員なども率先してやりました。

あるとき、母から「自分は自分、人は人」と言われたことがありました。母にとっては何気ない一言だったと思いますが、その言葉が僕の頭にこびりついたんです。他人の目を気にせず、自分がやりたいことをやって、自分の人生を生きればいいんだと。

10歳のとき、2分の1成人式があり、一人ずつ将来の夢を発表することになりました。みんなが「スポーツ選手になりたい」「ケーキ屋さんになりたい」と発表する中、僕は人と違うことを言いたいと思いました。

サッカーをずっとやっていたので「サッカー選手になりたい」でもよかった。でも、人と違う人生を歩むんだ、という思いがあって「起業家になりたい!」と言ったんです。本当に起業家になりたかったわけではなくて、人と違うことをしたいという気持ちから出た言葉でした。


出る杭にならないように


「起業家になりたい」と言ったことが、ずっと頭の中に残っていて、高校では1年で部活を辞め、その日に塾に通うことを決意しました。経営学が学べる大学への進学に向けて勉強するためです。卒業後は横浜の大学に進学ました。

在学中、簿記の資格を取ったので、その資格がどういかせるかを知りたくて、会計サービスを提供するベンチャー企業でインターンも経験しました。会社ではインサイドセールスを担当し、会計がIT化によってどう変わっていくかを学んだんです。

起業家になるという夢は、ずっと頭の端にはありました。でも、新しい環境や初めての一人暮らしが楽しくて、次第に薄れていったような気がします。就職活動をする頃には「そんなことを言ったら生意気な学生だと思われる」と、遠慮するようになりました。

他人の目を気にしないで生きようとしてきたのに、内定をもらうためにほんとうの想いを隠すようになっていたんです。面接でやりたいことを聞かれても、「会社に入って見つけます」と答えていました。出る杭は打たれる雰囲気を感じて、周りに合わせている自分がいました。

やりたいことは何だっけ?


就職したのは、会計領域のITシステムを扱うベンチャー企業です。内定をもらってすぐ、来月から働かせて欲しいと頼みました。4年生は授業もほとんどないし、始めるなら早い方がいいと思ったんです。もともと自分にすごい能力があるわけではないから、同期と同じラインからスタートするよりも、先に準備しておいた方がいいと考えました。周りと違うやり方で活躍したい、と。

前例はありませんでしたが、会社が承諾してくれて、大学に通いながら仕事をスタートすることになりました。担当はフィールドセールス。1つ年上の先輩たちに混じって、一緒に働きました。できないことがたくさんありましたが、それが次第にできるようになるのが、喜びでしたね。仕事は楽しかったです。

朝一番に会社に来て、夜遅くまで仕事をして。仕事に追われているうちに、自分が本当は何をやりたいのか、考える暇もなくなっていきました。面接のとき何度も話していた就活の軸。後になって考えるとそれは、自分の言葉ではありませんでした。それなのに、そのまま突き進んでしまった。

この会社で自分は何をやりたいんだっけ?その答えを一年目で見失い、ただただ忙しく時間は過ぎていきました。そのうちに、だんだん辛くなってきたんです。深夜に帰ってきて、現実逃避をするようにゲームに没頭するようになりました。寝たら次の朝が来てしまうから、寝ないようにしようと思って。

でも、やっぱり朝が来て、満員電車に乗って会社へ行く。そんな毎日が続きました。それでも、これが普通だと思っていました。仕事ってこんなもんだろう、と。

そして1年目の11月のある日、いつも通り会社に行こうと玄関に向かったら突然嘔吐してしまったんです。その日から会社に行けなくなりました。病院に行ったら鬱だと診断されたんです。原因が分かると、認められたような感覚があって、なんだかほっとしました。

2週間ほど休むとすっきりして、仕事にも行けるようになりました。休めるんだと分かって楽になったし、周りもすごく優しくしてくれたんです。

鬱になったのを機に、自分が本当は何をやりたいのか、見つめ直しました。そのとき思い出したんです。そうだ、「起業家になりたい」って言ってたな、と。

起業家になるには、マネジメントの能力が必要です。マネジメントの仕事ができないかと上司に相談しましたが、この会社でやるには、あと3年はかかると言われて。僕は今すぐやりたかったので、マネジメントの仕事ができる転職先を探しました。

自分にも他人にも向き合えていない


新しく入ったのは、電子契約サービスを手がける会社でした。そこでインサイドセールス部門を立ち上げ、チームリーダーを務めることになったのです。

チームのメンバーは5人でした。ところが、そのメンバーの一人が、精神的理由で会社に来られなくなってしまったんです。

復職した頃に、本人と話し合いました。「正直に話して欲しい」と。すると、休むことになった原因は僕だ、と言われたんです。コミュニケーションが取りづらかった、と。すごく忙しくしていたし、話しかけづらかったんですね。本人はやりたくないのに、仕事を割り振られて、やらなければいけないこともあったと言われました。

メンバーに対して、僕はタスクを平等に割り振ることが大事だと考えていました。相手の意向や得意なところを配慮せずに、量も質も均等に割り振って、同じように成果を出してもらおうと思っていたんです。

なぜその仕事が必要なのかという説明も、丁寧にしていませんでした。上司から「石川くんは早口だし、説明を省略しがち」だと指摘されて。まさにその通りだと思いました。自分と相手の理解に、ズレが生じていたんです。

自分は、どうしようもないやつだと思いました。自分自身のやりたいことも分からなくなるし、他人に寄り添うこともできないなんて。これからどうすればいいんだろう?そんな気持ちでした。

自分らしさとは何か


あるとき、知人がコーチングのスクールを立ち上げることになりました。コーチングのスキルを学べるスクールです。僕はコーチングを受けたこともありませんでしたが、そのスクールに入学させてもらいたいと頼みました。

自分にも他人にも寄り添えるコミュニケーションとは何か。それを知りたいと思ったんです。藁にもすがるような思いでした。決して安くはない入学金でしたが、貯金をはたいて払いました。コーチングの可能性に賭けようと思ったんです。

コーチングを学ぶうちに、相手の考えや思いを汲み取れるようになりました。言葉だけでなく、身振りや表情から、相手の想いを感じ取っていくんです。

また、自分自身とも向き合う時間が増えました。自分を知らなければ、他人とも向き合えないからです。自分らしさとは何かを探っていったとき、行き着いたのが「ユニークで在りたい」という思いでした。「起業家になりたい」という夢の根本にあったのは、人とは違う、ユニークな存在になりたいという価値観だったのです。

僕にとって自分らしさとは、ユニークな存在で在ること。それを認識してから、実生活にも変化が訪れました。自分の思うままに自然に行動ができ、次第に自分らしく居られるようになっていきました。

まず、転職を決めました。転職先は、各分野のエキスパートと、企業をつなぐサービスを提供する会社です。個人と企業をマッチングすることで、個人の活躍の場が広がります。僕自身も個人として活躍できる人間で在りたいので、その事業内容に惹かれました。

また、ずっと携わってきたインサイドセールスで、新しいことをしたいと思いました。前職では、よくあるインサイドセールスの型を持ち込んでチームを立ち上げました。でもそこで得られた結果は、その型をつくった人の成果。自分がここにいる意味は何だろうと考えるようになったんです。そこで、従来の型を使わない場所で、新しく、ユニークなインサイドセールスの形を生み出したいと思いました。

行動を起こし始めてから、価値観の合うパートナーとも出会えました。互いに自分のやりたいことを尊重し合えるし、「転職でも副業でも趣味でも何でも、やってみたら?」と背中を押してくれる人と、結婚できたんです。コーチングをきっかけに、人生は180度変わりました。

ありのままが認められる世界を


現在は、本業でインサイドセールスと営業企画に関わり、自分らしい組織をつくることを目指しています。また副業として、コーチングのサービスを提供しています。

僕が提供するのは、自分らしさを見つけるためのライフコーチングです。自分らしさを見つけるには、自分の価値観を知る必要があります。人間の行動のもとにあるのが感情で、その感情のもとにあるのが価値観です。本人も見えづらい価値観を、深堀りするための質問を重ねていきます。

自分の価値観に気づくと、それに合わせて行動も変わっていきます。そして、周りの環境も変化します。僕自身、自分らしさに気づいてから、自分の価値観に合う人や仕事に出会えて、人生が変わりました。

だから、特に20代後半から30代前半の、人生の岐路に立っている人たちに、このコーチングを届けたいですね。転職や結婚など、人生の重要な選択をするときに、自分の価値観に合った選択ができるように、サポートできたらと思っています。

今後は、法人向けに自分らしさについての研修や学生向けにコーチング講座もしたいと考えています。コーチングのサービスを受けに来る人は、そもそも自分らしく在りたいと願っている人です。でも学校も会社も自分らしさは教えてくれないですし、自分らしさへの意識すらない人もいると思います。そういう人たちに、自分らしさの大切さに気づいてもらいたいし、どんな組織にいても自分らしく生きられることを伝えたいですね。もし自分らしく居られないなら、その組織やコミュニティが合わないのかもしれません。

僕が実現したいのは、「ありのままを認められる世界をつくる」ことです。自分のありのままを、まず自分自身が認める。そして、その状態を他人にも認めてもらえる世界をつくりたいです。そうすれば、一人ひとりが自分の力で幸せな人生を実現できるんじゃないかと。僕のミッションは「Well-being yourself」です。「be yourself(自分らしく)」と「wel-lbeing(心身の幸せ)」を組み合わせた造語です。過去の反省をいかし、コーチングを通して、自分らしく心身共に健康で幸せに生きる人を増やすことを、ライフワークにしたいと思っています。

今は、茶道やサウナ、旅行などの趣味のほか、ニュースを読んで感じたこと、日常生活で感じたことなどを、SNSやブログなどで積極的に発信しています。まず、自分のありのままをアウトプットして、自分らしく生きている人だと認識されたいからです。そして、自分らしさが認められている状態を僕自身が体現したい。それが、ありのままを認められる世界への、第一歩になると信じています。

2022.10.20

インタビュー・ライティング | 塩井 典子
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