「できないことをできるようにする」「普通」な僕の、完全制覇2回までの道のり。
【7月3日放送 TBSテレビ『SASUKE 2014』特集】 TBSテレビ「SASUKE 2014」の放映までの1週間、another life.にて出場選手7名の人生にフォーカスした特集企画を実施します! 靴のメーカーの営業を務めながら、SASUKEで唯一「完全制覇」を2回達成している漆原さん。「部活等で特別良い成績を残したことはない」という「普通」な漆原さんが、前人未到の偉業を成し遂げる背景には、シンプルな哲学がありました。
漆原 裕治
うるしはら ゆうじ|靴のハルタの営業マン
紳士靴・婦人靴・子供靴を販売・製造する株式会社ハルタで営業として活躍している。
TBSテレビ「SASUKE 2014」に選手として出場する。
株式会社ハルタ
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TBSテレビ「SASUKE 2014」
2014年7月3日(木)19時よりTBSテレビにて放映。
※関東および一部の地域では18時57分から放送
「できないこと」へのこだわり
幼いころから身体は小さかったですが、走ったり、跳び箱を飛んだり、体を動かすことが好きでした。特に一輪車等、「できないことをできるようになる」ことが楽しかったんですよね。
小学校の頃は、体操の選手になり、金メダルを取ることを夢見ていて、中学に入ってからは、バック転やバック宙を覚えるために体操部に入部しました。特によい記録を残したり、何かで一番になったりするような選手ではなく、金メダルの夢もすぐにあきらめてしまいましたが、部活は楽しかったですね。
そのまま高校でも迷わず体操部に入ったのですが、自分以外誰も入部しなかったため、すぐに廃部になってしまったんです。どうしたものかと思いながらも、他の部活に入ろうという気持ちは無かったんですよね。人と競うと力がうまく出せないし、団体競技も苦手で。
結局、廃部後は、授業後に学校のトレーニングルームに一人で通うという生活になりました。明確な目的は無かったのですが、身体が華奢だったこともあり、トレーニングをするのが楽しく感じたんです。
また、運動は比較的満遍なくできたのですが、小さいころに海でおぼれたトラウマから、水泳だけは全くできなかったんですよ。とにかくできないスポーツがあるということが気に食わなかったので、それを高校のうちに克服しようと思ったんですよね。そんな思いから、毎日のように友人に水泳を教えてもらうようになりました。泳げるようになることを夢にまで見ていたので、実際に泳げるようになった時は、本当に嬉しかったですね。
やっていてよかったな、という達成感がありました。
やっぱり夢の世界なのかな
高校を卒業してからは、元々モノづくりに興味があったので、手に職をつけたいと思い、靴のハルタの工場に勤務することに決めました。ですが、実際に勤務してみると、覚えることが多くて最初はきつかったですね。正直、3日で辞めてやろうと思いました。(笑)
ただ、すぐには辞められないという気持ちもあり、踏ん張って続けていくうちに、段々と仕事に慣れ、最終的にはやりがいも見いだし、自分に合っている仕事だなと思うようになりました。また、仕事が終わった後は、高校時代の影響からか、工場の屋上でトレーニングをするのが日課になっていました。どこかいい場所が無いか探したら、たまたま屋上にあったんですよね。(笑)
そんな折、当時放送されていたTBSテレビの番組で、100mの雲梯を行う種目があり、その一般視聴者の募集に申し込んでみたんですよね。
「自分だったら、どこまでできるのかな」
という関心があったことに加え、成績優秀者はSASUKEに出場できるという特典があったことも大きかったですね。
結果としては、初めての割に上位に入賞するほどいい成績をだすことができ、個人的にはとても満足だったのですが、SASUKE出場には届きませんでした。SASUKEにも出てみたいという気持ちはあったのですが、「やっぱり夢の世界なのかな」と思い、その後は積極的に応募もしなくなりました。
SASUKE初挑戦
それからしばらくは、SASUKEから気持ちが離れていたのですが、ある時、お台場に「マッスルパーク」という、SASUKEの実寸大のセットを体験できる施設ができるということを、TVで知ったんです。興味があったので、開園して1週間くらい経った頃に行ってみることにしたんですよね。クリスマスイブに一人でお台場へと向かいました。(笑)
主に3rdステージのエリアが中心ということもあり、まだ誰もクリア者がいないとのことだったのですが、挑戦してみたところ、なんとクリアすることができたんです。それをきっかけに、SASUKEの予選会やイベントに呼ばれたり、様々な場所で成果を出せるようになっていきました。
そして、ついに念願かなって30歳で、迎えた第21回大会に出場することができたんです。初めての挑戦は、何もわからなかったので、どこまで通用するのか探りながらの挑戦でした。結局1stステージで落ちてしまったのですが、自分が設定した目標は達成でき、満足していたこともあり、「良い経験だったな。また次も出られたらいいな。」というくらいの軽い気持ちでした。
ところが、第22回大会は予選から順当に進んでいき、なんとファイナルステージまで行くことができたんです。後一つというところまで行ったことにより、「完全制覇」を明確に意識するようになった反面、「今回はたまたま、ここまで来ただけで儲けもん」という気持ちもあり、自分の中では葛藤がありましたね。
ただ、相変わらず「できないこと」をなくしたいという気持ちはあったので、これまでのトレーニングに加え、ファイナルステージの練習に力を入れるようになったんです。
完全制覇、そして2回目へ
その後、第23回大会は新エリアで落ちてしまったのですが、第24回大会、31歳の時に、完全制覇を達成することができたんです。この時は、とにかく「嬉しい」の一言に尽きましたね。特に、自分のやってきたことは間違っていないというのは、本当に嬉しかったです。
ただ、既に「完全制覇」の達成者は僕を含めて2人いたので、いわば1位タイのような状況だったんですよね。まだ誰もやっていないことをしたいという思いがあったので、それからは、「2回目」の完全制覇を目指すようになったんです。「記録」にはこだわりがあったんですよね。
その後、1stや2ndで落ちてしまうこともあったのですが、自分の実力が足りないだけ、という感覚でした。運も実力もタイミングも、全ての要素がないと達成できないことだからこそ、「そんなに甘くない」という気持ちで、全てがそろう「いつか」のために努力を続けました。
後悔したくないんですよね
なるべく一喜一憂はしないように心がけていたのですが、やはりのしかかる不安は大きかったです。エースナンバーにあたる、ゼッケン100番をつけながら結果がふるわないこともあり、「やっぱり無理なんじゃないかな」と、怖さを感じていた時期もありました。
それでも、「できないことをやりつつ、できることを伸ばす」という自分なりのやり方を続けたことで、第27回大会で、2度目の完全制覇を達成することができたんです。正直、嬉しさはもちろん、大きな安心感がありました。挑戦は終わりませんが、自分にとっては大きな達成でした。
現在は靴のハルタで営業として働き、業務後はやっぱり会社の屋上でトレーニングをしています。SASUKE2014では、「3回目」を目指しています。もちろん、これまで以上に難しくなると思いますが、「できないことを直し、できることをのばす」のは今までと変わりません。
将来、身体が動かなくなってから後悔したくないんですよね。
「昔はこうだった」
なんて言いたくないんですよ。だから、少しでも前に進み続けたいんです。
2014.06.28