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「不動産」は売るものではなく、人を救う手段。父の死と空き家問題の狭間で見つけた、私の生きる道。

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「実家をどうにかしなければならない」。そう思いながらも、日々の忙しさに追われ、手つかずのまま悩み続けている人が増えています。

そんな社会課題に対し、不動産という枠組みを超えて「家族の困りごと」を丸ごと受け止めるサービス「じつまど-実家の相談窓口」を立ち上げた花原さん。

大手ハウスメーカーでの葛藤、父の死を通じて得た死生観、そして「嫌われる不動産」にあえて光を当てる理由。花原さんが目指す、”社会課題解決の手段”としての不動産のあり方を伺いました。

花原 浩二

はなはら こうじ|マークスライフ株式会社 代表取締役

大手住宅メーカーである大和ハウス工業にて住宅営業に従事した後、2016年にマークスライフ株式会社を創業。「世のために。人のために。」を企業理念に掲げ、事故物件を扱う「成仏不動産」や、相続・空き家・介護の悩みを一括解決する「じつまど」など、社会課題を解決する不動産サービスを次々と展開。不動産を単なる商材ではなく「人を助ける手段」と定義し、業界の常識を覆す取り組みを続けている。

「誰のための仕事なのか」という問い

私のキャリアの原点は、大手住宅メーカーでの営業職でした。 家を売る仕事は充実していましたし、やりがいも感じていました。しかし、現場で働き続けるうちに、心の奥底で小さな違和感が芽生え始めたのです。

街を見渡せば、空き家がどんどん増えている。それなのに、私たちは次々と新しい家を建て、販売している。「家を建てれば建てるほど、将来の空き家を増やしているのではないか」。そんなジレンマでした。

このビジネスは、本当に社会のためになっているのだろうか。 数字を追いかける日々のなかで、その問いは次第に大きくなっていきました。

そんなある日、父が他界しました。 私にとって大きな転機となったのは、父の葬儀での光景でした。多くの参列者の方が、父との別れを惜しみ、涙を流してくださっていたのです。

「父は、これほどまでに人に愛され、必要とされていたのか」

その姿を見たとき、強烈な思いがこみ上げてきました。私も父のように生きたい。「あいつがいてくれてよかった」「あいつがいなくなって寂しい」。

そう思われるような、人に必要とされる人生を送りたい。 それが、私が「世のために。人のために。」という理念を掲げ、今の道を歩み出すことになった原点です。

「敬遠される不動産」であっても、誰かにとっての大切な場所

2016年にマークスライフを創業して以来、私たちは業界の常識とは逆の道を歩んできました。

その象徴が「成仏不動産」や、再建築不可物件、権利関係が複雑な土地など、一般的には価値が低いとされる不動産の取り扱いです。

多くの不動産会社は、手間がかかり、利益になりにくい物件を敬遠します。

特に、孤立死や事件があった「事故物件」などは、扱いにくいとされる存在です。 しかし、私には違う景色が見えていました。

世の中で「価値が低い」「扱いづらい」とされている不動産であっても、そこにはかつて誰かの暮らしがあり、思い出があり、人生がありました。

残されたご遺族様にとっては、大切な場所であると同時に、どう扱っていいかわからない、心の重荷にもなっていることが多いのです。

「誰もやらないなら、私たちがやるしかない」

そうした物件を、単なる不動産としてではなく、その背景にある「人の想い」ごと敬意を持って扱うこと。それが私たちの使命だと確信しました。

成約数などの数字だけを追うのではなく、困っている人の肩の荷を下ろし、前を向く手助けをする。私にとって不動産とは、売買の対象ではなく、人を助けるための「手段」なのです。

実家の悩みは、不動産だけでは解決しない

そうして多くの「困りごと」に向き合う中で、見えてきた新たな課題がありました。 それは、実家をめぐる悩みが、単に「家を売る・売らない」の話だけでは完結しないという現実です。

例えば、「仏壇を処分したい」という相談の裏には、「家が空き家になる」という問題があり、その手前には「親の介護施設への入居」や「相続手続き」という課題が複雑に絡み合っています。

親は高齢になり、子どもは遠方に住んでいる。物理的にも精神的にも距離があり、どこから手をつけていいかわからない。

相談しようにも、介護は介護事業者、家は不動産会社、お墓は石材店……と窓口がバラバラで、たらい回しにされてしまう。

「東京で働く人が、秋田の実家をどうにかしたいと思ったとき、現地にいる『もう一人の家族』のような存在が必要だ」

そう考えて立ち上げたのが、新サービス「じつまどー実家の相談窓口-」です。

「世のため」になる仕組みを、持続可能にする

「じつまど」では、介護、空き家、相続、片付け、仏壇・墓じまいなど、実家にまつわるあらゆる悩みをワンストップで引き受けます。

私たちが間に入り、提携する全国1250社以上の専門家(葬祭事業者、介護事業者、士業など)と連携して、解決まで伴走するのです。

ここで大切にしているのは、提携先企業も含めた「三方よし」の仕組みづくりです。

例えば、仏壇店がお客様から家のご売却の相談を受けた際、私たちにつないでいただくことで、提携先にも本業外収益が入る仕組みを構築しました。

ボランティア精神だけでは、質の高いサービスを継続することはできません。関わる全ての人が幸せになり、事業として成立するからこそ、より多くの人を救うことができると考えています。

実際、このサービスは企業の福利厚生や、自治体の空き家対策としても注目され始めています。

社員にとっては「安くて安心な福利厚生」、企業にとっては「感謝される制度」、行政にとっては「空き家対策」。まさに一石三鳥のモデルです。

理念の上に社長はいない

創業当初、経営や組織作りで苦しい時期もありました。 それでも、目先の利益に走らず「困っている人の声」に向き合い続けてきたことで、理念に共感してくれる仲間が集まってくれました。

当社の採用倍率は非常に高く、月に400名前後の応募がありますが、採用するのは「理念に共感できること」を何より重視した数名のみです。

スキルや経験よりも、「誰かの役に立ちたい」という想いを持っているかどうか。

私は常々、社員にこう伝えています。 「理念より上に社長がいる会社は続かない。私はたまたま『社長』という役割を任されているに過ぎない」と。

私たちが目指すのは、単なる不動産会社ではありません。 遺品整理、リノベーション、そしてM&A支援まで。

生活のあらゆる場面で「困った」という声が上がったとき、一番に思い出してもらえる存在でありたい。

「家を建てれば建てるほど空き家が増える」という矛盾に悩み、父の死に直面して見つけた、「人に必要とされる人生」という答え。

その答えを体現するために、これからも私たちは、社会の「困りごと」を一つひとつ、丁寧に解決し続けていきます。

誰かの深い悲しみや悩みが、やがて安心や感謝に変わる瞬間。それが、私にとって何よりの喜びなのです。