「働く目的」を考えだしたのは、30半ばからでした。

皆さんが働く目的はなんですか? 日本初の、目的の創造・実現を支援する会社を立ち上げ、 企業向けの人財育成、コンサルティング事業や、学校向けの教育支援事業を行われている與良さん。 そんなユニークな取り組みを行う「目的」について、聞いてみました。

與良 昌浩

よら まさひろ|プロセスデザイナー
株式会社もくてき の代表として、
人財育成、目的コンサルティング、教育支援の事業を行う。
株式会社もくてきHP
ハタモク

部活に入れば、目的を与えてくれた


小中高とスポーツに熱中した学生時代でした。

小中学校では強豪野球部に所属しており、全国大会で優勝という成績を収めました。
中学時代はキャプテンも務めていました。
高校で所属していたアメリカンフットボール部でも、
全国大会で2位になりました。
大学時代は、ボート部で、再び全国制覇を成し遂げる事が出来ました。

文字面だけみれば輝かしいですが、
私は、スポーツ選手としては1.5流、いや、2流以下だったと思います。
選手としての素質に、限界を感じる事もありましたし、怪我にも苦しみました。
一つ一つの経験はとても貴重で、今の自分を形成する大きな糧になっていますが、
今思えば、勢いで入部して「優勝」のために何も考えずに厳しい練習を続けきたともいえます。
自分の限界を感じていたにもかかわらず、「辞めてはいけない」と思い込み、
辞める勇気も無く、決断できないだけだったのかもしれません。

実は、大学に入る時にはもう部活をしないと決めていました。
何をしようか迷って、いろいろなサークルに顔を出しました。
ただ、なぜか「充たされなさ」を感じたんですよね。
でも、とくにやりたいこともない。
結局、5月には、初心者でも始められるスポーツの体育会から選ぶことに決めていました。

今思えば、部活に入れば、向こうから目的は与えられるんですよね。
後付けになりますが、自分で目的を生み出す必要性のない選択をしたのです。

親の会社だから


社会人になっても、ある種同じような選択の連続だったのかもしれません。
将来の安定性や「モテたい」という気持ちで就職活動をしました。
人気企業ランキングを順番に受け、大手総合商社に入社し、外資系の経営コンサルに転職しました。

コンサル時代、最初は力不足で苦しみましたが、ガムシャラに仕事をしました。
とても貴重な経験が出来、そこそこ“力”はつきました。
ただ、何がしたいか、どう生きたいか、といった人生について考える機会はなく、
与えられた事を“どうやって”やるかをひたすらに考えていた自分でした。
中身こそ違えど、体育会時代と変わりませんでした。
目的をつくる必要はなかったのです。与えられた仕事を本気でやるだけだったのです。

コンサルで4年働いた後、家業を継ぐことに決めました。
親の会社ながら、入社する自分に期待を持ってくれる方がいたのは嬉しかったですし、
結果を出そうと、とても意気込んでいましたね。実際に相当頑張りました。
当時は70名前後の企業規模で、企業風土や組織マネジメントの改善が急務だったので、
コンサルでの経験をもとに、ゼロから改革に取り組みました。

ところが、なかなかスムーズにはすすまない。
仲間に頼ることも出来ずに、「全部自分でやらなきゃ」と一人で抱え込んでいた事もあり、
だんだんと義務感や切迫感を感じるようになりました。

そして、なぜ自分はここに来たのかを何度考えても、「親の会社だから」という目的しか見つけられない事に気付いたんですよね。
最初はそんなつもりはありませんでしたが、親の会社に入る前も入った後も、
事業の意味や目的を考える機会に出会うことなく、時間だけが過ぎていきました。
そして「このままではダメだ。でも、何をすればいいのかわからない」といった葛藤を抱え、
危機感にあおられて仕事するようになり、自分を追い込みました。
そして家業に入ってから6年後のある日、会社に行けなくなってしまいました。

どん底で考え始めた「働く目的」


その後しばらくは自分の人生でも底の時期だったと思います。
周囲に合わせ、目指すべきものを与えられる生き方だったので、
目的がなくなり、とても苦しみました。
結婚して子供もいる中で無職になった時期もあり、不安はありました。

そんな折、ご縁があり拾ってもらったのが、企業風土改革コンサルファームでした。
そこでは、まさに私が悩んでいた課題を解決するためのコンサルティングを行っていました。
働く人が、会社の中でどう生きていくかを問い続けながら、会社を変革する仕事です。

「何のために働くのか?」

お客様との対話の中で問うていた質問を、
同時に、自分自身にも投げかけていることに気付きました。

与えられた目的のために、やることをしていたこれまでの人生から、
一歩踏み出す瞬間でした。

自分のために真剣に話を聞いてくれる仲間の存在もあり、
30半ばにして、人生で初めて、目的を考えるようになりました。
恥ずかしながら、完全に遅咲きですね。

目的を持てれば生き方・働き方が変わる


私にとっての働く目的は、自分自身の経験もあり、
仕事を楽しむ人を増やせる社会にすることでした。
もちろん働くのには経済的な目的もあると思うのですが、
それだけだと疲れてしまうと思います。
自分の仕事の意味や価値を考えられる機会がとても重要だと思うんです。

だからこそ、早くからそういったことを考える機会を持つ場として、
学生と社会人が、働く目的について話し合う、「ハタモク」という活動を立ち上げました。
最初は小さなイベントだったのが、今では全国で100回以上開催し、
多くの学生や社会人に参加してもらっています。

活動を行う中で、社会人の方から、「企業の中にこそ、こういった場が必要」という声を何度ももらいました。
その声を後押しに、会社の中にそこで働く人が仕事の意味や価値を、気楽にまじめに語り合える機会を増やすため、
“株式会社もくてき”を立ち上げました。

将来は、日本の人材育成、教育を変えたいと思っています。
目的がもてれば、生き方・働き方は変わります。
そして、一人一人の生き方が、会社を、社会を、世界を変えていくのだと思うんです。

2014.02.20

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