その頃になると2歳からプロレスの試合を見続けてきたためか、選手の動きや試合の勝敗の行方などが感覚的に掴めるようになっていました。たとえば、この選手は次にヘッドロックで相手選手を捕えるなとか、エルボーでダウンを狙うなとかが読めたんですよ。思った通りに試合が進むので、ちょっとつまらないなとも感じましたね。

そんなとき、僕の予想を見事に裏切る選手を見つけました。アメリカのクリス・ベノワという選手でした。体は小さいのですが、技のキレが抜群で魅了されました。いつかクリス選手と対戦したいと思っていたのですが、僕が12歳のとき、彼は亡くなってしまいます。失望のあまり、プロレスラーを目指すのはやめようと思いました。

失意の中、たまたまユニークな試合をしている選手をテレビで見ました。頭の上にカレーを乗せて、早く食べ終えた方が勝ちという試合をしていたんです。自分の中のプロレス観が崩れました。なんだか、まだ通ってなかった神経が繋がったような感覚がして、こんなプロレスの世界もあるんだと衝撃を受けましたね。失っていたプロレスへの情熱を取り戻しました。

その団体がDDTだったんです。日本にもDDTという、エンターテイメント性を押し出したプロレス団体がありました。そこでDDTが近くに来たタイミングで、会場に見に行くことに。

そこで衝撃的なできごとがありました。そのとき出場したレスラーのうちの一人であるゲイレスラーが、僕のファーストキスを奪ったんですよ。初めてを奪われたのが悔しくて、いつか絶対に僕もリングに上がり、プロレスで倒してやると決めました。すぐにSNSを通じてDDTの社長にプロレスラーになりたいとメッセージを送りました。100円ショップで買った履歴書も送りましたね。

すると社長から返事が来て、そこには「中学の部活で結果を残したら、卒業のタイミングで入門テストを受けてもいい」と書かれていました。そこで、中学に進学し絶対になんらかの結果を出してやると決心しました。

母の勧めから中高一貫校を受験しました。本当はプロレス部への入部が理想でしたが、全校生徒数が少なかったこともあり、運動部は体操部か陸上部しかありませんでした。どちらにしようか迷いましたが、アントニオ猪木が砲丸を投げをやっていたことを知り、陸上部に入ることにしました。

DDTの社長との約束を果たそうと、僕は陸上部で1番を目指すことに。178センチという身長と体格のよさを強みに、練習に励みました。