他人との競争ではなく、自分の軸で自分に勝つ。 大企業で見つけた、心からやりたいこと。

大手通信会社でコンサル営業を担当する傍ら、有志団体や個人で教育、営業、地域を軸にさまざまなプロジェクトに取り組む太谷さん。やりたいことが見つからないと悩み続けた太谷さんが、大企業に入って見つけたものとは?お話を伺いました。

太谷 成秀

おおたに なるひで|大企業パラレルプレナー
新卒で大手通信会社に入社。新潟でのコンサル営業を経て、東京でのコンサル営業を行う。有志団体の運営事務局を務め、大企業の若手中堅有志社員の実践コミュニティONE JAPANに参加。ONE JAPANのスピンアウトONE Xを立ち上げ、企業や大学、自治体と連携して課題解決に取り組む。特に地域の課題解決として、ふるさと兼業プロジェクトを推進する。

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競争の中で勝ちにこだわる


東京都町田市に生まれました。幼稚園から地元のサッカークラブに入り、平日も土日も関係なく、サッカーばかりしていました。ポジションはミッドフィールダーやフォワードで、攻めのタイプ。グラウンドを離れても、自分から何かを提案してみんなをまとめることが多かったですね。

中学校に入ると、陸上部に所属する傍ら、地域選抜のサッカークラブへ所属。陸上の練習が終わると、電車で45分かけてサッカーの練習に向かっていました。練習はかなりハード。ボールを全く触らずに1時間半も山を走らされたときは、本当に辛くて死ぬかと思いました。それでも、メンバーの実力が拮抗していて、試合のたびにレギュラーが変わるような競争環境だったので、負けたくないという思いで食らいついていました。

せっかく親が試合を見に来てくれても、レギュラーになれないとずっとベンチのパターンもあるわけです。それだけは避けたいと思っていました。大きい大会でレギュラーになり、点を決められた時は最高でしたね。僕自身も嬉しいし、両親も喜んでくれました。

ただ、夢中で打ち込んではいましたが、プロのサッカー選手になるのは難しいと感じていました。周りにうまい人がたくさんいましたから。高校を考える時も、サッカーだけでなく進学も見据えて選びました。地元が荒れていたこともあって、親の勧めで大学付属の高校へ進むことに。高校でもサッカーを続け、そのままエスカレーターで大学に進学。みんなが進むからという理由で経営学部に入り、サッカーサークルの活動と飲み会に明け暮れました。

将来何をやりたいの?答えられない自分


毎日遊びまくる中で、ワインをメインにした飲食店でバイトを始めました。10人入らないくらいの店で、お客さんとの距離が近かったです。大学2年生になったころ、店の常連客に「将来何をやりたいの?」「そのために大学で何を学んでるの?」と聞かれました。その問いに対し、1ミリも答えられない自分がいたんです。

ずっと決められたレールの上を歩いている感覚で、何をやりたいかなんて全く考えていませんでした。でも、サークルで就活する先輩を見ていても、僕もいつかは仕事をするし、将来を考えなければ、と焦りは感じていて。なんとなくモヤモヤしていたところに、ズバッとその問いを投げかけられて、グサグサ心に刺さりました。本気で将来を考えないとヤバイ、という危機感が芽生えたんです。

その人はさらに、「あなたの見ている世界は、学生のほんの小さな円の中。知らない範囲はもっとたくさんある。知らないことを知って、たくさんの人の価値観に触れて、広い世界を見たほうがいい」とも言いました。それを聞いて、まずは知ることが一番大事なんだと思い、積極的に知らない人と関わるようになりました。

その飲食店に来るお客さんに自分から話しかけたり、いつも会っている友達ではなく、就活を経験した先輩と飲みに行ったり。できることから行動することが習慣になりましたね。とにかく一歩目を踏み出せば世界は広がるんだ、と感じました。

しかし、行動はしてみたものの、なかなかすぐにはやりたいことが見つからず。そのまま就職活動の時期になりました。夢はないけれど、就職したい思いはめちゃめちゃ強くて。就活は競争だと感じたんです。負けず嫌い精神が顔を出し、みんなが行きたい会社に行って勝とうと思いました。誰よりも時間を使って研究し、ほぼ全ての業界にエントリーシートを出しましたね。完全な大手狙いの就活で、あとは受かってから決めればいいと思っていました。結果、受かった企業の中でも選考で親身に話を聞いてくれた、大手通信会社に入社を決めました。

会社の外にも世界は広がっている


全国に拠点のある会社だったため、入社後は新潟に配属され、営業を担当。1年目は、新潟での営業成績ナンバーワンを目指して、ただがむしゃらに働きました。しかし、2年目になり余裕が出てくると、このままでいいのか漠然とした不安が生まれたんです。営業しかやっていないけど大丈夫なのか、社内の仕事しかできなくて良いのか、なんとなくモヤモヤしながら毎日過ごしていました。

そんな時、本社の社員の方が、商材の勉強会のためにたまたま新潟にやってきたんです。面白そうだと感じて、誘われてないのに自分から、「飲み会に行っていいですか?」と立候補しました。何か起きるかもしれないと思ったんです。3次会が終わってもその人はまだ残っていたので、「ちょっと飲みに行きませんか?」と誘って、二人で飲みに行きました。

時刻は夜中の2時。話している中で、その人に「なんで営業やってるの?この会社で何がしたいの?」と聞かれたんです。大学生の頃と同じ問い。そして同じように、答えられない自分がいました。ただ、大学の時の危機感を覚えていたし、今やり切らなかったらいつやり切るんだと、なんでも一生懸命やってきた。やりたいことはわからないけど、やる気はある。そんな想いを熱く語りました。行動していることだけでも伝えたくて。

するとその人から、「社外有志団体で運営メンバーを募集してるけど、どう?」と聞かれたんです。まずやってみるのが僕の信条、二つ返事で引き受けることに決めました。

東京まで行き、ミーティングに参加しました。その日は、その団体の共同創業者2人が登壇する回。登壇者が、「仕事はワクワク楽しくするもんだ」と話していました。「大企業に入ったら、企業に染まるかやめるかじゃなくて、変えるっていう選択肢もあるんだよ」と。

半端ない衝撃を受けました。仕事って、本気でワクワク楽しくできるものなんだ。そして、こんなに熱量の高い人たちが会社の外にいるんだ、って。この人たちと関わることは、半年後、1年後の自分にとって間違いなくプラスになる。そう確信できたんです。

そこからは、ミーティングのたびに新潟から通いました。会社という壁の外に世界の広がりを感じて、自分を広げようともがきました。人脈やスキルを磨くため、今まで出会ったことのない人と積極的に出会い、自分にないものを学べるようにしました。そこでの学びは本業に生きて、3年目には新潟の営業で1位を取ることができました。

まずは真似るところから


社外での活動が充実してきたころ、大企業有志団体の代表者が集まる組織の立ち上げメンバーに、推薦を受けました。もちろん返事は「やります」です。行動してきたことで自信がつき、自分にはなんでもできると感じていました。

しかし、いざさまざまな大企業の社員のメンバーが集まる新しい組織のミーティングに参加してみると、また衝撃を受けたんです。能力も想いも、知識も人脈も、自分よりもはるかにたくさん持っているメンバーばかりでした。最初の会議では、議論に参加することすらできなくて。ああ、全部勝てないと落ち込みました。

でも、以前感じたものと同じ、「ここにいれば成長できる」という手応えがあったんです。だから、大変でもまずやってみようと思いました。唯一、自分にできると思える営業が必要な場面では、活動にフルコミットしました。一方で、自分にない部分は、優秀なメンバーをロールモデルにして真似したんです。

例えば、スライドの作り方や話し方。複数人のチームをまとめるために、思いややり方を伝える、ものすごく大事なスキルだと思いました。一度スライドや話し方を完コピした上で、独自性を取り入れるようにしました。

そうやって力のあるメンバーと一緒にやっていく中で、社内に戻った時、本業の質が上がり、自分のできることが圧倒的に増えていることを実感したんです。ロールモデルを見つけて、まずやってみることで成長できると気がつきました。自分の強みは、素直さと謙虚さ。自分のやっていることが間違っている、もっとより良い方法があると思ったら、すぐ人の意見や、やり方を取り入れていきました。

加えて、メンバーと話すうち、働く中では「Will(やりたいこと)とCan(できること)、Must(すべきこと)の3つが大事」という考え方を知ったんです。自分に当てはめて考えると、営業目標というMustしかなかったと思い至りました。ずっと問われ続けてきた、自分のやりたいこと、Willはなんだろう?そう考えながらも行動は止めず、活動の幅を広げていきました。

自分のwillが自分の基準


あるとき、社内で若手向けのキャリア勉強会を開く機会がありました。勉強会を終えると、参加者から「今まで何をやりたいかわからなかったけど、道が拓けました」「悩んでいたことが解消されました」と反響があったんです。

またあるときに営業勉強会を開くと、アンケートで「苦しかったのが、参加して変わった」という声を聞くことができました。さらに、勉強会から1年ほど経つと、参加者から「おかげさまで表彰を取れました!本当にありがとうございます」と報告をもらえて。

悩んでいる人の悩みを解消して、前向きになってもらえたことに、大きなやりがいを感じました。そのとき、自分にとってのWillは「悩んでる人をワクワク楽しくさせること」だと気がついたんです。過去の自分を振り返ってみると、同様のシチュエーションでやりがいを感じていました。問われ続けてきた「やりたいこと」の、答えが見つかった気がしました。

以前は、Mustの中で仕事をしていたから、売り上げなどの他人が決めた評価軸の中で勝つことが全てでした。でも、自分にとってのWillが明確になったことで、評価軸が変わった感覚がありました。自分を評価するのは自分になり、Willに沿って進むこと、自分に勝つことが重要になったんです。これまでは他人と戦っているので、人に営業資料を見せるのにも抵抗感があって。でも、自分のWillがわかってからは、ノウハウを積極的にシェアするようになりました。

悩んでいる人にワクワクを


今は、大手通信会社で働く一方、大企業社外有志団体「ONE X」をはじめとして、社外活動を積極的に展開しています。

本業では、都内160の大学へのコンサル営業をしています。オンライン授業をするためのツールや、アクティブラーニング導入の提案などです。加えて、大学の教育の質向上を目指したサービス開発にも取り組んでいます。

複業では、教育・営業・若手新入社員・地域の4つの軸で活動していますね。営業やキャリアの勉強会に加え、たとえば地域の軸では、ONE Xで「ふるさと兼業」というプロジェクトを始めました。大手企業の若手人材が地域の企業、団体に伴走して事業を加速化させる取り組みを推進しています。

どの取り組みでも、目指しているのは、悩んでる人をワクワク楽しくさせること。特に、自分が実際に悩んだことを中心に、マイナスをプラスに転じていきたいと考えています。就職活動や入社後の漠然とした不安感、営業での悩みなど、これらは多くの人が悩むポイントだとも思うからです。

次のステップは、社内・社外両方の取り組みを生かし、今の会社で事業・組織両面で新しい文化をつくることだと考えています。これまで、会社には恵まれた環境を与えてもらいました。だからこそ、会社に何か還元したい。それに、小さな会社を変えても大きなインパクトを出すのは難しいかもしれませんが、大企業が変われば、日本は大きく変わるはずです。だからこそ、ここで自分にしか出せないインパクトを出していきたいと考えています。

今は、周りに勝ちたい気持ちはありません。大事なのは、悩んでる人をワクワク楽しくさせるという自分のWill。少しでも多くの人をワクワクさせられるように、できることを増やし、Willを実現できる人間になりたいです。

2020.07.30

インタビュー・ライティング | 粟村 千愛
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