日々の幸せを大切にできる人を増やす。心に生まれた余裕を自然への愛に。

自然と調和する暮らしを実践し、自身の生き方の発信活動を行う小笠原さん。もともと六本木のクラブナンバー1ホステスだった小笠原さんが、生活スタイルをガラリと変えた背景とは。お話を伺いました。

小笠原 愛

おがさわら あい|自然あそび企画・アテンド、地球ワクワク探検隊隊長
東京都足立区生まれ。専門学校卒業後、六本木のクラブで働き、ナンバー1に。退職後、旅先のハワイで自然と調和する暮らしに感銘を受ける。その後、ハワイでドルフィンスイムのアテンドなど、自然と調和する体験を提供する仕事を始める。また旅のエピソードをYouTubeで配信するユニット「地球ワクワク探検隊」を結成し、日々を楽しく大切にする生き方を発信している。

良い子を演じる限界


東京都足立区で生まれました。小さい頃から、親に褒められたくて、勉強も習い事も一生懸命でした。周りからはしっかり者と思われていましたが、生まれつきの性格ではなく演じていた面が大きいですね。

10歳の時に両親が離婚して、母に引き取られました。母からなんの前触れもなく、「今日引っ越すから」と言われ、すごいショックでしたね。引っ越してからは、母に対して反抗的な態度を取るようになりました。良い子を演じて母と関係性を保ってきたことに不安を覚えたからです。反抗してありのままの自分でも愛してくれるかどうかを確かめてたんですよね。

反抗期の間も、成績は学年でも上位にいて、高校は自分のレベルより少し高い都立の高校に進みました。しかし入学してすぐ、レベルの高い授業内容についていけなくなりました。自分と同じか上のレベルの同級生に囲まれ、上位成績でいることができなくなり挫折しました。

勉強は諦め、彼氏や友達との遊びに熱中しました。授業をサボって遊んでばかりいましたが、優等生であり続ける努力をしてたころよりも充実していましたね。抑えていた自分を解放して自由に過ごせたので、毎日が楽しかったです。

地球環境への危機感


サボりがちだった授業の中で、倫理の授業だけは興味を持てました。生徒が自分で考える時間が長い授業スタイルだったので、飽きずに取り組めたんです。

毎回異なるテーマを扱う中で、あるとき環境問題が取り上げられました。授業で、このまま環境破壊が進んでいった場合、人類が地球に住めなくなるかもれしれないと知って恐怖を感じました。授業が終わっても、環境問題への漠然とした不安が頭から離れませんでした。自分の子孫や未来を生きる人々が安全にこの地球に暮らせなくなるのが怖かったんです。

環境問題への関心はあったけど、仕事に結びつけては考えられなかったので、卒業時は、なんとなく自分に向いていそうだと感じて美容師の専門学校を選びました。

専門学校に通い始めても、不安が頭から離れませんでした。ずっと一人で考え込んでも何も始まらないと思い、学校の友達への呼びかけを始めました。地球環境が悪化していると伝えた上で、「電気こまめに消そう。アイドリングやめてみない」などと促してみたんです。大抵の場合、「えらいね」と感心されて終わりで、誰も真剣に取り組んではくれませんでした。

地球温暖化対策に取り組む団体に電話して、専門家の考えや具体的な対策を聞こうとしましたが、まともに取り合ってもらえませんでした。自分一人が呼びかけても何も変えられない現実に絶望しましたね。

強い危機感を持ちながらも、どれだけ行動しても、なんの改善にも繋がらず、残るのは自分の無力さだけでした。完全に心が折れ、鬱状態になりました。

鬱になってからは、環境問題に関する話題を徹底的に避けるようになりました。テレビを見ていても、環境問題が取り上げられるとすぐに消さずにはいられませんでした。一瞬でもその話題が頭をよぎると絶望して気持ちが沈んでしまうので、思い出したくなかったんです。いつか来るかもしれない恐怖を妄想しすぎて、生きているのがしんどかったですね。

1人でいると考えすぎて辛くなるので、どうにかして楽になりたいと、人と会うようになりました。学校の友達と他愛のない話をしているときは、1人でいるときよりも大分気持ちが落ち着いたんです。人に絶望していたはずなのに、同時に人に救われてもいましたね。

その後、鬱状態はゆるやかに回復していきましたが、地球環境問題への関心は封印したままでした。

絶望からの復活


専門学校卒業後、そのまま美容師になろうとは思いませんでした。給料が安かったからです。専門学校に通うために借りていた奨学金を返すことを考えると、美容師の収入では難しいと感じました。両親が離婚した関係でお金に不自由な生活をしてきたので、そうはなりたくないなと思っていたんです。給料の高い仕事を探した結果、ホステスとして働くことにしました。

ホステスの世界では順調にステップアップでき、六本木のクラブでナンバー1になりました。一方で、夜の仕事は体の負担も大きいので、いつまでも続けられないとは分かっていました。仕事への思い入れも強くなかったので、その気になればいつでもやめられるだろうと軽く考えていました。

しかし、一旦お金を稼げる生活に慣れると変化を恐れるようになっていました。別の世界に移って、生活水準が落ちるのはわかっていましたし、築き上げてきた地位を失いたくない思いもありました。ほかにやりたい仕事が明確に見えなかったので、お金をモチベーションに働く状態をズルズル続けました。

働き始めて10年が経った頃、その当時の彼氏からホステスをやめてほしいといわれました。ちょうど30歳で節目のタイミングだったので、ホステスはやめて、何か違うことを始めようと決心しました。

彼氏とは結婚を考えていましたが、結局別れました。ホステスをやめるきっかけを与えてくれた恩人であり、一緒に人生を歩んでいきたいと考えていただけに落ち込みました。あまりにもショックが大きかったので、心をケアするためにカウンセリングに通い始めました。

ラッキーなことに出会ったカウンセラーさんとはとても相性が良く、なんでも打ち明けることができました。ありのままの自分をさらけだせる空気を作り出してくれたので、話すことで自分を見つめ直すきっかけになったんです。失恋の痛みはすぐに消化でき、それ以外の悩みも掘り下げることになりました。

すると、心の隅に隠していた地球環境問題への関心にたどり着いたんです。とても自然なアプローチだったので、拒否反応を起こさず、この悩みと向き合えました。その結果、もう一度、環境問題に関わる取り組みがしたいと思うようになりました。

本当にやりたいことをやろう


ホステスをやめてすぐは、経済的に余裕があったので、自由を満喫しました。その期間に、ワーキングホリデーでオーストラリア、長期滞在でハワイに行く機会がありました。

ハワイの人々は、朝5時に起きてコーヒーを飲んだりウクレレを弾いたりして、2時間ほどのんびり過ごしたあと出勤し、仕事から帰ってきた後にサーフィンに行ったりビーチにサンセットを眺めにいくように暮らしをしていました。日本の慌ただしい日常に慣れている身からすると、ビックリするほど余裕のある生活に見えました。そんな暮らしでも経済が成り立っているのが不思議に思えました。

生き急がず、ゆったりと自然の流れと調和するハワイの人々はうらやましいなと思っていました。暮らし方が素敵に映ったんです。

しばらくハワイに滞在していると、もしかしたらこの生活はハワイでなくてもできるかもしれないと思うようになりました。ハワイの暮らしの魅力は、自然に囲まれているところだけでなく、毎日少しずつ自分の時間を確保しているところにあると気づいたからです。ウクレレやサーフィンをして楽しむ時間が心にゆとりを生んでいると感じました。

ただ、帰国後いきなり生活スタイルをガラリと変える勇気は持てませんでした。やはり必死で働かないと生活できないと思ってましたね。やりたいことよりもすぐ稼げることを優先し、派遣社員の仕事に就きました。

派遣社員としての仕事には、なかなかハマれませんでした。特に社長と馬が合わず、疑問を持ちながら仕事をする日々が続きました。だんだん我慢ができなくなり、社長に、自分がおかしいと思っていることをはっきり言うようになりました。するとその態度が気に食わなかったのか、あっさりクビにされてしまいました。ようやく昼の仕事に慣れつつあっただけに、ショックが大きかったです。

しばらく気持ちが沈んでいましたが、仕事を失ったのは、自分の好きなことを始めるきっかけだったと前向きに考え、ずっとやりたかった海や自然のことにチャレンジすることにしました。そのとき、友達から自分が好きな自然に関わる海とダイビングの総合情報サイトのライターの仕事を紹介していただきました。

安定した収入になるかは分かりませんでしたが、好きなことを発信する仕事は魅力的に映りました。仕事内容は、海を通して気持ちが変わったきっかけや、海での体験談をウェブを通して発信するというものでした。

働き始めて1年経った頃、文字では、あくまでも自分の視点でしか情報を伝えられないことにジレンマを感じるようになりました。もっとありのままの楽しさ、面白さを多くの人に感じて欲しいと思ったんです。そこで、自分の体験記事ではなく、実際の体験を提供する活動を始めました。

さらに、「地球ワクワク探検隊」というユニットを組んで、日常をYouTubeで発信する活動や、人と人のつながりを生み出している「新虎小屋」という場所に関わらせていただき、お客さんとオフラインでつながる場を作り、自分の経験を直接伝える活動も始めました。

日々の幸せの先に


今は、体験を提供する活動と合わせて、自分が取り組んでいる、好きなことをやり続ける生き方の発信活動を行っています。

体験の提供では、ハワイでのドルフィンスイムなど自然や生き物と「遊ぶ」体験をメインで扱っています。「遊ぶ」時間はありのままの自分でいられる貴重な時間だと思います。仕事中は目上の方や取引先との関係に合わせて本音と建前を演じ分ける必要もありますが、遊んでいる間はフラットに人と人がつながれる場です。だからこそ、「遊び」をテーマにありのままでいられる場所や、人と深いつながりを作れる場所を提供できればと思っています。

また、外国人観光客向けに日本の暮らしの体験を共有する活動も準備しています。自然と調和する暮らしの根本には、日本の神道の考え方やおもてなしの考え方に通じる部分があると思っています。そんな日本独自の魅力を外国人にも広く知って欲しいと思っています。

生き方の発信では、オンライン、オフラインに限らず様々な場でこれまでの自分の人生や、今の考え方を伝えています。特に力を入れて伝えていきたいのは、日々を大切に生きることの素晴らしさです。

やりたいことをやるようになった今が、人生で最も充実している実感があります。しかし、こう思えるまでは、収入面の心配など様々な葛藤がありました。その葛藤を乗り越えてこれたのは人とのつながりだったので、自分の経験やつながりが誰かのきっかけとなればいいなと思っています。

最終的には、自分の活動を通じて、地球環境に関心を持つ人が増えて欲しいと思っています。日々を大切に生きると人生は充実し、生活が充実すると心に余裕が生まれ、その結果、地球環境にも気を使える人が増えると思うからです。これからも、いろんなしがらみにとらわれることなく、自分の実現したい未来に向かってまっすぐに進んでいきたいです。

2019.07.08

インタビュー・ライティング | 伊藤 祐己編集 | 種石 光
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