会社の一員を超え、社会の一員として挑戦する。 可能性を広げ、自動車営業部の現場に革新を。

損害保険ジャパン株式会社で自動車保険の販売推進やマネジメントを担当する傍ら、DXなどを通して新しい営業スタイルの構築を目指す「自動車営業部2.0」という有志のプロジェクトを立ち上げ推進する中川さん。会社の中だけで自分の可能性を狭めず、社会の一員として挑戦する人が増えると嬉しいと語ります。その想いの原点とは?お話しを伺いました。

中川 量智

なかがわ かずとも|損害保険ジャパン株式会社 大阪自動車営業第二部第一課
自動車保険の販売を推進・マネジメントする業務に従事する傍ら、大企業の若手中堅有志団体の実践コミュニティ「ONE JAPAN」に加入し、大企業挑戦者支援プログラム「CHANGE by ONE JAPAN」に参加。オペレーション業務が多く残る自動車ディーラーを担当する営業部をテクノロジーの力で変革し、自分たちが価値を生み出し、新しい営業スタイルを構築することを目的とした「自動車営業部2.0」プロジェクトを立ち上げる。通常業務との掛け合わせで、現場にイノベーションを起こすための取り組みをし続けている。

人それぞれ価値観は違う


神奈川県横浜市出身です。両親と3つ下の弟の、4人家族で育ちました。父の転勤で名古屋市に引っ越し、小学校3年生まで過ごしていました。担任の先生が厳しく、チャイムが鳴り終わるまでに次の授業の準備をする習慣がつきましたね。その後、横浜の学校に転校。前の学校で習慣になっていた授業準備を行っていると、先生から「えらい!」と褒めてもらえて。褒められることが嬉しく、勉強意欲が湧くようになりました。学校のテストでは、ほとんどの教科で100点を取るほど頑張っていましたね。

転校後、サッカーチームに入団しました。チームメイトはみんな年上だったため、可愛がられ、褒められることが多かったです。それが嬉しくて、練習を頑張るモチベーションになっていました。試合に出たい気持ちが強く、上級生を相手にレギュラー争い。自然とレベルが引き上げられ、どんどん上達していきました。

将来は、プロサッカー選手になりたいという夢を掲げ、中学校でもクラブチームに入りました。フットサルの大会では、神奈川県2位に登りつめるまでに。高校もサッカーの強豪校に進学しました。

高校時代は、サッカーをやることしか頭にありませんでしたね。勝ちたい、上手くなりたい。その気持ちだけで、がむしゃらに練習に励んでいました。でも一方で、片付けや準備などチームの仕事は何も手伝わない選手でした。チームメイトにも自分と同じレベルを求め、もっと頑張れよという苛立ちをそのままぶつけたり、ミスした選手を罵倒する態度をとったり。勝つことしか頭になく、周りが見えていませんでした。

あるとき、部活でチームミーティングが開かれました。そこでは「中川と一緒にサッカーをしたくない」という他の部員の本音を、次々と聞かされることに。そうだったのか...と衝撃でした。

サッカーが好きな子でも、勝つことが全てと思っているとは限らない。勝つために頑張っている自分は準備や片付けもしなくていいんだと、本気で思い込んでいたことを振り返り、自分のものさしだけで物事を捉えるのはよくないと学びました。人それぞれ考えや価値観は違うことに気づかされたんです。

それからは、チームメイトとのコミュニケーションの取り方だけでなく、学校生活を送る態度も変えていきました。自分のことだけでなく、周りにも目を向けるようになったのです。女の子が重い荷物を運んでいたら、持つよと声を掛けたり、クラスメイトとも積極的に話したり。それまでは授業中は寝て、お昼を食べ、部活に行く淡々とした毎日でした。でも周囲との関わりを大事にすることで、いつの間にか毎日が楽しくなっていったのです。自分一人で何かをするよりも、みんなと一緒に行う方が物事は楽しくなるんだと感じられるようになっていきましたね。

その後もサッカーに打ち込む日々を送りました。インターハイは神奈川ベスト32、全国高校サッカー選手権は神奈川ベスト16で敗退。プロへの壁は厚く、会社に就職して生活するんだろうな、という現実的な将来像をぼんやりと考えるようになっていきました。大学は一般入試で受験しようと、勉強に励むことに。とはいえサッカーを続けたい気持ちはあったため、サッカー部が強い大学への進学を決めました。

大学でサッカーを諦めた後悔


進学先のサッカー部は、プロ選手を輩出するほどの名門校。入学前に練習に参加させてもらったものの、始発で家を出て、レベルの高い練習に必死についていく、そんな毎日に耐えられなくなってしまい、数週間で諦めてしまいました。

結局入部を断念し、サッカーはサークルで続けることに。これまで培ってきたスキルを発揮し、大学の準体育会や同好会が出場する全国大会に出場、準優勝することができました。また、自分自身もベストイレブンに選ばれるほどの良い結果を残せたんです。

嬉しい一方、こんなに成果が出せるのならサークルではなく部活でも続けられたんじゃないか...とモヤモヤを感じました。部活でチャレンジできる環境にあったにも関わらず、自分から逃げたんだ。そう思うと、後悔が強烈に押し寄せてきました。

これからの人生は、チャレンジできるステージから自ら降りることは絶対にしたくない。そんな強い想いが心に刻まれました。

今いる環境で挑戦する


就職活動では、業界問わず人や事業の挑戦を近くでサポートできる仕事に魅力を感じ、大手損害保険会社に入社を決めました。北海道の旭川に配属後、夢中になって働きましたね。自分が動けば動いただけ、数字として結果に表れる。そのことにやりがいを感じ、メキメキと経験を積んでいきました。また、上司や職場の先輩方にも恵まれたこともありチームで動くことの大切さや、人と一緒に物事を進める楽しさも感じていましたね。

その後、主要都市で働いてみたい、という希望もあり大阪の自動車営業部へ転勤となりました。旭川での実績を自負していたことから、新天地ではかっこいいキラキラした自分でいようと肩肘張って働くようになりました。ピカピカの靴を履いて、かっこいいネクタイをして、ビシッとしたスーツを着て、論理的に話して…。本当は別にロジカルな人間じゃないのに、気が付いた時には自分が作った虚構の自分しか出せなくなっていたんです。

弱さを含めたありのままの自分を出したい。でも出せない。そんな環境が辛くて、逃げ出したくなってしまいました。このまま働くことが苦しくなり転職を考えることに。でも周囲の人たちには、「新しいフィールドで新しい挑戦がしたい」なんて話していました。いろいろな会社からスカウトを受け、ある会社の最終面接まで進みました。そして面接の日、先方の社長からある言葉を投げかけられたのです。

「選択自体に意味はなく、選んだ道を正解にするために動き続けるのが大事。だから今すぐ、入社するか否かを決めてください」

ハッとしました。自分が選んだ道は、希望もあり配属された今の部署だったはず。でも苦しい気持ちから逃げたくて、転職活動をしていました。これでは次の場所に行っても、環境がそぐわなければまた同じことが起きるのではないか。そう思い転職をお断りすることに。選んだ道を正解にするため、今いる環境でもっとチャレンジしたい。そのためには自分から動いて、できることをどんどんやってみようと思い直しました。

新プロジェクトを立ち上げる


ちょうど働き方改革が推進され、自由に使える時間も少し増えたため、視野を広げるため地域のNPO法人やグループ会社など、本業から離れた活動にも携わるようになりました。

動き出したその頃、メディアの記事を通して、大企業の若手中堅有志団体の実践コミュニティ「ONE JAPAN」の存在を知ったんです。共同代表の方のインタビューを読んで、すごいなと思って。調べてみると社内の有志団体SOMPO Cotton倶楽部がONE JAPANに加入しているとわかり、そこに幹事として携わらせてもらうことになりました。

有志団体では定期的にイベントを開催しており、幹事になった僕も何かやりたいことはないかと聞かれました。そこで、「動画をテーマにやりたい」と提案したんです。

自動車ディーラーの営業の現場では、自動車の登録に書類が必要ということもあり、アナログな環境が残っているのが現状です。とはいえ、自動車ディーラーの現場でもDXを模索しています。それを更に加速させるために私たちにできることは無いのかを考えていました。

私たちもテクノロジーの力を使って、自分から価値を生み出せる新しい営業スタイルを構築していきたい。そんな想いがあって、動画はインパクトがあるし、自社や自動車ディーラーの方々の業務で活用できる場面が多くあるのではないか、と考えたのです。動画の作り方を伝えるイベントは盛況で、約120人が参加してくれました。

イベントが終わった次の日、参加した2人の社員から、「こんなの作ってみました」と動画が送られてきたんです。2人も僕と同じような想いを持っていて、営業を変えなきゃいけない、自分たちが価値を作り出す人間にならなきゃいけないと考えていました。

動画を使って現場のために何ができるのか、僕一人ではイメージできていなかった活用法を、2人が提案してくれたんです。ディスカッションする中で、有志のプロジェクトにしてチームで動いていこうと決めました。動画を使った新しい営業方法を具体化していったんです。

プロジェクトが動き始めたころ、ONE JAPANが、新規事業創出を応援するCHANGEというプログラムを始めたことを知りました。プロジェクトをブラッシュアップしようと、参加することを決めました。

CHANGEでは、同じ世代の熱い想いを持った人たちから刺激を受け、良質なインプットを得られました。メンバーと語っていたアイデアはよりブラッシュアップされ、現状をなんとか変えたいという熱もどんどん高まり「自動車営業部2.0」を有志のプロジェクトとして大阪・埼玉・千葉の4名で立ち上げることになりました。毎週木曜日の業務時間外にオンラインでブレストしてアイデアを出し、実際に行動して、その結果を検証して、と試行錯誤を繰り返しました。

テクノロジーの力を使って、自分たちが価値を生み出し、新しい営業スタイルを構築することを目的とした自動車営業部2.0。その第1弾として、ディーラーの方々が保険をお客様へ提案する際に動画を活用いただく取り組みをはじめました。形のない商品である自動車保険をわかりやすくお客様にご提案いただくこと、そして営業スタッフのスキルの高位標準化を目指しています。

活用に至るまでには、テクノロジーを使った新しい営業方法の価値を周囲に理解してもらう必要がありました。例えばプラットフォームに動画を載せるだけでも、金融商品であることから社内のコンプライアンス規則もあり、容易にはいきません。自分達の力だけでは実現させるのが難しい。

そこで本社を巻き込もうとIT系の企画担当部署に連絡をしてプレゼンをさせてもらうことに。すると共感してもらえ、他の部署にも認知されたことで今まで以上に動きやすくなったのです。自分たちから主体的に動くことで、認知度が高まり、協力者も増え、推進力もついていきました。まだまだ成果・実績と呼べるほどのものではありませんが、自分が動けばいくらでも可能性は広がっていくと気づけました。

挑戦を応援したい


現在は、損害保険ジャパン株式会社で代理店である自動車ディーラーさんに自動車保険の販売を推進・マネジメントする業務を担当しています。通常業務の傍ら「自動車営業部2.0」プロジェクトも進めており、両方の業務を掛け合わせて新しい価値を生み出したいと考えています。

担当の自動車ディーラーの方たちは、みなさん一生懸命で、すごくいい人たちばかりなんですよね。その姿を見ているからこそ、もっと効率的に仕事ができる環境を整えたい、という強い想いがあるんです。だからこそ、彼らと、彼らの先のお客さんのためになるイノベーションを起こしていきたいと考えています。

加えて、これからは、自分から主体的に動けば可能性は広がっていくんだといろいろな人に伝えていきたいですね。僕の中で一番辛いのは、本当に頑張って働いている人が、自分にはこれしかできないと視野が狭くなって、苦しくなってしまい、その結果として耐えるのが自分の仕事・役割だと誤解してしまうことです。

社内外の有志団体に関わるようになって、実は自分が思っているよりも、もっといろいろなことにチャレンジできるんだとわかったんです。さまざまな価値観を持った人と活動すると、視点は変わります。声を上げれば、助けてくれる人はたくさんいて、仲間もできるんです。大切なのは「思考より試行」。思い悩んでいるよりも、試しに行動してみることで意外と道は拓けると思うんです。

とはいえ、私も最初からできていたわけではありません。職場の上司・先輩・同僚の人たち、社内外の有志団体で出会った人たち、何より日頃から支えてくれている妻のおかげで今の自分があります。自分が変われたからこそ、くすぶっている人たちがいたら、なんとかしたいと思うんです。会社の中だけで自分の可能性を狭めず、社会の一員として挑戦する人が増えると嬉しいですね。

2021.01.04

インタビュー・ライティング | 貝津 美里
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