起業の夢を追いかけ、中国から日本へ。 お客様、家族のために作るタピオカドリンク。

【日本経済大学提供】福岡でタピオカドリンク専門店を経営する贾珺涵(カクンカン)さん。台湾から仕入れたタピオカや茶葉を使い、美味しさと安全性にこだわったドリンクを提供しています。中国出身のカクンカンさんが日本で起業するまでには、どんな経緯や想いがあったのか。お話を伺いました。

贾珺涵

カクンカン|タピオカドリンク専門店経営
タピオカドリンク専門店「Quick tea」の運営とリサイクルショップ事業を行う、LOVEトウェンティセブン株式会社代表取締役社長。社名に入っている「27」は、奥さんと出会った日、子どもが生まれた日が27日だったことから取っている。
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※この記事は日本経済大学の提供でお送りしました。

日本への関心


中国の北東部に位置する、黒竜江省樺南県で生まれました。一人っ子政策の只中だったので兄弟はおらず、近所に住んでいる友達と毎日のように遊んでいました。身体を動かすのが好きで、特にバスケットボールにのめり込んでいました。

バスケが好きだったことから、12歳のころ、初めて日本の漫画『スラムダンク』を読みました。すごく面白くて、それから日本の漫画や映画、アニメを見るように。するとだんだんと日本に興味が出てきて、いつか行ってみたいと思うようになりました。

高校に進学すると、勉強が大変で遊んでいる暇がなくなりました。周りがたくさん勉強するので、自分もするようになりました。将来は、企業に就職するという考えはなく、起業したいと思っていました。特にきっかけがあったわけではなく、起業が当たり前の選択肢だったんです。

そのため、起業することを前提に大学を選びました。中国では荷物の配達に時間がかかることが課題だと感じていたので、流通について学べばそれを解決するビジネスが作れるのではないかと思いました。そこで、両親の勧めもあって、流通に関するコースがある商業大学に進学しました。

経営を学ぶため、日本へ


大学で学ぶうちに、日本の経営手法に興味を持ち始めました。いずれ中国で起業するときのために、経済が進んでいる日本で、経営手法や会社の管理の仕方を学びたいと思うように。そこで大学は辞めて、日本に留学することにしました。

初めて日本に渡り、まずは福岡の専門学校に通って日本語を学びました。日本に来た時知っていた日本語は「この商品はいくらですか?」くらい。それ以外はわからない状態だったので、勉強はものすごく大変でした。

学費や生活費を工面するために、アルバイトも探しました。日本語がそんな状態だったので、雇ってくれるところがなかなか見つかりません。手当たり次第に電話をかけて、ようやくお弁当を作る仕事を見つけて雇ってもらえました。ただ、バイトを探している外国人はとても多く、代わりはたくさんいるので、いくら働いても給料は安かったですね。

言葉がわからないし、友達や知り合いもいない、暮らしも厳しい。自分で決めたこととはいえ、日本生活の始まりはつらいものでした。しかし、私が日本に来る時、家計が苦しいにもかかわらず、両親が引っ越し費用や交通費を出してくれていたんです。そんな両親のことを考えると、苦しい時も「絶対にここで頑張ろう」と思えました。学校の先生にいろいろ教えてもらいながら、少しずつ日本語にも日本の文化にも慣れていきました。

2年の過程が終わるころ、いよいよ学びたかった日本の経営を学ぶために、いろいろな大学を調べました。その中で、2年間住んだ福岡にあり、経済が専門の日本経済大学を知りました。先生のプロフィールや卒業生の就職先を見て、ここなら自分の学びたいことが学べるかもしれないと思い、入学することにしました。

在学中の起業


大学では経営のコースに所属し、会社の経営や簿記などのお金の管理方法について学びました。授業を聞いているだけでも勉強になりましたが、自分でやってみた方がもっと勉強になると思い、在学中の起業を考えるようになりました。

そんな時ふと、外国人留学生が引っ越しで苦労しているのを見ました。私もそうだったように、留学生はたいていお金がありません。お金がかかるので引っ越し業者を頼めなかったり、引っ越し後に必要な家電製品をそろえられなかったりすることが多いんです。

そこで、引っ越しを手伝うビジネスができないかと考えました。福岡は留学生の人数が多く、出入りが激しい都市です。それなら、引っ越す人の家電や家具を引き取り、次の人に安く売るリサイクルの仕組みを作れば、助かる人が多いのではないか。そう考え、引っ越しの手伝い兼リサイクルショップのビジネスを始めることにしました。

最初は小さなトラックを買って、福岡市内なら1回5000円など、価格を抑えて引っ越しを手伝うように。同時に家具や家電など不用品の回収や買取、販売も行いました。とにかく安いので、すぐに留学生の利用者が見つかりました。引っ越し費用が安くすめば、浮いたお金で家電をそろえることもできます。だんだんと利用者が増え、日本人へも浸透していきました。

そんな中、引っ越しの依頼を受けた中国人の女性と仲良くなり、4年生の時結婚しました。子どもも生まれ、家族ができたんです。守らなければならないものができたことで、意識がまったく変わりました。自分一人なら、たとえアルバイトで1カ月10万円しか稼げなくても生きていけるけれど、家族がいればそうはいきません。きちんと仕事をしてお金を稼ぎ、家族を大事にしていきたいと思いました。

リサイクルショップで利益が出ていたので、今後も日本で続けていける新しい事業を作ろうと考えました。卒業後は中国に帰って起業しようと思っていましたが、食べ物の安全性や保育施設の充実を考えると、子どもが小さいうちは日本で育てたいと思ったんです。

妻と一緒に事業の構想を練り、思いついたのが「タピオカドリンク」でした。中国ではタピオカドリンクが人気で、妻も私も好きでよく飲んでいたのですが、日本で飲んだらあまりおいしくなかったんです。タピオカの素材そのものが良くないと感じました。そこで、タピオカ発祥の地である台湾の材料を使えば、もっと美味しいタピオカドリンクができると考えたんです。

それに、妻も私も好きなものに関わる仕事なら、長く続けていけると思いました。2人とも、タピオカドリンクそのものも、調理も好きだったんです。知人の紹介で福岡の市街地に店舗を借りることができたため、リサイクルショップは別の社員に任せ、妻と一緒にタピオカドリンク専門店をオープンさせました。

タピオカで、お客さんも家族も幸せに


現在は、福岡市内に3店舗あるタピオカドリンク専門店「Quick tea」を経営しています。看板商品のミルクティーをはじめ、フルーツジュースやコーヒーなど、100種類以上のタピオカドリンクを販売しています。

特徴は台湾から仕入れているタピオカ。作り方は企業秘密ですが、甘味があり弾力が強いのが特徴です。実は鮮度が大切なので、営業時間を区切って1日に何度も作るようにしています。子どもにも安心して飲んでもらえるよう、特に素材の安全性は重要視しています。うちの子どもも毎日飲んでいますね。

また、そのタピオカに合わせるミルクティーにもこだわっています。台湾から仕入れた茶葉でいれた紅茶と、日本産の牛乳とをブレンドして作りますが、配合が難しいので毎朝私が大量に作り、各店舗に届けています。

そのほか、新商品の開発もしています。店舗のスタッフとどんな味がいいか相談しながら、毎月1種類は必ず新商品を出しています。最近ではドリンクだけでなく、「タピオカトースト」という新商品も作りました。日本では初めての商品だと思います。チョコレート、キャラメル、小豆などから味が選べます。

10代から30代のお客さんがほとんどなので、店に立つことで同年代と会話できるのが良いですね。また、若いスタッフと一緒にアイディアを出し合って商品を作り上げるのも楽しいです。

今後は、フランチャイズで多店舗展開していきたいと思っています。日本国内もそうですし、中国にも出店したいですね。2019年には、妻の故郷である中国の北京に出店することが決まっています。中国では、日本から入ってきた店が人気なんです。ある種のブランド力があると思うので、日本に出店しているタピオカドリンク専門店として集客したいと考えています。

フランチャイズ化した時に課題となるのが、流通の仕組み。今は自分で作ったミルクティーを配達していますが、距離ができるとそうもいかなくなります。商品の味や質は落としたくないので、今の状態を保ったまま展開していきたいです。美味しくて安全なタピオカドリンクを、より多くのお客さんに届けたいと思っています。

在学中に生まれた子どもも大きくなり、もうすぐ、2人目が生まれます。やはり中国語も勉強してほしいので、日本と中国を行き来する生活ができるのが理想です。妻と子どもと、日本まで送り出してくれた中国にいる両親。いつも支えてくれる家族を大切にしていきたいです。

2018.10.22

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