SFCに入ってみると、面白いことをやっている人だらけでした。でも一部の人は目立ちたいがために変わった行動をとっていたりしました。その行動は自分の持っている「人と違うことをやりたい」という感覚とは少し違うと感じました。僕は、単純に変わったことがやりたいのではなく、人がやっていないことをやって社会に良い影響を与えられることをしたいんだなと気がつきました。

学部2年生のとき、高校生の頃から取り組んでいた体内の微生物の研究から、体外の微生物の研究に切り替えました。微生物が体外から人に与える影響を解明すればすごい価値になるんじゃないかと思ったんです。

特に、都市環境を対象に研究することにしました。日本の都市には人口が偏在しており、微生物による問題が発生しやすいと考えたからです。例えば、学校やオフィスで微生物が原因である感染症が流行りやすかったり、湿気が多い日本の家などでカビなどの細菌が増殖して体に悪影響を与えたり。これらの問題を解決できれば、社会に大きなインパクトを出せると考えました。

そこで、都市に生息する微生物を調査し、人間の日常との関わりを解明する「GoSWAB」というプロジェクトを始めました。具体的には、階段の手すりなど、人がよく触れる部分を綿棒でこすってDNAを採取し、解読したデータを解析していきます。それによって、微生物のコミュニティやその機能を調べるのです。

プロジェクトを推進するため、学生を集め組織を作りました。クラウドファンディングの成功や研究費の採択などで資金調達ができ、研究が進んでいきました。今でこそGo SWABプロジェクトが理解され始めてきましたが、当初はなかなか周囲の理解を得られませんでした。その頃から僕を信じて今日まで付いてきてくれたメンバーたちには、感謝の気持ちでいっぱいです。

微生物は、ウイルスや病原菌などの悪いイメージを持たれがちですが、医療・工業的に利用できたりすることもあります。実は、私達が認知している微生物は実際に存在する微生物の1% 以下なんじゃないかともいわれています。新しい微生物が見つかった分だけ、いろいろな分野に応用できる可能性があるんですよね。

ニューヨークの地下鉄のDNAを調査した論文では、地下鉄内のDNAの約半分が未知のDNAでした。たとえば、この未知領域を解き明かすことで、医療・工業的に利用可能な微生物が見つかるかもしれませんし、人々の健康に寄与できるかもしれません。


学部4年のとき、成果が認められてForbes JAPANが選ぶ「世界を変える30人」の一人に選ばれました。自分のやっていることが研究者以外の人にも評価されたと感じて、これまで研究してきた中で一番うれしかったです。

研究を広く社会に役立つものにするためには、論文を書いているだけでは十分では無いと考えます。メディアを通して自分の研究について一般の方に理解していただくのも、研究を発展させるための重要なアプローチだと考えています。