プログラミングスクールという新たな教育の形。自信を持ってキラキラする子を増やしたい。

中高生向けプログラミングスクールの運営をはじめ、キャンプや自治体とのイベントのディレクションやサポート業務などを幅広く担当する落合さん。数学が好きだったことから、将来は数学の塾講師を目指していました。一度は教育分野を離れたものの、プログラミングスクールという新たな教育の形と出会いました。プログラミングを通し、子どもたちに伝えたいこととは。お話を伺いました。

落合 恵美

おちあい えみ|ライフイズテック株式会社 Life is Tech! School 運営担当
ライフイズテック株式会社でプログラミングスクールの運営担当を務めている。一人でも多くの子どもたちに、自信を持ってキラキラ輝いてほしいという想いで、現場のサポートを広範囲に行うほか、スクールやキャンプなどの戦略立案に携わっている。

算数が好きな子どもだった


奈良県で生まれました。両親の仕事の都合で岐阜県や神奈川県などを転々として、小学校4年生のときに東京都練馬区に落ち着きました。転校が多く肩身の狭い思いをすることもあったため、いつも堂々としていたいと自分からリーダーシップを取ることが多かったですね。

小学校でそろばんを習い始め、計算が好きになりました。中学校は、家の近くの学校を受験することに。算数の受験勉強では、鶴亀算など学校では習わないような問題を解くことが楽しくて、パズルみたいに答えがバシっと決まる瞬間が嬉しかったです。受験勉強がきっかけで算数が大好きになりました。

入学した中学校では、数学の先生の授業が面白くて数学がより好きになっていきました。中学2年生で塾に通い出してからは、塾の数学の先生も大好きでしたね。すごく厳しい先生でしたが、言う通りに勉強したらすごく成績が伸びたんです。成績が良くなったことが嬉しくて、将来は数学を教える塾講師になりたいと思うようになりました。

内部進学をした高校では部活に所属していて、引退後はすぐ受験勉強をしていたので、早く大学生になって塾講師のアルバイトをしたいと思っていました。大学生になるのが待ちきれず、大学受験の結果が来る前に塾講師のバイトに応募し、大学生になる直前の春休みからアルバイトを始めました。

大学生になると、塾で担当クラスを持つようになりました。解けなかった問題が解けるようになった子どもたちは、みんなキラキラして見えました。数学が苦手でも、その中の因数分解ができるようになるだけで、別の問題もできるかもしれないって自信を持ってくれるんです。少しずつ変わっていく生徒の姿を見ているのが楽しく、やりがいを感じていました。

自己分析をしてみたところ、私は数学そのものが好きというよりは、問題を解いたり、解き方を人に教えたりすることが好きだったことに気が付きました。友達にテスト勉強を教えたり、講師として数学を教えたりする中で、できなかったことができるようになっていく人の姿を見ることが嬉しかったんです。

塾講師ではない道へ


正社員として働く塾講師を見ている中で、自分が正社員になるのはちょっと違うかもしれないと思うようになっていました。正社員は、目の前の生徒のことを考えるだけでなく、会社の売上げや数字を優先して追いかけなくてはいけません。でも私は、生徒と一緒に過去問を解いたり、その子に合う志望校を考えたりと、目の前にいる生徒を優先したかったので、「向いてないかもな」と思っていました。

塾講師のアルバイトを4年間続けたことで、教え始めた頃は中学1年生だった子たちを中学卒業まで担当することができて、やりきった感もありました。そこで、就職先は塾講師ではない選択肢を考えるようになりました。

周囲には、就職活動で商社を受けに行く人が多かったです。私も友達に誘われて説明会に行くことに。これまで生活している中では商社に馴染みがなく、いまいち仕事内容がわからずにいましたが、説明会を聞いてみて興味を持つようになりました。説明会のとき、インフラを整備する事業の中で、モンゴルの遊牧民に対して固定電話が引けない代わりに携帯電話を配ったという話を聞いて。商社は自社商品を持っていないけれど、持っていないからこそ自由な発想でいろいろなことができるんだと知り、面白いなと思ったんです。

何万人のうちの何十人しか受からないと聞いていたので「まあ無理だな」と思いながら、そのモンゴルの話をしてくれた大手総合商社だけ受けることに。すると合格することができたので、そのまま大手総合商社の事務職に就きました。自動車や飛行機、トラックなど輸送専門の部署に配属され、実績管理や資料作成など幅広い業務に携わりました。仕事の基礎を徹底的に学び、事務職全般のスキルを身に付けることができました。

入社して5年経ち、仕事にも慣れてきた頃、やっぱり自分がやりたいのは事務職ではない、もっとバリバリ働きたいと思い、転職したいと考えるようになりました。

ある日、友人とランチをしていたとき、転職したいと思っていることを打ち明けると「私も転職したいと思っているんだよね」と、友人たちも転職を考えていることを知りました。それまでは、周りは転職したいと思ったことはないだろう思い、声に出せずに悩んでいました。他の子たちも同じように思っていることを知り、転職してもいいんだと考えられるようになりました。

ランチを終えたときにふと、以前塾講師になりたいと思っていたことを思い出しました。いったんは塾講師の選択をやめたものの、どこかでもう一度塾講師をやりたいと思っていた自分の気持ちに気付いたんです。その日のうちに塾講師の採用に応募しました。

キラキラしている子たちとの出会い


塾講師への転職活動を始め、大手進学塾での採用が決まりました。翌年の4月から勤務することになり、そのことを同じ部署の先輩に伝えました。すると「教育に興味があるんだったら紹介したい会社があるから、一度話を聞いてみない?」と言われました。先輩の大学時代の知り合いが中高生にプログラミングを教える会社を起業しており、人材を欲してるとのことでした。後日、その会社の社長と副社長と食事をする機会を作ってもらい、話を聞いてみることにしました。

実際に会ってみると、社長と副社長の勢いに圧倒されました。話を聞いてみるだけのつもりでしたが、「入社するためには、とりあえずパソコンを買って、今度あるイベントに参加して!」と話がどんどん進んでいきました。そのイベントとは、クリスマス前後の数日間、中高生が集まってみんなでプログラミングを勉強するキャンプでした。

大手進学塾から内定はもらっていましたが、転職するまでの間にいろいろな会社を見てみるのも良いかなと思い、とりあえず参加してみようかなくらいの気持ちで、お手伝い係としてキャンプに行くことにしました。

参加してみて衝撃を受けました。社長と一緒に会場に到着すると、中高生がすごく楽しそうにプログラミングをしていて。みんなキラキラして見えました。これまで、教育というと学校の科目を教える学習塾しか考えたことがありませんでしたが、子どもたちがパソコンで自分の作りたいゲームやアプリを開発している姿を見て、こんな形もあるんだと知りました。

塾講師をやっていたときは、数学を教えることで解けなかった問題が解けるようになって変わっていく子どもたちを見てきましたが、キャンプでの光景を見て、今度はプログラミングを通じて多くの子どもたちをキラキラさせたいと思うようになりました。

改めて自分は教育の現場で仕事がしたいと再確認し、この会社で働きたいと思いました。ピタっとハマった感覚があり、塾の内定は断ってそのまま入社することにしました。

ベンチャーならではのスピード感


入社してからは、参加者が増え続ける一方でスタッフが少なかったため、顧客対応から顧客管理、イベント開催など全ての業務のサポートを行いました。

最初は、それまで働いていた大企業とベンチャー企業との違いに戸惑いました。大企業ではゆとりを持ってカレンダー通りに業務を進めてきますが、ベンチャー企業では毎日新たにやることが出てくるので、そのスピード感に対応していくのは大変でした。それでも、自分たちで一から仕組み作りを進めていくところはすごく楽しかったです。

忙しさが落ち着いてきたころ、プログラミングスクールのスタッフを募集するという話になりました。もともと生徒たちと向き合いたいという思いがあったので、自分から「私がやりたいです」とお願いし、それまでやっていた顧客管理などの業務もやりつつ、スクール担当も兼任することになりました。

スクール担当としては、入出金の管理やアルバイトスタッフの調整のほか、現場に出て行って授業の出欠管理をしたり、授業についていけない子のサポートをしたりしていました。来てくれる中高生と仲良くなりたいという思いもあったので、休み時間には進路相談に乗ったり、試験前には学校の勉強を教えたりもしていましたね。

裏方のサポートだけで終わるのではなく、どうしたらみんなに楽しんでもらえるかを考え、現場を回しつつ子どもたちと向き合う時間を大切にしていました。自分一人だけで突っ走るのではなく、みんなが楽しんでいる姿をみることで、自分自身も楽しかったです。

キラキラする子を増やしたい


現在は、ライフイズテック株式会社でスクールの運営担当をするほか、自治体とのイベントの準備やサポートも行なっています。

スクールの運営では、現場のサポートや問い合わせの対応のほかに、入塾者を増やしたり、退塾者を減らしたりするための戦略を考えています。自治体チームでは、年間で10~20ある自治体との連携イベントで、開催場所や時間を設定するところからイベントが終わるまでのディレクション全般をやっています。その他にも、営業や広報など様々な部署間の橋渡し役をしています。

私には現在、1歳3カ月になる子どもがいるので、送り迎えなどの関係で以前よりは仕事の時間が限られるようになりました。今は、その限られた時間の中でいかに成果を出せるかを新たな目標として挑戦しています。そのためには、現場は少しづつ他の人に任せていき、スクールやキャンプなどの戦略部分にもっとフォーカスしていくような働き方をしていきたいと考えています。

会社は拡大しているところで、まだまだ仕組み作りができていない部分もあります。今後の1年間は仕組み化に注力していきたいと思っています。自分がこれまでに培ってきた事務的なスキルを還元し、仕組み化を進めることで、少ない人数でも質の良い教育を届けられるようにしたいです。裏方とはいえ、サポートだけしていてもつまらないので、攻めの姿勢を忘れずに現場に出れなくても表に立てるような仕事を見つけていきたいですね。

そうやってサービスを充実させ、会社を大きくして行くことで、もっとキラキラした子どもたちを増やしたいと思っています。

例えば、学校では教室の隅っこにいるような自信のない子でも、プログラミングを勉強して自分でゲームを作れるようになったら自信を持てると思うんです。もちろんそれがきっかけでその子がプログラマーになったらすごくいいと思いますが、私は目の前の子が少しでもキラキラしたらいいなと思っていて。そのゲームが例え世の中に出なくても、身近な人に褒められれば、また何かに挑戦してみようと思える。その成功体験は、たとえその先ゲームを作ることがなくても、その子の人生のどこかで生きてくると信じています。

2019.02.14

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